第28話「夏休みだぞ?」
「君のタイムリミットは…40日」
茉莉花は俺の目を見て言った
「40日…か」
少しうつむくような俺を見て茉莉花が聞いた
「思ったより短かった?」
「いや…全然!なんせブラック企業をやめた俺がタイムマシンで過去に戻るまで40日もかかってないんだ!好きな人を振り向かせるくらいなら十分すぎる!」
決意を固めた俺を見て社長が言った
「しかし、大丈夫か?今日、7月25日から40日間は夏休みだぞ?」
「え…?」
おいおい、夏休みだと…?学校なら毎日会えるからアプローチできるが、夏休みとなると難易度は一気に上るぞ…
「ちょっと考えます…」
明らかにテンションが落ちた俺を見て社長が言った
「おい、枕井くん!恋愛の相談はよく分からんが、会う口実なら考えておこう!この計画が成功しなければ未来の私も困るからな!」
「ありがとうございます!」
———
「もう外が暗くなってきたな、私たちも帰ろう!」
「はい」
「その前に…これだ!」
社長は何世代も前のスマホを取り出した
「連絡先を交換しておけば、困ったときも安心だろ!」
なんだか、未来の社長よりとっつきやすいんだな。高校生の社長は
「そう…ですね!」
「茉莉花くんもせっかくだし、交換しておいたらどうだ?」
「いいよ」
「「「ピコンッ」」」
3人のスマホが交換完了の通知を鳴らした
———
俺は一人で家路についていた
「懐かしい道だなぁ」
俺の生まれたこの町「涼戸町」は丘の上にある。高台から見える景色は結構きれいなのを今思い出した
赤みを帯びているけど少し高い夕日を見ながら家に帰っていると色々思い出す
「今ここにいるんだな」
過去に戻ったことをとても実感した瞬間だった
気づけば実家に到着していた
「久々だなぁ」
社会人になってから年に一度くらいしか帰っていないのだが、今は高校生の姿だからなのかなんだか未来より落ち着く
ガチャ
「ただいま~」
こんな感じでいいんだっけ?高校生の俺はどんな風に親と関わっていたか覚えてないぞ…
「あら、遅かったじゃない。ご飯もうすぐできるわよ」
大人の俺が年に一度帰ってきた対応じゃない。高校生の俺に向けた表情は懐かしくてなんだか嬉しかった
見慣れていた景色だったが、大人になるとこういうので胸が締め付けられるんだな…
「どうしたの?その顔。まるで久々に実家に帰ってきて、ノスタルジーに浸ってるみたいな顔ね」
何だその的確な指摘は!母親は子供のことになると勘が鋭い…
「なんでもない…」
そう言いながら俺はそそくさと自分の部屋に戻った
「どうしたのかしら…?」
ガチャ
「ふぅー」
ベッドに倒れ込み少し落ち着いていた
「……」
それにしても、明日からどうするか計画を建てないとな…
夏休みに氷花たちと遊んだ記憶なんて2回くらいしかないぞ
俺達は学校ではよく話していたし、親友と呼べるほど仲が良かった自信もあるが俺と氷花が内気な性格だったから、浩貴からの誘いがないと休みの日に会うことはなかった
「でも今回は、浩貴の誘いを待ってる余裕はないからな…」
コンコンと扉をノックする音が聞こえた
「はーい」
扉の裏で母親が言った
「ご飯できたわよ」
とりあえず、飯を食べてから考えよう…
———
うちの実家では食事中にテレビを付けて食べる
『今、巷ではポコモンGOが大流行中——』
『ペンメロンマンゴーペン!——』
『主演のお二人に踊っていただきましょう!鯉ダンスです!——』
懐かしいっちゃ懐かしいが、10年も前だったのか…これらは
「そういえば、あんた準備できてるの?」
母がもぐもぐしながら話しかけてきた
「何が?」
「あんた忘れたの?明日から3日間、おじいちゃんち行くんだからね!」
「え…」
「ちゃんと準備しときなさいよ!」
俺は未来を変えないといけないんだぞ…3日も潰されるのはまずすぎる…
「あの、今年俺はいかないっていうのは…」
「だめに決まってるでしょ!」
こうして俺は3日間の拘束が確定したのだった
——タイムリミットまで残り39日




