アルバイトの募集をかける
魔法の解禁の呪文を唱え、遂に魔法が使えるようになった! とはしゃぎ倒した私は実際の授業で魔法を習い始めてちょっとだけ現実を知る。
「Pukteweiープクトゥウェイ」
新しく学んだ呪文で小さな炎が指先に出てくる。
魔法が使えるようになれば誰でも使える基本的な生活魔法だ。
新しい魔法を使えるようになるたびにアナスタシアはワクワクする。
でも、ここには魔法の箒はない。
空飛ぶアイテム不在!
今の所、空飛んでる人を見たことが無い。
やっと、列車が走り始めた時代なので、空を飛ぶのは当たり前の世界ではないらしい。
私がまだ知らないだけかもしれないけれど、目立ちすぎるのは厳禁。
人間を装っている我が領に住むエルフ族の一員としてビュンビュン空を飛ぶのは控えたい。
目立って皆に迷惑をかけるのは私の望むことではないからだ。
ちょっと残念である。
空を飛ぶ野望はとりあえず横に置いておくとして、アナスタシアはこれまでずっと温めてきた別の野望の一つを実現させようと思っている。
最近は基本の生活魔法からグレードアップして氷を出す魔法も教えてもらって、物を冷やしてみたりすることも出来るようになった。色々な魔法が使えるようになったことで現実的に考えることが出来るようになってきた気がする。
数年前に両親と豪華列車に乗って訪れたアトレータ。三人で食べた果物を凍らせて削った甘味がとても美味しかったのをずっと覚えている。
フルーツのかき氷のようなものは、とっても美味しかった。
あれ以降アトレータに夏に行くことがあれば食べるようになったが、ちょっと物足りない。
そう、私はアイスクリームが食べたい!
ここ数年アイスクリームが登場するのを楽しみにしていたのにこの世界にはアイスクリームの概念そのものが存在しないらしい。
「あのシャリシャリした氷じゃないのよねー。私が求めているのは、もっとこう、舌の上でまったり溶ける暴力的なまでの甘み……あぁ、よだれが……」
じゅるっ。
それなら作るしかないじゃない?
幸い、私には財力のある実家がある。皆にもあの味を知ってもらうべく、お店を出すことに決めた。お父様とお母様におねだりして、ソナーシャに続く新しいお店を街の大通りに建設中だ。
パステルカラー色のとても素敵な建物になる予定である。
お店の完成までに、あの舌ざわりが滑らかで美味しい商品を完成させなくては!
というわけで、私のアイスクリーム作りを手伝ってくれる仲間を大募集する。
学業の合間の『不定期募集』だ。
先生も学生のアルバイト募集を推奨していたので、掲示板への掲載も相談済み。
『お菓子作りの開発に協力してくれる人募集!力仕事あり!』
親友のピピロッテも手伝ってくれるというので、これほど心強いことはない!
アイスクリームに使えそうな魔法に関しては学校の図書館にある氷や冷却の魔法に関する本を借りてきてピピロッテと一緒に集めた金属のトレーに水を入れて冷やしたり、凍らせたりする実験をしている。
そうして、氷の魔法もうまく使えるようになってきた頃、不定期募集のアルバイトの人達が集まったので一度説明会と参加者の面談を行うようにと先生から声をかけられる。
2日後に先生がセッティングしてくれた掲示板横の部屋で面談が行われた。
基本的に貴族の子息たちが集う場所だけあって、とても洗練された空間だった。
ドアを開けて入室すると正面奥の大きな窓からは、放課後の柔らかい光が差し込んでいる。
壁紙は白地に淡い緑の植物紋様。かつて前世で流行ったボタニカル柄を思わせる、上品で落ち着いた空間だ。
部屋の中央には、美しい木目が浮き出た大きなテーブルが鎮座していた。
それを囲むように、重厚な装飾が施された緑をベースとしたソファや木製の椅子がゆったりと配置されている。
そこに私とピピロッテを含む六人が腰を下ろしていた。
ふかふかのソファに深く身を沈める者、背筋を伸ばして硬い椅子に座る者……。
皆子供らしい仕草で少し落ち着きがない。
「こんにちは、アナスタシア・トゥースゲアタです。今回の募集を行いました。この領地を親が治めています。皆さんについて教えてください。」
「ピピロッテ・モンゴメリーといいます。伯爵家の出身でアナスタシア様のお手伝いをしています。」
赤毛のピピロッテが私に続いて自己紹介をしてくれる。
次に周りの雰囲気を読んで丸っこくて可愛いオリーブグリーンの髪の毛の男の子が挨拶を始める。
「チャールズ・ディオスコリデスです。子爵家でオルサポルタ領の北西部にある薬草が有名な町の出身です。」
チャールズの挨拶を引き継いでひょろっとした男の子が続く。
「ランスロット・フィデリスです。男爵家でエクォス出身です。代々領地を守る仕事に家族はついています。お菓子が沢山食べれるのを期待しています! 」
次にニコニコ笑顔で、アプリコットブロンドの髪色の女の子が続く。
「ジョージアナ・アークライトです。準男爵で同じくエクォス出身です。新しい物もお菓子も好きです! えへへ! 」
最後に椅子に座っている金髪でボブヘアの緊張で表情が無くなっている女の子が自己紹介を始める。
「グレチェン・カワードです。フラーテル出身の平民です。祖母が貴族出身だったので入学することになりました。どうぞ宜しくお願いします」
そうして、アイスクリームショップを作るメンバー6人がここに集まったのだった。
一部、誤字脱字が酷い部分がありましたので修正いたしました。




