服は、わたしたちに寄り添ってくれる
「ところで、あたし、行ってみたいところがあるんだけど」
火を吐くドラゴンや、ゴブリンやエルフ。
魔物や妖精たちが住む異世界を旅して、魔王を倒してみたいと言うさとみに、
「だったら交通事故に遭って、異世界に生まれ変わらなきゃ」
と、転生をするためのきっかけが必要だと説明するハルミ。
「まずはトラックに轢かれそうになった子猫を助けるところからね」
「わかった、じゃああんたトラックの運転手やって」
「わかった、ブーン、わあ、子猫だ!キキーッ」
「猫はニャーでしょ」
と首をかしげるさとみに、
「鳴き声じゃないよ!トラックのブレーキの音だよ!」
とツッコむハルミ。
「じゃあトラックに轢かれそうになったゴブリンの子供を助けようとして、身代りにドカン!」
「もう異世界だよ、そこ!ゴブリンがいる時点で転生の必要ないから!」
今回はじめて試してみた、さとみがボケを、ハルミがツッコミを担当した漫才。
どうなることやらと思いながら本番にのぞんだのだが、思った以上にハルミは手ごたえを感じていた。
キレのあるシャープなハルミのツッコミを受けても、動じることなく新たなボケをくり出し続けるさとみ。
それは自信や余裕というよりも使命感に支えられているのかもしれない、ハルミは思った。
そう、わたしたちはここで終わるわけにはいかないのだ。
間違っていることを間違っていると、はっきりと言える世界を残すために。
声をあげるのは、こわい。
それまで当たりまえだと思われていたことを、変えるためには勇気がいる。
けれども、
「そんなとき、服はわたしたちに寄りそってくれる」
カンパネアで出会ったこずえさんの言葉を、ハルミは思い出す。
「さまざまな変化を人が乗り越えようとするとき。それは服のすがたを借りて、わたしたちと共にあるー」




