この服を求めている世界
「そうねえ、どうかしら」
安楽椅子とよばれる、肘かけのついたソファーみたいな大きな椅子。
そこに座っていた女性が首をかしげた。
はんぶん眠っているみたいな、トロリとした眼ざしの持ち主だった。
それは少し重たげな、二重のまぶたのせいでそう見えるのだろうか。
それとも琥珀色の瞳をふちどるまつ毛が、あまりにも長くて垂れさがっているように見えるせいだろうか。
ふっくらとしたくちびるの両はしが少し吊りあがっているさまが、たっぷりした昼寝に満足して背中を伸ばしている猫の表情を思い出させる。
しかし、なによりもハルミの目をひいたのは、その髪型だった。
まるで内側から光を放っているような、銀色の髪。
それがモジャモジャと頭のうえで絡まりあっているせいで、複雑怪奇なかたちをした王冠を、頭に押しいただいているみたいに見える。
忘れもしない。
それは先週に行われたデユエマのファッション・ショーで、最後にランウェイに現れたチーフ・デザイナーだった。
「この服は、今のデュエマが追い求めている服ではありません。
それは明らかです」
ゆったりとした黒いジャケットに、黒いパンツに黒い靴。
銀色の輝きを放つ、銀細工でできたカラスの巣のような髪の持ち主はそう言った。
そして、
「けれども、わたしにはこの服を追い求めている者が、いや世界が見えるような気がします」
と、つけ加えた。
その言葉に、
「……」
と、顔を見合わせる審査員たち。




