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オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
寄宿学校生活の始まり

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トロトロのタンシチューと手紙

今日も放課後に皆で集まり、甘い香りが漂うアイスクリームコーンの崩れたものを摘まみながら話し合いをする。

3種類のアイスクリームとコーンが完成したので、とりあえずお店は開店出来るんじゃない?というアナスタシアの考えにピピロッテが待ったをかける。




「アーシャ、お店は完成しましたの?」



「まだだよ。でも今から求人の募集をかけたり、制服の準備にお店で使う食器やカトラリー、クロスなどのデザインを決めてしまわないと練習する時間がないわ」



「あの、いつ頃に開店を考えていらっしゃいますか?」




グレチェンが恐る恐る確認するとアナスタシアは笑顔で答える。




「1年生が終わって長期休みに入ったらすぐの予定よ」




「では春の真っただ中に開店ということですね」






周りが少し白くなった窓の外を見れば、古いガラス越しに伝わる冷たさが、かえって室内の温もりを感じる。

秋が終わり、冬の気配を色濃く感じる足元の芝生は色が変わり、ここ数日の雨と霜に打たれて、ぐずぐずとした黒く濡れた土へと姿を変えている。

視界の端に白い粒が混じる。まだ地面に届く前に消えてしまうほど頼りない。




「もうすぐ雪が降り始めるんですって」



「そうしたら、もう冬だな」



ピピロッテとランスロットの会話に続いてグレチェンがアナスタシアに確認をする。



「冬の間にお店が開店出来るように準備をするということですね?」



「そうなの。まぁ難しいことはお父様の秘書官のコンラッドが手伝ってくれるわ」



「よかった! 全部私達で準備するのかと思ったよ! えへへ」



「でも、こんなに美味しいならすぐ無くなってしまうと僕は思うな。商品はいっぱい必要だよ」





ジョージアナが(ひそか)に抱いていた懸念と、食いしん坊のチャールズらしい素直な感想が重なり、アナスタシアの頬は自然と(ゆる)む。





「えぇ、そうよね」




アナスタシアは満足げに頷き、視線をグレチェンに向けた。




「だからグレにお願いがあるの。お父様に、私たちのための『特別なキャラメルソース』を作ってもらえるように、お手紙を書いてほしいの」




「うちの家でアイスクリーム用のキャラメルを沢山作るってことですか?」



「そう! お家は酪農家で商家でもあるんでしょ? お願いできないかしら? 勿論我が家から人を遣わせるし、設備とかの援助もするので安心して」



「うち、普通の酪農家ですよ?」



「フラーテル産の特別なミルクで作ったキャラメルソースが入っているって売り文句にするの」



「おぉー!」



「グレの実家が大出世のチャンス!」



「あら、ギグルスの家もワッフルコーンの機械を沢山作ってもらう予定よ!」



「おぉー。お父様とお兄様が倒れるまで働いてもらいます! えへへ!」



「おい、ランキー。僕たちも頑張らないとダメな気がする」



「何する?うちの実家なんて軍人なんで筋肉バカしかいないよ。力仕事?俺(ちから)ないし」



「ランキーはひょろひょろだからな」



「チャビー! 酷いぞ」



「ランキーは頭脳がある!補給路の確保みたいな感じでキャラメルソースの配送を考えるのは?」



「おぉー!俺そういうの考えるの好き! 列車とか使ってキャラメルソースの配送かぁ。夢あるぅ」



「僕はレシピをまとめるよ。沢山作っても味が変わらないレシピ」





男子二人も自分達が出来そうな事を考えて盛り上がっている。

皆が得意分野や興味があることを活かせそうで安心したアナスタシアはピピロッテに笑顔を向ける。



「アーシャ、私は貴方の髪の毛を綺麗にするだけじゃないのよ。お母様に手紙を書いて美しい食器やカトラリーを調べるわ。内装のデザイナーとデザインを統一するので連絡先を教えてほしいわ」



「ありがとう、ピッピ! コンラッドが手配してくれてるけど、内装や家具とか制服のデザインは私も確認したりするから今度引き合わせるわ」



「えぇ、楽しみにしているわ」








話し合いを終えて一歩外へ踏み出すと、刺すような冷気が、先ほどまで温かく甘い香りに包まれていた肌を容赦なく冷やす。

さっきまで古いガラス越しに眺めていた景色が、今は現実の冷たさとして足元に広がっている。




「うわっ、冷たっ! 本当に雪だ」




チャールズが首をすくめ、吐き出した息が白く濁って夕暮れの空に消えた。

昼間の雨を吸い込んでぐずぐずとした黒く濡れた土が、子供たちの小さな靴底を(つか)む。

滑らないように、皆が自然と肩を寄せ合い、足元を確かめながら歩き出した。


その輪の端で、グレチェンが抱えた鞄をぎゅっと握りしめる。

中には、さっきまで皆で囲んでいた、夢の詰まった計画メモが入っている。




「……キャラメルソース、父さん、受けてくれるかなぁ」




ぽつりと、湿った空気に溶けるような小さな声だった。



「僕は大丈夫だと思うぞ。可愛い娘の為なら公爵家のお姫様の依頼も叶えるよ。それに今日の晩御飯はタンシチューだぞ! 温かい物を食べたら考えも明るくなる」



「そうだよ。寒いから不安になっちゃうんだよ。私も早くシチューが食堂で食べたーい!」



「走ろうぜ!」



ジョージアナが早く食べたいという声をきっかけにランスロットが声を掛け走り出す。

そうして皆で駆けて戻った寄宿舎の食堂で食べたタンシチューはトロトロでとても美味しくて、幸せだった。

その夜、皆はそれぞれの家族に手紙を書いた。




おひさしぶりです。

更新が遅くなり申し訳ありません。

こちらの世界はセミが鳴いて夏ですが、アナスタシア達の世界では寒い寒い冬に入るところです。タンシチューより冷やしラーメンが食べたいです。

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