ジョージアナの魔道具
裏漉し器を手に入れ、ランスロット君がせっせとアイスクリームの原液を裏漉ししたので黄身のつぶつぶ問題はある程度解消された。
でも、未だにアイスクリン感がぬぐえない。
日々の作業は二時間程度に留め、その後は自由時間という事にした結果、以前より皆との仲がとても良くなり、皆で家族や親しい人から呼ばれている愛称で呼び合うようになった。
授業でわからない部分を教えあったり、一緒に作業をしたりしている。
ある日、チャビーことチャールズがまん丸い手で針に糸を通しながら苦手な刺繍について文句を言っている。
「どうして刺繍の時間なんてあるんだ。僕は刺繍なんて女の子がするものだと思っていたよ」
「まぁ!チャビーって細かい作業が苦手なの?」
「違うよ。刺繍が苦手なんだよ。こんな授業僕には必要ない気がする」
「えへへ! 私とっても得意なのよ。ねっ!グレも上手よね」
「うん。私はお姉ちゃんに小さい時から教えて貰ってるの」
「チャビー。兄さん達から聞いたけど軍学校では縫物は必須だよ。服が破れたら自分で縫わなきゃいけないんだって」
「僕は軍学校に行かないよ。医学学院に行くんだ」
「でも、私達も必須なんですって」
「そうそう、授業の単位の合格証明に技能章を貰うんだ。それを俺らは自分達で技能帯に縫い付けないといけないからな」
「技能帯? 何それ」
「ほら、上級生が制服の上から肩に斜めに掛けてる、あの太いリボンみたいな帯のことだよ。あそこに、合格した授業の技能章を自分でどんどん縫い付けていくんだ。卒業式は技能帯を付けた正装になるから、綺麗に縫えるようにならないと格好悪いよ」
「えぇ! 僕は知らなかったよ。侍女に頼んだらダメなの?」
「それは侍女の仕事ではありませんって断られるよ、きっと」
「綺麗に縫えないと裁縫章が貰えないから卒業できないよ。あれは必須章だよねー」
ギグルスの愛称で呼ばれるようになったジョージアナが笑顔でグレチェンを見る。
「チャ、チャビー。一緒に頑張ろう」
「まだ、呼び方がぎこちない」
「この部屋の中だけってことでも緊張するの」
「ランキーは結構上手ね」
「ありがとう! ピッピはさすがだな」
ランスロットとピピロッテも仲良く刺繍を見せ合っている。
「ねぇ、アーシャの刺繍はどう?」
アナスタシアはアプリコット・ブロンドのツインテールを揺らした満面の笑みのギグルスに話しかけられて、可愛くてニヤつきそうになる顔を必死で抑えながらこちらも微笑む。
「ほら、見て結構上出来じゃない?」
「本当!この狼とっても可愛いわ」
「ミスターポムよ。雪が降り始めるとオルサポルタにやってくる人気者よ」
「そうなの?いつか本物が見てみたいわ。あ!アーシャ。あのね、ちょっと作ったのを見てほしいの」
そういうとジョージアナは鞄から何かを取り出して組み立て始めた。
「えぇ勿論。何を見て欲しいの?」
「じゃーん! これだよ!」
そうやって見せてきたのは手回し式のハンドミキサーだった。
ハンドミキサー! 手回し式だけどあったの? 皆に泡立て器で混ぜて貰ってたのに!
「まぁ!ハンドル式の泡立て器ね!」
「えへへ! アーシャ! 聞いて!お父様にお手紙を書いて相談してたのよ」
「お父様に相談?」
「えぇ!実はこれ、魔石を使って自動で動くようにしたのよ。えっへん!」
「じ、自動式!? ギグルスはそんな物が作れるの?」
「そうよ!私のお父様はとても凄い魔道具職人なの」
話ながらジョージアナはスライドさせて開けた部分に魔石を入れて蓋を閉めると泡立て器が回りだす。
「これで、アイスクリームを混ぜるのが簡単になると思うの! 明日から試してもいいかしら?」
「えぇ!勿論よ! ギグルスは天才よ!」
「えへへ!うれしぃー!」
ジョージアナとアナスタシアの二人で盛り上がっていると他の4人も刺繍を止めて泡立て器の魔道具を見に来る。
器に水を入れて、少しだけ凍らせたものを泡立て器の魔道具で混ぜると細かいシャーベットのようなものが以前より簡単に出来るようになった。
「凄いぞ!ギグルスは!」
「これで時間短縮ですって? アイスクリームの完成に近づきましたわ!」
「おぉー! たのしぃー」
「ギグルスすご~い」
明日、早速これでアイスクリーム作りを試してみようという事で今日は解散になった。
どうしよう。とっても楽しみなんだけど。




