キャラメルは、爆発と涙の向こう側に
繊細なお嬢様の指先はここ最近のロープの練習のせいでカサカサだ。
うるおいが欲しい。ということでお待ちかねのキャラメルのアイスを作るよ!
取りあえず3種類の味があればお店はオープン出来るよね?と常にどんぶり勘定のアナスタシアが通りまーす。こういうものは走りながら考えるべし!
上手くいかない場合はその都度修正していけばいいんだよ。の精神でお送りしております。
いや、誰に送っているの?誰も私のこの気持ち受信してないね。
まぁ、いいや。それより最後のフレーバーのキャラメルだよ。
絶対美味しいよね。子供の頃ピンクのスプーンのお店で一番好きな味だったんだよね。
ベースのアイスクリームは完成しているから、あとはキャラメルソースを作るだけだよ。
かんたーん! と言いたいところだけど残念。食い意地は張っているのにお菓子作りはあんまりしてこなかったんだよね。砂糖と生クリームとバターで出来てる事は知ってる。
昔、ピピロッテとりんご狩りに行ったときに厨房でキャラメルソース作りを手伝ったもんね。ゆっくりかき回すのを手伝ったんだよ。
だた、どのタイミングで何を入れるかは憶えてない!
そんなもんだよ。
砂糖と水でカラメルを作ってから生クリーム入れたらよかったけ??
まだ、誰もいない研究室に入ると早速試作品を作るべく鍋を取り出す。
早速、砂糖と少しの水を入れて加熱を始める。砂糖が狐色に変わったので生クリームをドバっと投入した瞬間、視界が真っ白になるほどの蒸気が吹き上がり―———
「お疲れ様です~」
「今日は新作アイスクリームだ! あ、ピッピが一人で来るって珍しいね」
「えぇ、先生に呼ばれてアーシャには先に行って貰ってたのって……ア、アーシャ。早速始めてしまって―――」
バチバチバチ!!!
「ギャー!! 痛い!! 」
「ひぃぃぃ!爆発!? 」
驚きのあまり、ピピロッテの赤毛のお下げが猫のようにピンとなる。
「な、なに!! 」
「!!」
ランスロットはキョロキョロと室内を見まわし、一緒に入ってきたグレチェンは驚きのあまり無言で固まる中アナスタシアの叫び声が部屋に響き渡る。
「飴! 飴が指にくっついたぁ~!! 痛いよぉぉぉ! 」
魔法で作ったシャリシャリの氷水に手を突っ込みながら、魂が抜けた顔で座っているアナスタシアにピピロッテは腰に手を当て、眉間に皺を寄せて怒った顔をして注意をする。
「はぁ~、アーシャに失礼を承知で申し上げますわ。あなたは今日からここでの『火気厳禁』です! 」
髪の毛についた飴をグレチェンが丁寧に拭いてくれているなか、アナスタシアは半べそで手を冷やしながら反論する。
「えぇっ! 私、オーナーよ!? 開発責任者……」
「ダメだよ! 俺でも分かるよ。指先がこれ以上焼けるの見たくないよ」
「そうです。飴が今も手にくっついたまま……」
「うぅ……。痛い。チャビー早く来てぇ」
「とりあえず、空気を入れ替えよう。グレはチャビー探してきて、ピッピと俺は窓を開けてから掃除だね」
「わかった! チャビー探してくる! 」
「ギグルスもチャビーと一緒に図書館じゃない? 」
「ありがとう。図書館行ってくるね。アーシャ様もう少しの我慢です。待っててくださいね」
「うん。グレありがとう。ランキーとピッピも爆発の後の処理ごめんね。ありがとう」
「おう! まかせてくれ!」
「えぇ、心配しないで。最近習った浄化の魔法を使う時が来ただけよ」
「そうだね。ナイスタイミング! 」
部屋に充満した焦げた砂糖の甘くて苦い香りを逃がす為にランスロットが長い腕をいっぱいに伸ばして、高い位置の窓を次々と開けていく。
あぁ、キャラメルポップコーン食べたい。反省した様子を見せつつも心は食べ物。
反省の色なしである。
「まずは空気の浄化ね。 Pekwatqーペクワットゥッー」
部屋に充満していた甘くて少し焦げ臭い煙が、目に見える速さで窓の外へと吸い込まれていく。
「汚れを取り除くのは Kasigade'nーカシガデェンーだったね! おぉ!ここだけ綺麗になったぞ」
「不思議ね。部屋の空気は1回で綺麗になったのに、この飴のこびりついたのは1回では落ちないわ」
「何回か繰り返したら大丈夫そうだぞ」
「えぇ、そうね。皆が来るまでに出来るところまでしましょう。アーシャは大人しく手を冷やしててね」
「はーい」
ピピロッテの赤毛がいつもの位置に戻っているのを確認しつつ、アナスタシアは心の中で呟く。
おかしい。中身は皆よりだいぶ大人なのにこんな失敗を犯して心配をかけてしまうなんて。
カサカサだった指先が飴がつっくいた火傷で更にボロボロだよ。
心も体もキャラメルアイスで潤うはずが悪化させてしまった。
手が氷水で冷え冷えに潤ってる??
簡単だと思っていたのに。はぁ……。
チャビー! 早く来て!




