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トケナイ氷  作者: 朱手
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外伝II革命のウタ 3話・勧誘




 トントンッと今日三度目のノックの音が夕暮れ時の室内に鳴らされる。

「入れ。」


 内心イライラしていた。

(どっちだ?

次こそあの娘か?)


 扉から嫌な音を起てながら小さな可愛い手がその合間より現れ、その主全体が見える。


 イザラだった。

 今日一日待ちくたびれていたが実際にその時がくると疲れなど吹き飛んでしまった。


「あぁ、さそりを捕獲してくれたのか。

今何かお茶でも用意しよう、そこに座ってくれ。」

 しかしイザラに感情を少しでも悟られないようにと落ち着き、紅茶とケーキを運んであげた。


「はい、どうぞ。

知ってるかもしれないが俺の名前はアーカス・タイク。

君はイザラ・アーシェ、だよね?」


「は、ハイ!」

 イザラはアーカスから見てもわかるくらいに目の前に出された甘い花の香りがする紅茶とクリームたっぷりのケーキが気になっていた。

 そんなイザラを見てアーカスはクスクスッと笑う。


「何故こんな良い物を出してくれるんですか?」

 不思議そうな顔をアーカシに向ける。


「君に少し頼みたいことがあるだけだよ。

何ならおかわりをしてくれてもいいぞ。

あっ、さそりを先に預かるよ。」


 一瞬ドキッとしたがさそりでごまかす。


 さそりが逃げ出さないようにきつく結ばれたひもをもう一度確認する。


 空気が次第に重くなっていっているのを感じ、適当なことを聞く。


「今日の任務は一人だったのか?」


「いえ、カナスさんという人と一緒にしましたよ。」


「彼が一緒か。」

 カナスの成功を聞け、安心する。


「頼みたいことって何ですか?」


「君は少しせっかちだな。」


 アーカスは覚悟を決め、話し出す。


「実は君の実力を買って、俺から一つの任務を頼みたい。

とてもハイリスクで命の保障はできない。」


「仕事の具体的な内容は?」


「引き受けてくれるまでは話せない。」


 心の中で引き受けてくれることを祈っていた。


「わかりました。

その仕事させて下さい。」

 計画通りに進んでいることはアーカス自身も驚いていた。


「ありがとう!

それで内容だが………。」



 アーカスは自分の大きめの椅子に座り込み、ニヤリと笑う。



「君には砂帝の暗殺を頼みたい。」


「エッ!?」

 二人の間の空気が止まる。


「どういうことですか?」

 あたふたとうろたえながらも、腰につけている短剣の鞘に手をかけようとする。


 アーカスはそれを見逃さないでスペルを唱える。

「―click―」

 舌打ちをすると短剣は部屋の端に弾き飛ばされ、アーカスは一歩近付く。


「落ち着け!

君程度のナイトなんて、一瞬で殺せる。

話を最後まで聞きなさい!」


 言葉の中に少しの魔力を込め放つと、イザラは大人しくなった。


「理由を簡単に言えば、砂帝は魔獣を使った実験を行っているのは知っているな。

しかし今やっているのは人間を使っての実験だ。

人間に魔獣の血を与え、新しい生物、最強の軍隊を創りだそうとしている。」


「軍隊が出来上がれば戦争になる、そして大量の血が流れる………。」

 イザラの言葉は正しかった、しかし。


「それだけならまだいい。

その実験はまだ未完成段階なんだ。

そしてその実験に使われた魔獣か人間かわからないモノ達は失敗作とわかると棄てられる。

しかしどうやってか抜け出した奴がいて、今現在にも人を襲っている。

先日は二人のナイトが殺された。

今回はそれだけの被害で済んだがこの次はさらに強い奴が抜け出すかもしれん。

そんなことになる前に砂帝を暗殺し、これ以上無駄な血は流させん!」


 アーカスはメリーとレグザのことを思い出し、胸が痛んだ。


「つまり砂帝が戦争のための化け物を創ろうとしているのと、その実験のために犠牲になってる民を守るために砂帝暗殺ですか。」


「やってくれるだろう?」


「………出来ません。

ごめんなさい!!」

 イザラの言葉にいついてしまう。

「 ―この瞳に

    映る

    万物を

    解放

    封印

    祟呪せよ

  “万鏡ノ瞳”―」

 イザラに見詰められ動けなくなってしまう。

 そしてイザラは後ろ向きに歩き、窓から飛び降り逃げ出した。


 イザラの瞳がなくなり動けるようにはなったが、アーカスはその場に座り込んでしまった。


「今のがあの少女の力……。」


「フハハ、ハーハハッハッハハハー!!」

 急に無気味に笑い出す。


「これだ!

これならいける!!

砂帝を討てるぞ!!

ハーハハッハッハハハー!!

ハーハッハッハハハー!!!」

 その笑い声に載せて黒い影は次第に大きくなりつつあった。







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