「鬼や悪魔や人でなし……いろんなことを言われてきました」
「ところでハルミさん、いかがでしたか、デュエマのファッション・ショーは」
ソファーに腰を落ちつけたエルリック氏がハルミにたずねた。
「圧倒されました」
ティ―カップを手に、ハルミは答えた。
染みひとつないテーブルクロスの上に紅茶をこぼさないように、それはそれは緊張しながら。
「すごく華やかで気品があって。
その中に揺らぐことのない信念のようなものが、一本通っているようで―」
「信念か、それはうれしい言葉だ」
ハルミの言ったことばを噛みしめるように、うんうんとうなずいてみせる三つ編みすがたの紳士。
「しかし、ここに至るまでに、どれだけの苦労を強いられてきたことか」
そう言ってエルリック氏は、暖炉の上に掛けられたタペストリーと呼ばれる織物に視線を移した。
カンパネアのシンボルカラーである、海をあらわす青色と火山をあらわす赤い色。
その上に金色の糸で刺繍された狼のすがたとハサミをかたどったデュエマの紋章。
「ごぞんじかもしれませんが、わたくしは贋ブランド品を作る業者を見つけ出す組織のリーダーを務めております。
そのために、ときには同じ業界の方々から非難を浴びるようなこともしてきました」
悲しげな表情で、エルリック氏が首を横に振った。
「鬼や悪魔や人でなし……色々なことを言われてきました」
(よほど恐れられているんだな、オオカミ人間って)
ハルミは思った。
まあウォルフィでさえ、あんなに大きなオーク族がすがたを見ただけで逃げ出すくらいだもんね。
「そのために、家族にはずいぶん迷惑をかけてきたと思っています。
いろいろと取り返しのつかないような……」
そう言ってエルリック氏は、チラリと横目でウォルフィの顔を見た。
やはり、おさない頃の息子を取り巻いていた環境に、かなりの責任を感じているらしい。
しかし当のウォルフィといえば、すました顔でお茶を飲んでいるだけだ。




