ゴブリンだけじゃない?
無理もない。
黒いドレスをまとったゴブリンのうしろから、こんどは立ちあがったトカゲのようなリザードマンの女性があらわれたのだ。
身長は、二メートル近いのではないだろうか。
ヒト型の女性に比べるとかなりのなで肩だが、からだの幅はずいぶんと広い。
金色にかがやく瞳と、全身をおおいつくすエメラルドグリーンのうろこ。
そして透きとおった真珠のような、磨きあげられた大きな爪。
二本足で立ちあがった宝石が、スポットライトを受けて歩いているみたいだ。
しかし、なによりも観客の目を引いたのは、その女性が下着すがたでランウェイに現れたことだった。
「これは?」
と、ランウェイに向かって身をのりだす観客たち。
その前で、
(え?)
ドレスを脱いで下着すがたになったゴブリン族のモデルが、リザードマンのモデルに脱いだドレスを手渡したのだった。
(まさか)
それまでゴブリンが着ていたドレスに、リザードマンが袖を通した。
「おお!」
会場から、声があがった。
リザードマンのからだが服をまとうと同時に、それまで生地をおおいつくしていたひだが伸びて、まったく新しいシルエットのドレスが出現したのだった。
しかも、
「このドレスは、アンシンメトリーだったのか!」
小柄なゴブリン族が着ていたときには左右が同じかたちをしていたドレスが、体の幅が広いリザードマンが着ることによって、右と左の形状が異なった非対称なデザインに変化していた。
まぶしいスポットライトの中に浮かびあがる、ランウェイの上で生まれたばかりの生きもののようなシルエット。
そのすがたを見て、客席でことばを失っている人々の足もとが、
ずしん。
とつぜん、揺れた。




