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トケナイ氷  作者: 朱手
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外伝II革命のヒトミ 3話・接触




 タンッタンッとゆっくりな足音が夕暮れの朱い色に染められていく廊下に広がっていく。


 少女は手に猛毒を持つ蟲、さそりが大量に入った袋を手に歩いていた。


 受付はすぐ近くなので歩かなくてよいのだが、ナイト長に直接渡しに行けと言われナイト長のもとへ向かっていた。


(ナイト長か。

あの人渋くて格好良かったな。)

 黄昏れ時だからか、少しふわふわした期待をしながらナイト長の部屋の前まで来た。


 着いてみると緊張して服装や髪型のチェックをし、深呼吸をしてノックをする。


「入れ!」

 少し不機嫌そうな声が聞こえ、それに応えるように開けた扉が嫌な音を起てる。


「あぁ、さそりを捕獲してくれたのか。

今何かお茶でも用意しよう、そこに座ってくれ。」

 イザラを見ると機嫌が直ったのかとても紳士的になり、イザラは言われた通りの場所に座った。


「はい、どうぞ。

知ってるかもしれないが俺の名前はアーカス・タイク。

君はイザラ・アーシェ、だよね?」


「は、ハイ!」

 イザラは目の前に出された甘い花の香りがする紅茶とクリームたっぷりのケーキが気になっていた。

 そしてその二つはイザラの瞳をキラキラと輝かさせた。


「何故こんな良い物を出してくれるんですか?」

 ふとした疑問を投げかける。


「君に少し頼みたいことがあるだけだよ。

何ならおかわりをしてくれてもいいぞ。

あっ、さそりを先に預かるよ。」


 イザラも忘れており、二つの袋を手渡す。


 そうするとフォークを手にケーキを食べ始める。


「今日の任務は一人だったのか?」


「いえ、カナスさんという人と一緒にしましたよ。」


「彼が一緒か。」

 その言葉に意味深な何かを感じる。


「頼みたいことって何ですか?」

 我慢出来ずに聞いてみる。


「君は少しせっかちだな。

実は君の実力を買って、俺から一つの任務を頼みたい。

とてもハイリスクで命の保障はできない。」


「仕事の具体的な内容は?」


「引き受けてくれるまでは話せない。」


 イザラは残ったケーキをつつきながら考えた。


「わかりました。

その仕事させて下さい。」


「ありがとう!

それで内容だが………。」


 アーカスは自分の大きめの椅子に座り込み、ニヤリと笑う。



「君には砂帝の暗殺を頼みたい。」


「エッ!?」

 二人の間の空気が止まる。


「どういうことですか?」

 あたふたとうろたえながらも、いつも腰につけている短剣の鞘に手をかけようとする。


「―click―」

 アーカスの舌打ちの音が聞こえたかと思うと短剣は部屋の端に弾き飛ばされ、イザラは間合いを伺う。


「落ち着け!

君程度のナイトなんて、一瞬で殺せる。

話を最後まで聞きなさい!」


 イザラはアーカスから放たれる威圧感に押され大人しくなった。


「理由を簡単に言えば、砂帝は魔獣を使った実験を行っているのは知っているな。

しかし今やっているのは人間を使っての実験だ。

人間に魔獣の血を与え、新しい生物、最強の軍隊を創りだそうとしている。」


「軍隊が出来上がれば戦争になる、そして大量の血が流れる………。」

 イザラの脳裏に民の悲惨な姿が過ぎった。


「それだけならまだいい。

その実験はまだ未完成段階なんだ。

そしてその実験に使われた魔獣か人間かわからないモノ達は失敗作とわかると棄てられる。

しかしどうやってか抜け出した奴がいて、今現在にも人を襲っている。

先日は二人のナイトが殺された。

今回はそれだけの被害で済んだがこの次はさらに強い奴が抜け出すかもしれん。

そんなことになる前に砂帝を暗殺し、これ以上無駄な血は流させん!」


 イザラはアーカスの言葉に圧倒されていた。


「つまり砂帝が戦争のための化け物を創ろうとしているのと、その実験のために犠牲になってる民を守るために砂帝暗殺ですか。」


「やってくれるだろう?」


「………出来ません。

ごめんなさい!!」

 そう言うと、スペルを唱え始める。

「 ―この瞳に

    映る

    万物を

    解放

    封印

    祟呪せよ

  “万鏡ノ瞳”―」

 アーカスの身体は動けなくなり、イザラはアーカスを見詰めたまま、後ろ向きに歩き、窓から飛び降り逃げ出した。


(家に帰って隠れれば、父様が帰って来るまでならどうにかなるかな……。)


不安を胸に家を目指しただひたすら走った。


 ついに触れてしまった黒い影から逃げるために。







明けましておめでとうございます。これからもトケナイ氷と朱手をよろしくお願いします。

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