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動かない、足
舞台の上を、ハルミは見あげている。
と言っても、客席からではない。「舞台そで」と呼ばれる、舞台の左右に垂れ下ったソデ幕に隠れた、客席からは見えない所からだ。
そこで、ハルミは出番を待っている。
客席の明りはすでに消えていて、舞台の上は眩しいスポットライトで照らされている。その上にはスタンドに取りつけられたマイクが一台。キラキラとライトを受けて輝いている。
ハルミがその前に立つことを、ステージで待ち受けているはずのマイク。
そう、ハルミは出番を待っている。
なのに、足が動かない。
舞台に向かって歩き出そうとしても、まるで地面に縫いつけられたようにピクリとも足が動かない。
それは、
『ったく、なんてダサい恰好してるの!』
という、嘲るような声のせいだろうか。
それとも、
『わかってるよ、あたしが足を引っ張ってるってことは……』
と言う、冷ややかな声のせいだろうか。
そして、目が覚める。
「また、この夢か……」
ハルミは布団の上に身体を起こすと、それから深い溜息をつく。




