第8話「あの人はずっと期待してるんだよ、人生に」
「これで、時間を移動できるんですか・・・?!」
「無理だ!」
「!?」
「実は作り始めたのが先週でね、全然完成してないんだよ!ははっ」
「でも、まだってことは完成する目処は立ってるんですか?現実になるもんなんですか?」
「わからん!ただやってみただけだ!」
・・・まあそうだよな、そんなもんだよな
「そう、ですか・・・」
苦笑いしている俺を見て社長が少し真剣な顔をした
「変なことほど、やってみるべきだ!いつの時代も、違和感が大発明を生むからな!」
もうやめたいこの会社・・・
ーーー
カシュ
ゴクゴクゴク
社内の説明が一通り終わり、俺と浩貴は会社のベンチで休憩していた
「結局、拍子抜けだった・・・」
「なにか期待してたのか?」
「期待・・・してたかもな」
「まじ!?」
「でもタイムマシンに対してじゃないんだ」
俺は続けて言った
「前の会社辞めた時思ったんだよ、なんか現実って・・・死ぬほど予想通りだなって」
「そうか?」
「まあ小さいハプニングもたまにはあるんだけど」
「近所のバイト応募したら唯一の学生時代の友人が二人とも居たりとかな」
浩貴はいたずらな顔で笑いながら言った
「そうそう、社長がマッドサイエンティストだしな」
なんだか高校時代を思い出しながら俺も笑いながら返した
「けど、この8年楽しいときも、苦しいときもなんとなく大きな変化があるんじゃないかって期待して生きてきたんだよ」
「やりたいことを見つけて、大きな夢に本気になれたり、大切な人に出会って本気で恋したり」
「でも、意外と大きく動くことはなくて。気づいたら期待するのもやめてた」
浩貴は少しうつむいた
「・・・」
俺は缶コーヒーを飲み干して言った
「でもさ、この”会社には”結構期待してたんだよ!」
「??」
「発明品だの何だのって、タイムマシン作る話を真面目に言っちゃうくらい、あの人はずっと期待してるんだよ、人生に」
浩貴は顔を伏せて笑って言った
「そうだな」
「だから、タイムマシンの話は拍子抜けだが。この会社は期待以上に面白いよ、浩貴!」
ーーー
「それにしても、お前本気の恋をしてないってまだ童貞なのか?」
おれは顔を真っ赤にして言った
「な、な、おま・・・そうだよ悪いか」
「そっか」
浩貴はなにか含みのある顔をしていた
「この8年って言ってたけど、昔は居たのか?好きな人」
浩貴はなにか質問以上に聞きたいことがあるようだった
「なんだよ急に・・・」
「・・・」
「おまえ、学生時代・・・氷花のこと好きだったんじゃないのか?」




