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すずまち製作所  作者: 鶏皮:塩
第二章
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33/37

第33話「ハハハッ!青春だな!」


「行こうか…」


俺達は祭りを楽しむ人の群れに入っていった


「この辺、こんなに人が住んでたんだね」


「そうですね…普段は道を歩いていても誰とも会わないのに、不思議ですね!」


さっきまでの表情と打って変わって、乙花さんの表情は少し柔らかくなっていた


その表情を見て俺も楽しむ決意が固くなっていた


「たこ焼きと唐揚げ、焼きそばもあるよ!乙花さん、どれ食べたい?」


「あのぉ…」


「ん?」


「その、私のことは…」


ガヤガヤ


周りの音にかき消されてその先は聞こえなかった


「ごめん、今なんて?」


「いや!何でもありません!うーん…どれも悩みます」


なんだったんだ…


「わかった!じゃあ一通り買ってくるから、ここで座って待ってて!」


俺は近くのベンチに乙花さんを座らせた


———


「あとは、たこ焼きか…」


俺は大量の食べ物を抱えてたこ焼きの行列に並んだ


さっき乙花さん、なんて言ってたんだろう


一人で考えていた時だった


「あれ…?」


さっきまで乙花さんが座っていたベンチに誰もいなかったのだ


乙花さん!?なにか買いに行ったのかな…けどあの子が勝手に一人で動くとも考えづらいし


とりあえず探しに行かないと!


「乙花さーん!どこ!?」


人混みをかき分けながら大きな声で叫んだ



———祭り会場の外


「あの…枕井さんはここにいるんですか?」


「そうだよ~、買い物したらここで食べるって言ってたよ~”枕井さん”に遅くなるから伝えておいてって言われたの~」


乙花紅子と話していたのはキャップを深く被った中年の男だった


「わかりました…」


「もう着くからね~」


「(着いてきちゃったけど大丈夫かな…?)」


「到着!」


男が指さした先は昨日、二人が遊んだ河川敷だった


「ここって…」


乙花紅子は明らかに何かがおかしいという表情をしていた



「友達、一緒に待ってようね~暗いからね~」


「……はい」


———


「はぁ…はぁ…乙花さーん!」


どこに行ってしまったんだ、乙花さんは…


もう一通り祭りの会場はみたが、どこにもいない


このへんでもうめぼしい場所は…


俺は彼女がいそうな場所を探しながら、祖父の家に来てからのことを思い出していた


待ち合わせの場所、家の近く、二人で話した河川敷…


「河川敷…一応行ってみるか」


そう思っていた時ポケットのスマホから通知音が鳴った


「そうだ、あの人に連絡してたんだった!」


「あ、もしもし!」


———河川敷


「かわいいねぇ~君、名前は?」


「乙花…です」


「下の名前は?」


「……」


「なんで言えないの!?」


中年の男は明らかに声色を変えて大声を出していた


「おい…なんで言えないの…?」


「や…やめてください…」


男は乙花紅子に覆いかぶさった


「いや…やめて…!」


その時、少し離れた場所から大きな声が聞こえた


「乙花さん!耳をふさいで!」


それは、枕井纏の声だった


乙花紅子は何も聞かずにとっさに耳をふさいだ


「キイィィィィン」


枕井纏のスマホから河川敷に耳障りの悪いモスキート音が鳴り響いた




「うお!?」


男はうるさくて耳を塞いだが、もう遅かった


「なんだか、力が抜けて…き…た」


男が倒れ込んだのを見て枕井纏は乙花紅子の方を向いた


「おっしゃ!乙花さん!行くよ!」


枕井纏は手を差し出して言った


———


「「はぁ…はぁ…」」


「もう少しで祭りの会場着くから…」


「はい…」


俺達は祭りの入口のすぐ近くにたどり着いていた


「あの…ありがとうございます…!ごめんなさい…」


乙花さんは今にも泣き出しそうな声で言った


その声を聞いた俺は立ち止まって振り返り彼女の目を見て言った


「ん?あ、ごめん聞こえなかった」


耳から2つコルクを抜きながら言った


「これ、射的屋のおじさんに貰ったんだ!」


「それにしてもほんっっっとに良かった…!無事で!なにか傷つけられたりしてない!?」


そう言うと彼女は少し安心したような顔をした


「はい、私は無傷です…!」


すこし無理をしたような笑顔で言った


強い子だな…


そう思っていた時俺達は気づいた、ずっと手を繋いでいたことを


「あ!ご、ごめん!勢いで手なんか繋いじゃって…」


俺は手繋いでいた手を慌てて離した


「いや!全然、大丈夫です…!」


そう話していると、俺のスマホから大きな声が鳴り響いた


『ハハハッ!青春だな!』


スピーカーにしてたの忘れてた…



俺はとっさに持っていたスマホを耳に当てて早口で言った


「もう大丈夫です社長!切りますそれじゃあ!」


「……」


「電話…?してたんですか?それにあれは一体何だったんですか?あの人音を聞いた瞬間に怯んでたし…」


「あれはね!社長の発明なんだ!」


「社長…?」


「ああ、ごめん、科学好きの友達がいてね…その人に電話したら」


「『少し待ってくれ、何かあったときのために”防犯ブザーレベル100”を創っておく!電話は繋いでおけよ!』って」


俺は社長のモノマネをしながら言った


「よく分からないですけど、その社長さんのおかげで助かりました…!」


「ほんとだね、社長にまたお礼言っておかないと…ハハッ」



少しの沈黙があったあと、俺は切り出した


「とりあえず、中に入ろう!」


「ちょっと待ってください!」


乙花さんは俺の手を強く引っ張って言った


「!?」




「あ、あの…私…枕井さんに言いたいことが…」
















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