第十話:鼻歌
やばい。
恥ずかしい、後悔がじわじわと沸いて来たのだ。
人前で涙を流したのは中学1年ぶりだろうか・・・。
沈黙が続き、静かに過ぎていく時間をベンチの上で噛み締めていた。
確かに気まずい時間だ、だが、苦では無かった。
何も話さずボッーっとしている間、桜が落ち春風で木が揺れる。
そんな風に流れる風景をそっと眺めるのも悪くない。
俺はふと怒田の方を向くと彼もまた風景を楽しんでいるようだった。
落ちる桜と可憐にほほ笑む美少年とんでもなく絵になる光景だ。
怒田は俺の視線に気づきこちらを向いてほほ笑んだ。
「どう、落ち着いた?」
「ああ、だいぶ。」
俺は苦笑しながら答えた。
怒田はそっかっと頷き立ち上がった、そして俺に手を差し出し言った。
「帰ろっか。」
「そうだな。」
俺は頷き立ち上がり怒田の隣を歩いた。
なんやかんやあったが無事一日目を突破したのだ。
この調子だと命がいくつあっても足りないと思いながら地面を蹴る。
自分の部屋のあるアパートに着く俺はふと違和感を感じた。
そう、怒田がまだいるのだ。
「あれ?お前の家まだ先?俺ここなんだけど。」
そういうと怒田は目を開いて驚いた表情を見せた。
「うそ、僕もここなんだけど。」
俺は驚愕の事実に動揺した。
そして部屋も隣同士という事も発覚した。
どうやら怒田も一人暮らしらしい。
驚愕の事実に怒田は鼻息荒くしながら言った。
「これは運命の赤い糸だね、よし服を脱げ。」
「脱がねえよ。」
制服のボタンに手を掛けた怒田の頭にチョップする。
「っいで!もー冗談なのに~。」
”冗談でもやめてくれ、いくら男でもお前は女子にか見えない。”
そんな事を思いながら俺は部屋の鍵を開けじゃあなっと入る。
「待って!」
怒田が叫んだ。
締まるドアを押さえて顔を出し聞いた。
「どうした?」
怒田はもじもじしながら言った。
「あ、明日さ、一緒に・・学校行かない?」
俺は外で服を脱げとか言ってた奴が一緒に登校しようと誘うだけでなぜ恥ずかしそうにしているのかがわからなかった。
だが、なんか頬とか染めて可愛いし、言及するのはやめよう。
俺はッフっと笑いながら了承した。
「いいよ、8時にお前の部屋の前行くから。」
俺がそう言うと怒田は満面の笑みで嬉しそうにうんっと頷いて手を振った。
俺が部屋に入ると怒田の鼻歌が聞こえてきた。




