第30話「未来の君は、”そう”なってる」
「今、なんて…?」
よく知っている名前だった…まさかそんなわけ無いだろ
「はい?乙花ですけど…?」
ありえない…たまたま田舎で仲良くなった子どもが。たまたま東京で出会って…たまたま気になっていたと…
俺は2026年の乙花さんと交わした会話を思い出していた
『その日は初日じゃ・・・ないんだけどなぁ』
そうだ…あの時、二人で帰った日。乙花さんはそう言ったんだ…
乙花さんは俺のことを覚えてくれていたんだ…!
「あのぉ?」
乙花さんが考え込んでいる俺を覗き込んできた
「あの!あ、いや!なんでもない!」
今目の前にいる少女が乙花さんで。しかもずっと俺を覚えていたと知ると急に目が合わせられなくなった
ヤバすぎるだろ…惚れてしまいそうだ!ただ顔や性格だけじゃない…これは
『あまりにも出来すぎていますね…』
『これも運命だろう!』
そう、運命を感じてしまった
「あのぉ…川つきましたよ?」
「ごっ、ごめん!さあ入ろうか!」
「私は足だけで…」
「俺もそうしよう…」
———
俺達は岩の上から足を水につけて座っていた
「……」
気まずい…昔は何を話していたんだったっけ…
「あっ、あの!」
沈黙を切り裂くように乙花さんが口を開いた
「はい!?」
「あの時のこと…覚えてますか?」
「あの時?」
「初めて会った日のことです…ちょうどこの川で出会ったんですよ」
そうだったっけ…?彼女からしたら4年前のことだが、俺からしたら14年前の話だ
「この川で溺れそうになっていた私を、枕井さんが助けてくれたんですよ」
そんな事あったっけ…?
「助けてくれたときの枕井さんヒーローみたいでした」
「それは、吊り橋効果じゃないかなぁ…?」
俺は照れ隠しを言ったが顔はにやけて歪んでいた
「声も出せない私を見つけて大きな声で言ってくれた『俺が行くから』って」
そうだ、小学生までの俺はこんなに陰気ではなかったのだ!
「助けてくれたあとも、震えてる私を見てパニックにならないように普通に接してくれたんです。「どこからきたの?」とか「いくつなの?」とか」
「ただ、同世代の子を見つけてテンションが上ってただけじゃないかなぁ」
俺は少し笑いながら言った
「それでも私には、すごくいい思い出です!それにあの日から”人の感情に寄り添える、こんな人になりたい”って思うようになったんです。まだまだ、難しいですけどね…」
そうか…そうだったのか。未来の彼女は俺を見て…
「未来の君は、”そう”なってる。俺が惚れちゃうくらいにね!」
「??」
つい未来の話しをしてしまった俺を見て、乙花さんはぽかんとしていた
「あ、いや。なんでもない!そろそろ暗くなるし戻ろうか!」
「はい!」
———
俺達は鈴木のおばあさんの家についていた
「じゃあ、またね!」
「はい!また…!」
振り返ろうとした俺に乙花さんが聞いてきた
「あの!」
「??」
「いつまで、こっちにいるんでしょうか…?」
「明後日までいるよ!乙花さんは?」
「私も…同じです…」
彼女は少し顔を赤くして言った
「そう!じゃあ暇なときは声かけてよ!俺もどうせ退屈してるからさ!」
俺はもう一度振り返ろうとした、その時だった
「あ、あの!」
「ん?」
「あっ、明日…例年通り…やるらしいです、お祭り…」
そういえば一昨年は乙花さんと行ったんだっけな…なんでそんな神イベントを覚えていないのだ俺は
「そうかー今年もやるんだね!乙花さんは行くの?」
「あ、あの…明日…私と一緒にお祭り行ってくれませんかっ!?」
え…




