表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、異世界のファッション・ショーへ!JK漫才師が恋に落ちたヤンキー君の正体は高級ブランド店の御曹司?ただし……  作者: ときじく こみち
第2章:異世界カンパネアのファッション・ショーにご招待
30/61

「紹介しよう、父だ」

 モデルたちが登場するたびに、ランウェイを取りまく空気が熱を()びていくのがわかる。


 家臣(かしん)睥睨(へいげい)する女王のように堂々とした足どりであらわれる者や、夜明けとともに消えていく星々の(またた)きのように(はかな)げなステップを踏む者。


 野生の獣を思い起させるしなやかな動きでポーズを決める者や、からだの奥深い場所をしめつけるような(せつ)なげな表情で振り返ってみせる者。


 張りつめていた空気が()れ、(はじ)け、モデルたちを取りかこむ熱狂が更なる高みへとショーを押しあげてゆく。


 何かを(むか)えるための(うつわ)のようだ。

 ランウェイを取り(かこ)(かこ)んだ観客たちのすがたを見てハルミは思った。

 髪の毛ひとすじの(あやま)りも許されない、厳粛(げんしゅく)な手続きと熱狂(ねっきょう)の果てにだけ、()りてくる何か。


 観客席はそれを受けとめようとする無数の人間でできた(うつわ)のように、ハルミには見えたのだった。


 そして、終幕(フィナーレ)


 鳴り響く拍手の中、ショーに登場したすべてのモデルたちがもう一度ランウェイにすがたを見せた。


 ステージの中央では、デュエマのチーフ・デザイナーである黒ずくめの服を着た女性が、客席に向かって手を振っている。


 やがてモデルたちが一人ずつすがたを消していき、そのたびにランウェイを照らす照明がひとつずつ落ちていく。

 最後にチーフ・デザイナーがステージから消えるのと同時に、完全に照明が落ちた。


 ショーが終わった。


 何かに取り残されたような顔で照れくさそうに笑う人たちや、思いつめたような表情で顔を引きつらせている人。


 体の奥に()もった興奮(こうふん)を押さえこむのに必死な人や、今にも叫びだしそうな顔つきの人。


 そして魂が抜けたような表情でポカンとしているハルミみたいな人。


 その時だった。


「瀬戸宮ハルミさんですか?」

 と、日本語で話しかけられたのは。


(で、でかい……)

 その人物を見あげたハルミは、思わず声に出しそうになった。


 年齢は、四十歳を越えたあたりだろうか。

 筋肉質(きんにくしつ)の体を包みこんでいる、生地も仕立ても抜群(ばつぐん)のダークグレーのスーツすがた。

 長く伸ばした金髪を三つ編みにして肩の上で二つに振りわけているさまが、優雅(ゆうが)な貴族のようでもあり、気高(けだか)い戦士のようでもある。

 そして見覚(みおぼ)えのある、()てついた氷のような青みがかった瞳。


 気のせいだろうか。


 その男性のまわりの空気が、やけに濃いようにハルミには感じられた。

 まるでフル編成のオーケストラが演奏する嵐のような交響曲(こうきょうきょく)が、体の内側で鳴りひびいているような存在感。


「はじめまして、瀬戸内ハルミさん。エルリック・カンパネロ・デュエマと申します」

 金髪の巨漢は腰を折って、流暢(りゅうちょう)な日本語であいさつをした。


「紹介しよう、父だ」

 となりに立っていたウォルフィが言った。


(ち、父?)

 

 とつぜんの紹介におどろくハルミに向かって、ニッコリと笑みを浮かべるエルリック氏。


「お会いできて光栄です。よろしければ、別室でゆっくりとお話ししませんか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ