第16話「チューブを経過したアジは、調理済み」
ーーー3日後
「完成だー!」
社長が事務所の扉から大声で叫んだ
俺達は期待に満ちた顔で作業場へ向かった
「やっと、アジから解放されるのか・・・」
俺は、安堵の表情で言った
「まだ、4日しかやってないだろー!リーダー」
浩貴が少し笑いながら言った
「到着だ!ご覧に入れよう!」
社長は水槽にかけていた大きな布を外し俺達に見せた
「「「「「「おお!」」」」」」
そこには、横幅10mほどの大きな水槽にアジが何匹も泳いでいた
ここでアジが生きてるってことは間違いなく成功だ
「だが、もちろんこれだけじゃないぞ!茉莉花くん!あれを」
「わかった」
茉莉花は水槽の近くにある機械で時間を「1分後」に設定し少し離れた
ガシャンガシャン
1分経つと釣り竿を持ったアームだけのロボットが中のアジを水槽から1匹だけ釣り上げた
「すげえ、釣りロボットだ・・・海に持っていきたい・・・茉莉花さんもう一台俺専用につくってほしいです!」
釣りが趣味の浩貴はよだれを垂らしながら言った
「50万円、必要」
茉莉花が言った
「ボーナス払いで・・・」
浩貴はうなだれた様子だった
「さあさあ、すごいのはここからだ!」
つられた魚は黒いチューブをつたっていく
どうなるんだ
「チューブを経過したアジは、調理済み」
そう茉莉花がつぶやいた時だった
チューブの出口からゴールである七輪の上に開かれたアジが出てきた
「このままアジを焼いて終了だ!」
想像以上に馬鹿らしい設計だが、それがこの会社の良いところな気もする・・・
「すごいです!二人とも!」
巴ちゃんが目を輝かせて言った
「ああ、そうだな。何はともあれ、これでタイムマシンの開発に勢いがついた!このまま進めていこう!」
今までの自分からは想像できないセリフだった
すずまちが少しずつ俺を前進させていることを実感したのだった
ーーー昼休みにて
思い返せば、入社してから考え事が多くて昼食もまともに取れていなかった
今日は流石になんか食べるか、と考えていた時だった
「お疲れ様、纏」
「おお、氷花。おつかれ」
「・・・」
「昼飯、買いに行くんだけど一緒にいかないか?」
「ええ、私も今日はお弁当作る時間がなかったから買いに行こうと思ってたの」
こうして二人きりになる時間は久しぶりだった
「あのさ、纏」
「何だ?氷花」
「最近の纏ってなんか変わったよね」
「そうか・・・?昔から適応能力高いからな、この変な会社に染まってないと良いんだが」
「なんだか社長に似てきた気がする」
氷花は微笑みながら言った
「それは・・・最悪だな」
「「ハハハッ」」
ーーー
「おう!二人とも、今から昼飯か?」
事務所を出る途中に浩貴が声をかけてきた
「ああ、今から買いに行こうと思ってたとこだ」
「俺もついていこーっと!」
三人で購買に行っていた高校時代のようだった
そんなことを考えていたら到着していた。コンビニ「コスモス」に
そういえば、すずまちの最寄りのコンビニはここだったな・・・
しばらく二人と顔合わせてなかったしちょうどよかった
ウィン
「いらっしゃいませ~、あ、枕井さん!」
柳がいた
「おう、柳、おつかれさま」
「いやぁ、久しぶりですね!待ってましたよ!今日は同僚の方も一緒ですか?」
「そうなんだよ、この二人は・・・」
俺が紹介しようとしていた時、柳が大きな声で遮った
「って、あー!この間の!」
浩貴を指さして驚いていた
「その節はどうも・・・」
浩貴は苦い顔で深々頭を下げた
何だ何だこの状況は
「二人は知り合いなのか?」
「ああ、色々あってな・・・」
浩貴はずっと苦い顔をしている
「なるほど!枕井さんの就職先はすずまちだったんですね!いやぁ、面白い偶然もあるもんだなぁ」
「たしかにな、これからまたたくさん顔を合わせることになりそうだな」
そんな話をしている時だった
「柳くんー、裏の整理終わった・・・枕井さん!とこの間の方!?」
裏から乙花さんが出てきた
「お、乙花さん。久しぶりだね」
少し緊張していた
「お、お久しぶりです!全然来ないから心配したじゃないですかぁ!」
なんて可愛いんだ、乙花ちゃん!
すると柳が口を開いた
「乙花ちゃんずっと寂しがってたんですよ!枕井さんが来なくなってからミスも連発で。大変でしたよ!」
「!?」
すると浩貴が少し茶化したように言った
「おいおい、纏くぅーん隅に置けないねぇ!」
ムカつく・・・コイツらなんか雰囲気似てるんだよな。陽キャの空気ってやつか
そんな事を考えていた時だった
グイッ
急に氷花が俺の腕を抱き寄せてきた
「え!?なになに?あの・・・氷花?」
すこし怒っているような表情で氷花が言った
「そろそろいかないと、”一緒に”御飯食べる時間がなくなる」
なんでこんなに”一緒に”を強調してるんだ・・・
そう考えていたら今度は乙花さんが口を開いた
「でもぉ、せっかく久しぶりに会えたんだしもう少し”私と”話してくれますよね?」
乙花さんも少し怖い表情で言った
睨み合った二人が言葉をかわす
「そんな時間はないわ」
「あら、お二人はお先に戻ってても良いんじゃないですかぁ?」
何だこの状況は・・・!?




