商店街で働く異世界の住人
「ナゼ……助ケタ。人間ノオマエガ、我々ノ子供ヲ……」
と、声色を変えてゴブリンの親を演じるさとみに、
「うわあ、親が出てきちゃったよ。っていうか、運転手さんなの?異世界に転生するのは」
と、トラックの運転手を演じるさとみ。
「フフフ、オカシナ人間ダ……サア、コレヲ持ッテ行クガイイ」
「こ、これは、ひょっとして魔王を倒すための重要アイテム?」
「コノ商店街デオツカイタダケル、スタンプカードダ」
「いやいやいや!それってこのあいだの春やすみに、あたしがこの商店街で配ってたスタンプラリーのカードだから!」
「一等賞ノ方二ハ、三日間オツカイタダケル食ベ放題ノチケットヲ進呈イタシマース!」
「働いてるの?まさかこの商店街で、異世界の住人が働いてる?」
あらためてハルミは、舞台のうえから会場を見わたした。
座席にすわって舞台を見ている、一般のお客さんたち。
そのうしろに立って、背伸びをしながらこちらを見あげている、ユースケをはじめとする自分たちよりもおさない商店街の子どもたち。
そして世話役と呼ばれる、商店街のイベントを取りしきるハッピすがたの人びと。
その中に、ひとりの少年がまじっていることにハルミは気がついた。
仕立てとお直しの職人らしい、白いシャツに灰色のベストとパンツすがた。
ただしその上には、「えびす橋商店街」の文字が染めぬかれた真紅のハッピを羽織っている。
出会ったときから変わらない、凍てついた氷のような瞳の持ち主に向かって、
「どうも、ありがとうございましたー!」
漫才を終えた二人は、ありったけの笑顔でおじぎをした。




