第29話「14歳になりました…」
ミーンミーン
「今、なんて…?」
なんでこの人が…こんなところに…?
———5時間前
「はぁ…なんでこんな大事なタイミングで3日間も取られないといけないんだ…」
「なんか言った?」
「なんでもない…」
毎年の恒例行事の祖父の家への里帰りを完全に忘れていた俺は祖父の家に向かう途中の山道を眺めながら考えていた
「ハハハッ、まあ纏も遊びたい時期だもんな!そりゃあ里帰りは気乗りしないよな」
父が運転しながら俺に話しかけた
「いや、そういうわけでもないけど…」
「お?何だ意外と乗り気なのか?」
「そういうわけでもない」
ブルルル
「それにしても、じいちゃんちってほんとに遠いよなぁ」
俺は久しぶりの家族の会話を楽しんでみることにした。
「まあなぁ、じいちゃんたちは変人だからなぁ」
父が苦笑いしながら言った
「ちょっと、私の両親なんですけど」
「はは…そうでした」
「変人だから山奥に住んでるってこと?」
「まぁそうだな。見てみろ!」
父は左に見える大きなダムを顎で指しながら言った
「あのダムができる前、じいちゃんたちはあそこに住んでたんだ」
「そうなんだ…」
なんの話だ?
「けど、ダムを作ることになって。あそこに住んでた人たちはみんな都市部…まあ鈴戸町に降りてきたんだけど…」
「だけど?」
「じいちゃんたちは、『もっと山奥で住もう!』って言い出したんだ…」
「変人だな」
「こら!あんたたち人の両親を…」
「「ハハハッ!」」
———
「やっと着いたな…」
祖父の家は、秘境なだけはあり大きな杉の森を抜けた先に上流のきれいな川が見える景色の良い場所だ
「いつ見ても、綺麗だなぁ」
俺がそうつぶやいた時だった
「わかる様になってきたな、マー坊」
マー坊…そう呼ぶのは一人しかいない…そう、祖父だった
「じいちゃん、久しぶりだな」
「マー坊はしばらく見ん間に大きくなったのぉ…ところでこれは出来たんか?」
じいちゃんは小指を立てながらそう言った。
「出来てねぇよ…まだな!悪いか!」
「わしの血を引いてるのになんでこんなにイケてないんじゃろうな…」
このジジイを殴りたい
「そういえば、あの子。今年も来とったぞ」
「あの子?」
「覚えとらんのか?4年前から仲良くなっとった鈴木さんとこのお孫さん!」
「鈴木さん…?」
俺は思い出していた…そういえば14年前確かに祖父の家のご近所さんの家によく行っていたことを
当時の俺は祖父の家が退屈すぎて近所の川を探索していた。
同年代くらいの子どもを見つけて仲良くなっていたのだ…そういえば、高校入ってからあの子とも会わなくなったんだよな
「ああ…そんな事もあったな」
「なんで、そんなに前のことみたいに言うんじゃ…一昨年なんか一緒にお祭りも行っとったのに…」
そりゃあ14年も経ってるからな…
「鈴木さんとこにも挨拶行ってこい」
祖父に半ば強制的に連れて行かれた
———
「ごめんくださーい!鈴木さーん!マー坊が来たぞー!」
でかい声だなこの爺さん
ガラガラッ
「あぁ…よく来たねぇ。マー君」
扉から出てきたのは祖父とは対象的なヨボヨボのおばあさんだった
「ど、どうも。お久しぶりです」
どんな風に話してたっけ…
「ウフフ、他人行儀ねぇ」
なんだか、色々見透かされているような感覚だった
「おばあちゃ…あ、どうも」
玄関先で話していると、おばあさんの後ろから少女が出てきた…すごくかわいい
「こうこちゃん、前みたいに二人で遊んできたら?」
こうこちゃん?そんな名前だったのか
「そうじゃ!二人で川でも行ってこい!」
「「!?」」
こうこちゃんは引っ張り出されて、俺達は締め出された
「じゃ、じゃあ行こうか…」
「ですね…」
———
おいおい、何だこのラブコメイベントは…こんな美少女と川遊びできるなら3日削られても全く問題ない!
それにしても、この顔。どこかで…
そんな事を考えているとこうこちゃんは俺に話しかけてきた
「あの、久しぶり…ですね」
「そ、そうだね!2年は会ってないもんね!そういえば今いくつなんだっけ!?」
俺は緊張のあまり、息継ぎを忘れて話していた
「14歳になりました…中学2年です」
彼女は恥ずかしそうにうつむいて言った
「そっか、俺なんてもう高校1年だよ…お互い年取ると昔みたいにはしゃいで遊べなくなるね」
「そうですね…」
彼女は少し微笑みながら言った
そういえばこの子の名前、昔の俺は知らなかった気がする…
過去の俺とタイムスリップしてからの俺の行動が少し違ったからなのか、鈴木のおばあさんから「こうこちゃん」という名前を聞いたのは初めてだったのだ
「そういえば、鈴木 こうこちゃん?でいいんだよね!俺は枕井 纏!俺達あんなに遊んでたのに自己紹介もしてなかった気がする…」
「確かにそうですね…!あ、あと鈴木は母の旧姓で…す」
「そうなの?じゃあ何さん?教えて!」
名前を聞いた時俺の心臓は跳ね上がった
「私の名前は…乙花 紅子です…」




