第4話
「・・・それでは、自己紹介をお願いします」
「は、はじめまして。鳥・・・じゃなかった、春野 里奈です。よろしくお願いします」
ぜ、全員がこちらに注目してる!?し、しかもなんか友好的な視線がひとつもないような気が・・・・・。
「はい、じゃぁ春野さんは窓際の空いている席について。授業始めます」
担任の女性に指定された席を探すと一番後ろの窓際が空いていた。
荷物を置いて席につくと思わずため息が溢れた。
あぁ・・・・疲れた・・・・。
席についてこれから授業が始まると言うのに、既に私はぐったりとしていた。
それもこれも朝、車から降りてからが最悪だった。
「あ、あの、すみません」
とりあえずどこに行けばいいのか聞こうと近くにいた生徒に声をかけてみた。
「・・・・・」
あれ?聞こえなかったのかな?
「すみません!」
じろり・・・。
睨まれた上、何事もなかったように去って行った。
た、たまたまご機嫌ななめの人だったのかもしれないと思い、今度は女生徒に声をかけてみた。
「あの、すみません」
「はい?」
女生徒はこちらを振り向き答えてくれた。そのことにホッとしてどこに行けばいいか訪ねようとしたら・・・。
「あ・・・」
私を見るなり彼女は踵を返し去っていった。
その様子に私は思わず身だしなみをチェックする。
なに?顔に何かついてた!?
背中に何か張られてる?!
・・・・ぐるりと見回してみるが特に何もない事はわかっている。
なにせ、彼女は私の顔を見て去っていった。
「なぜ・・・?」
訳がわからずにいると、ふいに後ろから声がかかった。
「どうされたの?」
後ろを振り向くとそこには日本人形の様な綺麗な女の人が立っていた。
「え・・?あっ。えっと・・・」
彼女の美しさに思わずあたふたとしてしまった。
「もしかして、あなた転校生?」
私の挙動不審な行動に何も言わず彼女は私にそう問いかけてきた。
「あっ・・。はい!今日からこの学校に転校してきた鳥・・・じゃない。春野っていいます。その、転校って初めてでどこにいけばいいのかわからなくって・・・。とりあえず、やっぱり職員室ですかね?」
やっと聞きたかった事を聞けたと思うと彼女は可愛らしく首をひねった。
「・・・職員室?」
ん?職員室に首をひねる意味がわからない。
「・・・えっと・・・。先生たちがいらっしゃるところは・・・・」
なんだか馬鹿にしている様に取られないか心配だったが、彼女はあぁ!という顔をして言った。
「先生方のお部屋ね!それで、どの先生のお部屋に行かれたいのかしら?」
「は?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
「あら?先生の部屋に行きたいのよね?」
「は、はい」
「でしたら、どの先生のお部屋に行かれるの?」
ど、どの先生の?
「あ、あの・・・。先生がいるお部屋ってもしかして・・・・」
「??お一人ずつ違うところにいらっしゃるけれど・・・・」
えぇ!!?
先生一人一人に部屋が与えられてるってこと!?
どんだけリッチな学校だよ!!
思わず心の中で叫びましたとも。声に出さなかっただけ、私を誉めてもらいたい。
「せっ、先生方お一人ずつにお、お部屋があるだなんて、す、すごいですね」
「あら?普通ではなくて?」
「・・・・・・そ、そうなんですか・・・・」
普通って・・・・。
いや、うん・・・。そうか、ここでは普通なのか。うん、そういう学校だってあるかもしれない。そうだ、今の時代いろんな所があるもんね!
・・・無理やり自分を納得させて私は彼女に更に訪ねた。
「じゃ、じゃぁ、あの、最初に行くべきところはどこだかわかりますか?」
「・・・そうね。転校生だなんて、この学校ではあまりないことだからよくわからないのだけれども、学園長の所へ行くのがいいかもしれないわね」
「学園長ですか・・・・」
「えぇ。この廊下をまっすぐ行った突きあたりが学園長室になるわ。お一人で大丈夫かしら?」
彼女は心配そうに私にそう言ってくれたが、私は一人で大丈夫だと告げると彼女に礼を言い、言われた通りまっすぐに歩き始めた。
「・・・・と、遠い・・・・・」
どれだけ広いのか。結局学園長室までに10分程歩いた気がする。
いいや・・。まさか、そんな事は気のせいだと思いたい。
とりあえず、息を整えると、学園長室と書かれた扉をノックした。
「はい。どうぞ」
中から聞こえた声は、思っていたよりも若い声だった。
「失礼します」
中に入るとこれまた、どんだけ豪華で広いんだ!?と我が目を疑いたくなるほどだった。
思わず、口があんぐりと開くと目の前から笑い声が聞こえた。
「・・・女性がその様な顔をするのはよくないな」
くすくすと笑いながらそう言う声の主は、学園長の人物像を覆す程の美形男子だった。
思わず、扉の外にでてプレートを確認したくらいだ。
「ははっ。間違っていないよ。ここが学園長室だ。そして、私が学園長の下園 晃だよ。はじめまして、春野 里奈さん。ようこそ、春野清和学園へ」
にこりと笑って差し出された手に引き寄せられるように私は右手で握手をしていたのだった。