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緑と縁って似てるよな



いつもとは違う、暖かい温もりを感じて我は目を覚ました。


知らぬ天井だが落ち着く香り。


側には使いの狐が寝ておった。



「普通、我より先に起きるじゃろて……そうか、康成の家か……やはり布団は良いのぉ」


時計を見ると時刻は7時。



「久しぶりに良く寝たわい」



生まれてから一体何年の月日が流れたか、歳を重ねる毎に早く目が覚めるようになったが、やはり疲れておったのかの?



銀狐は離から本宅へ移動すると良い匂いが漂ってきた。



ぐぅ



「何もせんでも腹は減るのぉ。今まで食事は肉体の維持としか考えておらんかったが……ここの飯が旨いのが悪いのぉ……」



リビングに入ると彩愛が朝ごはんを食べていた。



「あっ!銀ちゃんおはよう!」



「おや?早いねぇ、もう少しゆっくり寝てても良かったんだよ?」



「彩愛、棗殿おはよう。いつもに比べたらむしろ寝すぎたくらいじゃ」



「私もこの歳になると自然と早くに目が覚めるんだよね」



うぐっ!


やはり、歳かのぉ……


「彩ちゃんも早起きだよ!」



「彩愛は若いのに偉いのぉ、康成は仕事かや?」



「あぁ、今日は早番だからね、ついさっき出勤したよ」


「我も見送りすれば良かったかの」


「康成が良く寝てるから起きるまで寝せておけってさ。稲荷さんのご飯もできてるよ」



「気を使わせたの、それでは遠慮なくいただくわい」



銀狐は夕食と同じく彩愛の隣に座る。



天童家の朝食は基本夕食の残り物を出すことが多い。

今朝は白米、残った熊鍋、目玉焼きだ。


「残り物で悪いね」



「構わん、暖かいだけでご馳走じゃよ」



熊鍋を一口すすると、自然と息が漏れる。


「やはり旨いの、康成に料理を教えたのも棗殿かや?」



「基本だけだよ。基本を教えたら知らないうちに色んな料理に手を出して上達してたよ。こっちとしてはありがたいことさ」



「努力も才能じゃからの。男であそこまで上達したじゃ、たいしたもんじゃわい」



「今は男女関係なく台所に立つ時代なんだよ」



「いい時代になったのぉ」


「本当にね」


棗はニヤリと笑うと彩愛を見る。



「ほら、汁の野菜残ってるよ」



彩愛の器には人参が残っている。


「にんじん苦手……」



「ほれほれ、野菜もちゃんと食べんと我のように大きくなれんぞ?」


「彩ちゃんも銀ちゃんみたいにナイスなバディになれる?」



ぶぅっ!


彩愛の言葉に棗は熊鍋を吹き出す。


「誰に聞いたんだい?また康成かい?」


「うん!パパが言ってた!」



「あの馬鹿息子が……」


「そうか、ナイスなバディになりたいか。我もたくさんの野菜を食べてここまで成長した。きちんと野菜を食べれば彩愛もなれるわい」


「本当!?頑張るね!」


彩愛は残りの野菜を一気に口に入れると苦手ながらも飲み込んだ。


「そうじゃ、偉いのぉ」



「いつも嫌々食べるんだけどね」



「目標があれば頑張れるもんじゃよ」



朝食を食べ終えると彩愛は保育園の準備を始める。


「稲荷さんは家で待ってるかい?」


「そうさせてもらうかの、藤林殿の若いのが今日来るでな。留守番させてもらうかの」



「彩愛を送ったらすぐに戻るよ。私も役所の申請に一役買おうかね」


「役所にも知り合いがおるのか?」



「まぁね、みんな腐れ縁だよ」



「腐っても縁じゃよ。縁とは大事じゃからの」



「本当にさ、この歳になってから役立つなんてね」



……………………



棗殿が彩愛を送ってくる間に我も家事手伝いくらいはするかの。


銀狐は霊力を使い水を出し皿を洗う。


洗った皿は一定の高さに浮かべ、風に熱を送り一気に乾かす。


洗濯物も同様に洗われたものを宙に浮かべ温風で乾かす。



全て乾いた頃、棗が帰宅した。



「それで乾かせるのかい?便利だね」


「すまんな、勝手にやってしもうたわ」


「いいや、ありがたいだけだよ。1人で何役もできる。乾燥機いらずだし、稲荷さんは一家に一人は欲しいね」


「霊力を得たら棗殿もできるようになるぞ」


「ほぅ、ちょっと真面目に年甲斐もなく努力しようかね」



銀狐、棗が洗濯物を畳んでいると、玄関のチャイムが鳴った。



「来たかね?」



玄関を開けると見た目は普通の眼鏡をかけた青年が立っていた。



「藤林組から来ました。今日はよろしくお願いします」



「本当に言われなきゃ組のもんだってわからないね」



「時代でしょうね。今は私みたいな交渉役も必要みたいで」



「それじゃあ、今日は頼むよ」



「わかりました。手筈通りで良いですかね?」


「うむ、頼むわい」



……………………



「申請が通らないってどういうことですか!?」



「ですから、最近外国人の不法労働が多く。こういった手口で住民票を得ようとする人が多いんですよ。それに通らないではなく本人とお話をさせていただいてから信憑性等を確認できれば問題はないので暫くお待ちください」



ありゃー、少し不味いのぉ……


親のこととか聞かれてもわからんわい。


組の若いのも焦ってるの。



「念のため私も来て正解だったね。おいあんた、手島はいるかい?部署?知らないよ。天童棗が来たとだけ伝えておくれ、それだけで通じるはずさ」



棗殿が職員に声をかけ、暫くすると同じくらいの歳の職員が階段から息を切らせ降りてきおった。



「課長、すみませんお客様です」



「はぁはぁ、わかっているよ、あとね課長の名前くらい覚えておこうよ」



「相変わらず影が薄いね手島」



「もう、なっちゃんは急に来るんだもん。今日の用事は?」



「ちょいとね、別室でいいかい?」



「今は第2の会議室が空いてるね。そこで良いかな?」



会議室に通されると手島はさらに砕けた口調で話し出した。



「もぅ相変わらずだなぁ。一応申請用紙と簡単に話は聞かせてもらったよ。許可の判子を押せば良いんだね?」



手島は話ながら用紙に許可印を押す。


はぁ?なんじゃ?話の流れで押しよったぞ?



「すまないね、ちょいと訳ありでね。助かったよ」



「なっちゃんが来るってことは大抵訳ありだよ。でも悪いことじゃないんでしょ?」



「まあね」



「そちらはもしかして佐之助君のところの?」


「あっ、いやっ……」



「大丈夫だよ。佐之助君も曲がったことは嫌いだからね。僕も未だに交流があるよ。あっ、周りには内緒ね?」



朝、てれびでやっておったぞ!

癒着じゃ、癒着!



「感謝するよ、今度佐之助も呼んでうちで飲むんだ。あんたも来なよ。うちなら周りの目を気にしないで済むだろ?」



「51同盟再結集だね!楽しみにしてるよ!絶対呼んでね!」



「息子にその話は内緒だよ?」



「大丈夫だよ。光雄も来るかな?」


「店は忙しそうだけど大丈夫だろ」



「それじゃあ連絡待ってるよ。申請の許可は出したからもう暫く待っててね」



手島は嬉しそうに話すと受付に書類を渡し自分の部署に戻った。



「なぁ棗殿?」



「なっ?縁って役にたつもんだろ?」



棗殿……何者なんじゃろ……



深く考えたら負けじゃ……



そういえばこの若いの、あんまり役にたたなかったの……



その後、無事に住民票を手にいれた銀狐は役所を後にした。




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