実に傲慢な考えだ
「この服を作ったのには、理由があります」
タブレットによる説明を終えたエルリック氏が、ハルミに向きなおった。
「ハルミさん、このカンパネアは、さまざまな種族が共存している共和国です。
そして残念なことに種族と種族との間には、ことあるごとに衝突がくり返されています」
けれども、誰もが同じシルエットの服を着ることができれば、どうなるだろうか。
性別や種族、身分や階級といった、人々を分け隔てているものを出来る限り減らすこと。
そうすれば、服によって争いをなくすことも可能だとエルリック氏は主張する。
「ハルミさん、わたしには使命があります」
「使命?」
「このカンパネアを、性別や種族や身分や出階級を超えて、誰もが理解し合うことのできる国にすることです」
そう言ってエルリック氏はソファーから立ちあがった。
「わたしたちはみんな、生まれながらにして選ぶことのできないものを引き受けています。
生れた国や性別や種族。
肌や髪の毛や瞳の色。
それぞれが異なる者たちが等しく幸せになれる世界を作るために、わたしは服で世界を変えたいのです」
熱のこもった声で、エルリック氏は語った。
ハルミにと言うよりは、となりに座っている息子へ理解を求めるように。
「誰もが自分の出自を超えて理解しあうことのできる世界を作りあげる。
そのために―」
その時だった。
「実に傲慢な考えだ」
不意に、ウォルフィが口を開いた。
「そして、根本的に間違っている」




