アイスクリームは簡単じゃない
自己紹介の後に学校で用意して貰った研究室という名のアイスクリーム部の部室へと移動する。
ピピロッテがカチャリと鍵を開けて入室を促す。
「どうぞ入ってください。今後この部屋が私達の研究室になるんですって。ね、アナスタシア様」
「そうなの。これ、みんなの分の合鍵。大事にしてね。あ、そこの魔道具にはまだ、触っちゃダメだよ!」
大事な魔道具や、アイスクリームの実験レシピのメモが置いてあるので私達以外の生徒にいたずらされないように皆にもしっかりと注意をしてもらうように説明をする。
大きな作業机と食堂から保存して貰ってる牛乳や砂糖を持ってきて日々実験である。
アイスクリームは何千回と前世で食べてきたし、作り方はざっくりと分かっている気がしたけれど、実際に作ったことは無かった。
分量も覚えてない。せめて比率位覚えていればよかったんだけど、役立たずな記憶力で申し訳ない。
なにもチートが出来ない凡人だった。良い家柄に生まれていなければ人生早々に詰んでたかもね。
バニラビーンズもない。なので、まずはミルクアイス的なものを作る事を目標としたい。
そして、アナスタシアがイメージするアイスクリームを皆に伝えるのがとても難しい。
ピピロッテもイメージがつかめていないので、私の説明が悪い。
食べたことが無い物を説明して作ってもらうのがこんなに難しいとは…。
料理人を学校に呼ぶことは出来ないので自分達で何とかするしかない。
初めてピピロッテと一緒に作った試作品を皆に食べて貰ったときに、グレチェンちゃんの
「これは、甘い牛乳味の雪みたいですね」
って発言に、うぅーあぁーん。違うの。もっと美味しいのトロトロなのよぉ。
どれだけ説明しても食べたことがないので想像がつかなくて頭を傾げられるばかり。
異世界転生者! 皆どうやってるの!? 全然出来ない。
転生者を助けてくれる人達、実はとても凄い人達なんじゃ!?
はっ!!ドナ!
魔道具作ってくれてるドナは凄かった。商品販売にまでもっていったコンラッドも出来る男だった。
お店までオープンしたし、絵本もお父様に言われて作ってくれたようだしね。
やるぅ! ってそうじゃなかった。
まぁ、そうだよね。皆子供だし、そんな簡単に行くわけないよね。私勘違いしてたよ。
恥ずかしいね。本当にもう。反省だね。
皆、アルバイトで来てくれているので文句も言わず魔法の練習をしながら、私の作りたいものを実現させようと一生懸命協力してくれる。感謝しなきゃね。
「アナスタシア様、俺魔法のコントロールが苦手ですが、ちゃんと使えるようになるので待っててくださいね!! 鍋かき混ぜておきます! 」
ランスロット君は魔力の出力が強く出てしまうので、強弱をつける練習中。その分率先して力仕事を引き受けて頑張ってくれる。
なんとか、ミルクアイスを卒業し、最近、試行錯誤の末に卵黄と砂糖を最初に混ぜてから、温めた牛乳を混ぜてゆるいカスタード状態にしてから冷やしては混ぜ。冷やしては混ぜを複数回繰り返している。
「Kwatkwークワトゥク」
氷結の魔法を駆使して冷凍庫を使わず時短アイスを作っている。
なんだかイメージする物に近づいてきている感じはするんだけど、なんだかアイスクリンっぽいんだよねぇ……。これは、アイスクリームの歴史をかなり早送り?
なんかつぶつぶとダマみたいなのも出来てしまっているし。濾せばいいの?
濾すなんて作業はなかった気がするんだよね……。
子供でも挑戦できるレシピだったと思っていたんだけどなぁ。
なんて私が一人でウンウンと悩んでいる間に他の5人は試食をして楽しんでいる。
「美味しいです!卵のおかげでしょうか」
「僕はもっと、食べたいよぉ」
「チャールズ君、俺も気持ちがよくわかるけど、食べ過ぎるとお腹を壊すからダメなんだって」
「僕は正直言って、たくさん食べてお腹を壊しても後悔はないよ」
「わかる」
「ダメですよ。アナスタシア様が心配して、中止になったら毎日食べられなくなるんですよ」
「それは、嫌だなぁ」
「俺は毎日食べたい」
「私も毎日食べたいです」
「このアイスクリームがアナスタシア様から合格が貰えると次の味のものを作るんですって」
「え! 新しい味! ピピロッテ様本当ですか? 食べたいわ。えへへ。考えたらニヤけてきちゃう」
「新しい味……」
「とりあえず、アナスタシア様は考え中なので邪魔しないようにしましょう」
「はーい」
部屋に帰ったら、まずは濾す道具を用意してもらおう。
あ!パッセ!
そうだよ。パッセだ。裏漉しのことだよね。たしか。
良く見てた料理動画の人が使ってた言葉!
ってこんなこと思い出しても役に立たないじゃんよ。あーん。
円錐形の漉し器ってあるのかな。もっと簡単なものでいいか。
どうせ使ったことないし。
アナスタシアの中ではパッセを面倒くさがる魚の料理人のショート動画が脳内再生されていることでしょう……。
オルサポルタから始まったを書き始めて1年が経ちました。
これからも、のんびりではありますがアナスタシアの世界を少しづつ増やしていきたいと思っています。
今年は少しでも多く更新出来るように頑張っていきたいと思います。
今後ともお付き合いいただけますととても嬉しいです。




