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【第11話】凍結する拒絶、白銀の烈風


 (とお)くに、ひとつの(とも)()()えた。


 それは(はげ)しく()()きつける(かぜ)()(けず)りながらも、(けっ)して()えることのない(かたく)なな(またた)きだった。


 (いま)にも()えそうなほど(ほそ)く、けれど(かぜ)(さか)らう(ちい)さな()(しん)には、(しず)かな覚悟(かくご)のような(ねつ)宿(やど)っている。


(ゆる)す」という言葉(ことば)が、(わたし)()()りにして(とお)()ぎていく。


 (いか)りはすでに()れ、(さけ)びたい衝動(しょうどう)(つい)えた。

 

 (のこ)ったのは、皮膚(ひふ)()(やぶ)ることはないが、()れるたびに(たし)かな(いた)みを(はし)らせる、(しず)かな(とげ)感触(かんしょく)だけだ。


 その一刺(ひとさ)しが(くさび)となり、(わたし)時間(じかん)過去(かこ)一点(いってん)(つな)()めている。


 (まえ)(すす)もうとするたび、その(とげ)(こころ)(えぐ)り、(わたし)はまた停滞(ていたい)(ふち)へと()(もど)されるのだ。


 沈黙(ちんもく)した部屋(へや)温度(おんど)が、唐突(とうとつ)()()がった。


 (やみ)深部(しんぶ)から(あふ)()したのは、(よる)()()くすような白銀(はくぎん)残光(ざんこう)だった。


 そこには、銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)()っていた。


 銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)()れる銀色(ぎんいろ)(かみ)は、まるで生命(せいめい)宿(やど)した(ほし)(くず)のように(うごめ)き、周囲(しゅうい)酸素(さんそ)(あつ)変質(へんしつ)させていった。


 その存在(そんざい)(はな)(まぶ)しさは、(わたし)(まも)(つづ)けた(くら)均衡(きんこう)一瞬(いっしゅん)()()せしめた。


 銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)背後(はいご)から、巨大(きょだい)(つばさ)顕現(けんげん)する。


 それは身体(しんたい)(そな)わった器官(きかん)ではなく、(かれ)(うち)なる奔流(ほんりゅう)(あふ)()して(かたち)()した、(ひかり)結晶体(けっしょうたい)だった。


()まったままの(いた)みも、きみが今日(きょう)まで()()いた(あかし)です」


 銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)(しず)かに()げ、その(つばさ)(いっ)(せん)させた。


 優雅(ゆうが)曲線(きょくせん)(えが)(ひかり)(つばさ)が、(おも)沈殿(ちんでん)した(わたし)沈黙(ちんもく)根底(こんてい)から()さぶり()こす。


 (はな)たれた熱風(ねっぷう)は、(たん)なる破壊(はかい)ではなく、凝固(ぎょうこ)した時間(じかん)強引(ごういん)()かし、()(にげば)のない圧力(あつりょく)(たましい)深部(しんぶ)まで(つらぬ)いていった。


 (なに)ものも()()けず(こお)()いていた拒絶(きょぜつ)水面(すいめん)が、銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)焦熱(しょうねつ)()れ、悲鳴(ひめい)()げるよりも(はや)(しろ)蒸発(じょうはつ)していく。


 荒々(あらあら)しく世界(せかい)をさらっていった衝撃(しょうげき)は、(わたし)(こころ)(しば)(するど)(とげ)()れた瞬間(しゅんかん)、それまで()めていた(つめ)たさを(うば)い、(ほど)けるような(やす)らぎへと(てん)じていた。


 (こころ)(ふか)()()さっていた沈黙(ちんもく)(とげ)が、その余熱(よねつ)()かされ、(うず)きを(のこ)しながらも(やわ)らかな温度(おんど)へと()(はな)たれていく。 


(ゆる)さなくていい。ただ、その(ねつ)だけを(とも)して()きなさい」


 銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)(いつく)しむように()()せ、巨大(きょだい)(つばさ)(おお)きく()らした。


 ()(こぼ)れるほどの(まぶ)しい(ひかり)が、(ほし)(すな)となって(わたし)視界(しかい)白銀(はくぎん)()()げていく。



……。


 

 (よる)()け、(まど)()ける。


 (そと)世界(せかい)(なに)()わっていない。


 (わたし)(なか)の「(ゆる)せない」という事実(じじつ)さえも、()えたわけではない。


 その(する)(かど)は、銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)(のこ)した焦熱(しょうねつ)()かれ、(なめ)らかな輪郭(りんかく)へと(かたち)()えていた。


 ()てつく拒絶(きょぜつ)(きり)のように()れ、()わりに(わたし)内側(うちがわ)には(しず)かな(あきら)めと、それ以上(いじょう)(たし)かな鼓動(こどう)脈打(みゃくう)っている。


 無理(むり)手放(てばな)必要(ひつよう)はない。


 (にご)りも(とげ)も、(わたし)という人生(じんせい)()りなす(いと)一部(いちぶ)なのだと、()(こぼ)れる(ひかり)(なか)(おそ)わったような()がした。


 昨日(きのう)までの(わたし)(しば)()けていた(おも)(くる)しい(くさり)(ほど)け、(いま)はただ、(あたら)しい(かぜ)(むか)()れるための空白(くうはく)心地(ここち)よい。


 ()まっていた時計(とけい)(はり)が、(かす)かな産声(うぶごえ)()げて(うご)(はじ)めた。


 (むね)宿(やど)った(あたた)かな()が、あの(よる)()れた銀髪(ぎんぱつ)青年(せいねん)(つばさ)(やわ)らかな余熱(よねつ)()やさず、(いろ)(うしな)っていた景色(けしき)(やさ)しく()らし(つづ)けている。



(だい) 11(かん)


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