生まれながらに引き受けているもの
「わたしたちはみんな、生まれながらにして、選ぶことのできないものを引き受けている」
マイクを手にしたウォルフィの声が、大広間に響いた。
「身長や骨格。
肌や髪の毛や瞳の色。
国や民族や性別」
スポットライトを浴びてステージに立った、真っすぐに伸びたたウォルフィの背中。
その迫力に、
(あいつ、やっぱりすごい)
見ているだけで、なぜだか目がうるんでくることにハルミは気がついた。
「そのことに対して、ファッションはどうあるべきなのか」
ウォルフィのことばが終わるとともに、ひとりの女性がステージにすがたを見せた。
(あれは……)
そのからだを彼女に与えたのは、神だろうか、それとも悪魔だろうか。
身長の半分以上を占める長い足と、果物みたいに小さな顔。
生まれながらに授かったバランスのとれた骨格と、絶え間ない訓練の果てにしかあらわれることのない緊張感のあるたたずまい。
ただし、背は高くはなかった。
カンパネアで見かける、平均的なヒト型の種族の身長。
それよりもずっと低かった。
なぜなら、
「ゴブリン?」
亜麻色とよばれる、夏の日ざしをたっぷりと吸いこんだ麦わらのような色の髪。
緑がかったなめらかな肌と、するどい爪のはえた指。
ランウェイに現れたのはゴブリン族と呼ばれる、カンパネアでも特に小がらな種族のモデルだった。
モデルが身にまとっているのは、すその長いドレスだった。
スカートのすそが床にふれるほどに長い、肩があらわになった黒色のドレス。
イブニングドレスと呼ばれる、舞踏会や晩さん会などに着ていくための服装である。
ドレープとよばれる、肩からすそにかけて布地が流れ落ちていくようなひだ。
それがモデルの動きに合わせて、さざ波のように揺れうごく。
生地そのものにもプリーツと呼ばれる、細かい折りひだが無数に入っているらしい。
モデルが歩くたびに形を変えつづける、命を吹きこまれた彫刻のような、しなやかなシルエットのドレスである。
その時だった。
ランウェイを囲む客席から、ざわめく声が聞こえたのは。




