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オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
寄宿学校生活の始まり

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魔法の軟膏は凄い


「はぁ……。部屋に着いてそうそうに手当なんて、僕びっくりだよ」



まん丸ほっぺを少し膨らませながら、チャビーはポケットから手のひらに収まる豪華に装飾のされた小さな銀色の缶を取り出した。

丁寧に蓋を開けると、中には透き通った淡いブルーの軟膏が詰まっている。



面目(めんぼく)ない」



小さく縮こまるアナスタシアの指を、チャビーは治癒を掛けながら自分のふっくらした手でそっと支える。

指先で(すく)い取られた薬が塗られると、魔法の氷水で冷やしていた時より、ずっと早く痛みが引いていく。



「はい、動かさないで。……いい? これは僕の家にある特別な薬なんだからね。もう、アイスを作る前に自分を焼いちゃうなんて、どうしてそうなるの? 僕、わかんないや」



「わぁ、もうあの火傷(やけど)が治った! 凄いわ!」



「そうだよ。特別な薬なんだからね! 凄いんだから」



「とにかく、綺麗に治ってよかったですわ。さぁ、アーシャは休憩してください」



「俺たちで続きをするから休んでて」



「私、キャラメル作れますので安心してください」



「アーシャ怪我治ってよかったね! えへへ! 私もグレと一緒に作るよ!」



チャビーと一緒に部屋に入ってきたジョージアナも心配そうにアナスタシアを見ていたが綺麗に火傷が治ったのを見た途端に笑顔に変わる。




「さぁ、アーシャこちらで紅茶を飲んでお休みになって」



「ありがとう。ピッピの紅茶は美味しいね」



「うふふ、そうでしょう。そうでしょう。ここでゆっくりご覧になってて」




部屋の端へと移動させられたアナスタシアは今日はお休みして皆の作業を見学させてもらう事にした。

紅茶の湯気の向こうで、あの時の爆発を知らないジョージアナがゆっくりと木べらを動かしている。

一緒に鍋を押さえるグレチェンが若干、及び腰であるのは間違いなくアナスタシアのせいである。

ごめんね。グレチェン、びっくりしすぎて固まってたもんね。

そんな不安げな空気をかき消すように、ジョージアナが明るい声を上げた。


「見て、アーシャ! いい色になってきたよ」


ジョージアナが木べらを持ち上げると、トロリとした淡い琥珀色(こはくいろ)の液体が見える。

木べらから滴り落ち、一つの帯のように粘りながら、ゆっくりと綺麗な波紋を作っていく。


窓を開けて少し冷えた空気の中で、バターの脂分と煮詰められた砂糖が混ざり合い、香ばしくも罪深く甘い香りが部屋いっぱいに広がる。

紅茶のカップを握るアナスタシアの指先も、その甘い香りに包まれて、さっきまでカサカサだった心まで、この重たいキャラメルが隙間なく埋めてくれそうだった。




「ある程度冷めたらベースのアイスに混ぜちゃおう! グレ、準備はいい?」




ジョージアナの合図に、グレチェンが「は、はいっ!」と少し腰を引かせながらも、真っ白なアイスクリームの容器を差し出した。

隣でチャールズがキャラメルを冷やす魔法を掛けると、ランスロットもキャラメルの熱でアイスクリームが溶けすぎないように魔法を掛ける準備を始める。




「よし、いくよ……!」




ジョージアナが手際よく、鍋から重厚な琥珀色(こはくいろ)のソースを垂らす。

真っ白な雪のようなアイスクリームの上に、熱を帯びたキャラメルがゆっくりと、(へび)()うような筋を描いていく。


すかさずチャールズが指先を動かし、ソースの熱が全体に伝わる前に、絶妙なタイミングで冷気を(まと)わせた。


「ランキー、今だよ!」



「任せろ。……Kwatkwークワトゥク」



「おぉ~! アイスクリームが固まり過ぎてない。ランキー成功です」



「グレ! 本当!? 俺の魔力調整がうまくいったぞぉー!」



「はい、アイスクリームがカチカチではなくて(すく)いやすいです」



「わぁ! やったねランキー!」



「おう、ギグルス! ありがとうな! めちゃ嬉しいぞ」



「おめでとう! ランキー! 僕はスプーンと器を持ってきたよ。早速試食をしよう」



「もう、チャビーったら。さぁ食べますわよ。はい、スプーン」



「ありがとう、ピッピ」



「よろしくってよ。はい、アーシャもスプーンね」



「うむ、くるしゅうない。ギグルスもアイスありがとう」



「えへへ! よろしくってよ」



「えー、アーシャによろしくってよって言っていいの?」



「よろしくってよ」




皆が着実に成長しているのを温かい目で見守るアナスタシアである。自分の失敗は置いといて素晴らしいことである。

そして皆で食べたキャラメルアイスクリームは初めてにしてはとても美味しくできた事を報告したい。

頬っぺたがぎゅーっと痛くなったもんね。


いつも無表情ぎみのグレチェンが金髪のボブをフワフワと揺らしながら、はにかんだ顔でキャラメル入りのアイスを頬張り感想を話す。




「キャラメルが入ると美味しさが増します~。一番好きかも」



「どの味が一番かなんて選べないな、僕はどれも好きだ」



「私はブルーベリーアイスですわね」



「コーンと一緒に食べると考えると俺はキャラメルだな!」



「えへへ! チャビーと一緒で全部好き!」




皆ニコニコが止まらないアイスクリーム作りはひとまず完成と言っていいのではないかな?

あとお店の開店に必要な物を確認しなくちゃね!

そろそろ、求人をかけてもらうようにコンラッドにお願いするのがいいかも。制服とかも作って貰う準備とかもあるもんね。

たーのーしーみー!

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