第25話「きみがマトイーで、私がドクターなら」
俺は子供の頃みた「バック・トゥザ・イエスタデイ」のあらすじを思い出していた——
話はこうだ、主人公の青年マトイー・マクライが未来を変えるためにドクターのタイムマシンで過去に行く
途中でアクシデントに見舞われるが…結局、過去のドクターに助けてもらって未来に戻るって話だった
「おい…きみ」
手紙を不思議そうに眺めながら社長…もとい部長が口を開いた
「なんですか?」
「本当に、私がタイムマシンを創ったのか…?」
「!?」
なんで急に信じる気になった?
「この字、間違いなく私の字だ…だがこんな手紙を君に渡した覚えもないからな。記憶にないということは過去ではなく、未来で渡したというのは理屈が通っている」
「そうです!」
やっと信じてもらえそうだ
「ところで、君。本当の名前は?まさか本当にマトイーマクライではないだろう?」
「俺は、すずまち製作所開発部…枕井 纏です!」
っと、そうだ免許証でも見せれば信じてもらえるだろう
ゴソゴソ
財布あった
ん……?
「何だこのダサい財布」
厨二病全開のギラギラしたチェーンの付いた財布が出てきた
高校時代、こんな財布を使ってたなぁ…って待てよ
俺は自分の体に目をやると、高校時代の制服を着ていた
「うわああああ!」
俺は若返っていた、紛れもない10年前の自分だった
つまり、俺は、過去の自分を乗っ取る形でこの時代に存在している…!
まあでもよくよく考えれば都合がいい…高校生として動ければ色々とやりやすいからな…
俺はそんな事を考えている時、放り出した財布から高校の学生証が少し見えていた
財布を拾い上げ、俺の学生証を見て社長、もとい部長が笑い始めた
「本当に君は、枕井…纏……ハハハッ…フハハハ!」
いつもの社長に戻ったような笑い方だった
「なるほど!すべてが見えてきた!」
「!?」
「きみがマトイーで、私がドクターなら!この手紙は未来の私が君を託した証拠だということだ!」
「!!!」
なるほど…社長は、過去の自分に俺のサポートを頼んだのか…
「さてマトイー!きみは何を変えに来た!?」
「俺は…」
俺はきっと、社長や俺達が作ったタイムマシンを証明するためにここに来たんだ!
もうなにかに期待しなくて良い。俺と同じように諦めた誰かを期待させられる!
それに…氷花との未来を変えたい!
「俺は、好きな女の結婚相手を変えに来た!」
「映画と展開は少し違うが…気に入った!」
社長は俺にチームリーダーになる決断を迫ったときと同じ顔をした
「ところで、社長。ここはどこなんですか?」
「ここは、『涼戸町』!私の通っている明英高校の近くの公園だ!」
「『すずとちょう』!?東京にしてはビルも少ないですけど…」
「東京ではない!ここは四国の田舎だ!」
四国の「すずと」なんて町はもう一つしかない…
この人は俺と同じ出身地だったんだ…!
なるほど…俺の出身地が自分と同じだと知っていて、あの手紙を過去の自分に渡していたのか…
履歴書ちゃんと見てたことに驚きだわ…
「あまりにも出来すぎていますね…」
「これも運命だろう!」
「科学者なのに、運命なんて言うんですね」
「科学者こそロマンが必要だ!」
そうだな…この人の言うとおりだ!ロマンは現実にできるって、俺達はもう知っている
そんな話をしていたら後ろからまた聞き馴染みのある声が聞こえた
「鈴間 野良…」
「おう!茉莉花くん!今日もよく来てくれた!」
そこには、大人の頃とあまり変わらない背丈で、学生服を着た昔の茉莉花がいた
俺は興奮を抑えられず声が漏れていた
「まっ、茉莉花…茉莉花!」
また涙が出そうだった、年を取ると涙もろくなるってのは本当だったんだな
茉莉花は俺を睨んでいた
「誰…?会ったことはないはず」
そうだった…この時代の茉莉花は俺のこと知らないよね…
「あ、いや…あれだ!新聞で見たんだ!めっちゃすごい発明したとかで!」
苦しい嘘だったが、茉莉花も社長も世界最高レベルの科学者のはずだ…新聞くらい乗っててもおかしくはない
「そう…」
新聞載ってたんだね…信じてもらえてよかった
「来てくれて嬉しいぞ!茉莉花くん!ぜひ、私の後継者になってくれ!科学部のメンバーに加わってくれ!」
そうか!ここはきっと社長にとっても大事な日だったんだ!ここで茉莉花が部活に入って、すずまちの開発メンバーになる未来へ行くんだ!
社長は自分の思い出にそんなに興味なさそうだもんな…確かに茉莉花を仲間にした日がタイムマシンの着地点ってのは納得がいく!
茉莉花が仲間に…
「鈴間野良、しつこい。私は…科学部には入らない」
はい?




