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ライバル登場?綺羅綺羅寿司(きらきらずし)の伽美亜(きゃびあ)と闘龍風(とりゅふ)、参上!

「えー、ご通行ちゅうのみなさま―!」

 というマイクを通した大きな声とともに、耳をつんざくようなダンスミュージックが響きわたった。


「ただ今、だいこく堂商店街にございます綺羅綺羅寿司(きらきらずし)では、春休み恒例(こうれい)の鉄火巻き一気食(いっきぐい)キャンペーンを開催ちゅうでーす!」

「時間内に十人前のお寿司を食べ終えた方は代金無料!」

「おまけに賞金まで差し上げちゃいまーす!」


 なにごとかと振り返った、ハルミの目に映ったもの。

 それはケバケバしいショッキングピンクに塗られた大型のワゴン車と、そのまわりを取り囲んで行進しているかっぽうぎすがたの若い男たちだった。

 男たちは割烹着(かっぽうぎ)こそ着ているものの、髪を茶色や金色に染めたりカラーコンタクトを入れていたり。あるいは日焼けした肌にピアスをじゃらつかせていたり。

 とにかく全員がホストっぽい、いかにもチャラけた身なりである。


 ワゴン車の中に置かれたDJブースから流れる音楽に合わせて男たちは、

「テッカ鉄火巻!テッカ鉄火巻!」

「ちょい残し?ちょい残し?」

「もういっちょ!もういっちょ!」

 と、謎の「一気食いコール」を連呼しながらずらりと横並びに整列すると、

若女将(わかおかみ)若旦那(わかだんな)、到着いたしました!」

 と、ワゴン車の中に向かってお辞儀(じぎ)をした。


「あ、あいつら!」

 ワゴン車のドアが開き、中から出てきた二人組。

 その姿を見て、ハルミは思わず声をあげた。

 

 この、えびす橋商店街のとなり町である、だいこく堂商店街。

 そこでお店を出している「綺羅綺羅寿司(きらきらずし)」の双子のきょうだい。伽美亜(きゃびあ)闘龍風(とりゅふ)が現われたからだった。


「ちょっと待ちなさいよ!」

 ツカツカツカと怒ったような足音を立てて、ハルミは伽美亜(きゃびあ)闘龍風(とりゅふ)に歩み寄った。

「アンタたち、ここはえびす橋商店街よ?自分のお店の宣伝だったら、自分の商店街でやりなさいよ!」


「あらまあ、誰かと思ったら、この間のコンテストでボロ負けした地味女じゃない?」

 ゴージャスな金色に(かがやく)くハッピを羽織(はお)った姉の伽美亜が、(つま)ようじみたいに細い眉毛(まゆげ)をハルミに向かって()りあげた。

 アッシュグレーから光沢(こうたく)のあるラベンダーピンクへとグラデーションしていく、ウエーブのかかった長い髪。

 パッチリ二重に整えられた瞳と、まぶたに乗せたキラキラと輝くラメ入りのアイシャドウ。

 くちびるは明るいピンク系のリップ。耳たぶには大ぶりなピアスが、胸もとにはキラキラと輝くネックレスがちらついている。

 

 その隣に立っているのは、目の()めるようなコバルトブルーのハッピを羽織(はお)った双子の弟の闘龍風。

 日焼けした肌に金色の髪。耳たぶにはダイヤモンドと思しきピアスが、大きくはだけた胸もとには、やはり細いネックレスがキラキラと光を放っている。

 

 二人とも右の手首にはじゃらじゃらとブレスレットを、左の手首には宝石がちりばめられたゴテゴテとした腕時計をはめている。

 ブランドのことなどまったく分からないが、この二人身につけているということは高価なものに違いないだろう。


「言っておくけどな、おまえたちの商店街の中には入っていないぜ?ほら」

 勝ち(ほこ)ったような表情を浮かべて、弟の闘龍風が地面を指さした。

 

 確かに二人が立っているのは、えびす橋商店街の敷地(しきち)からは一メートルほど(はな)れた所である。

 けれどもこんな近くでスピーカーから音楽を流されたら、商店街の中で地道に声がけをしているハルミたちの声は、かき消されてしまう。


「頼まれたって入るもんですか、こんな貧乏くさい商店街になんか」

 と、さらに毒舌を重ねる伽美亜。

「貧乏くさい商店街で貧乏くさい住人にチヤホヤされて、せいぜいアイドル気分を味わってなさいよ、このカン違い女!」

 

「カン違いしてるのは、あんたたちの方でしょ!」

 と、ハルミの方も負けてはいない。

「なによ、寿司屋のくせにキャビアだのトリュフだの酢飯に合いそうにもない名前を名乗っちゃって!っていうか、そんなにヒカリもんが好きだったらイワシとかコハダとか身の丈に合った名前を名乗りなさいよ!」


「よけいなお世話よ!言っとくけどね、ウチの店はそんじょそこらの寿司屋とは違うのよ?なんてったって日本で一番最初にドンペリ出した寿司屋なんだからね!」

と、勝ち(ほこ)るような表情の伽美亜の後に、


「このあいだもテレビ局が取材に来たんだぜ?」

 と、自慢げに続ける闘龍風。

「『こんなのアリ?ほかの町には知られたくないお店!』って番組なんだけど」


「……微妙(びみょう)な番組名ね」

 ハルミは首をひねった。

「『知られたくない』っていうタイトルが、恥ずかしいって意味で使われているような気がするんだけど……」


「それにしても、舞台衣装もひどかったけど、ふだん着ている服もお粗末(そまつ)そのものね」

 まぶたを(ふち)どる、というよりはほとんど(おお)いつくしているつけまつ毛をバタつかせながら。 伽美亜がハルミのハッピを指さした。

「何よそのハッピ?あっちこっちすり切れて、貧乏(びんぼう)くさいったらありゃしない」


「お似合いじゃないの?貧乏くさいこの町には」

 と、闘龍風もあざけるような視線を向ける。


「そうだそうだ!」

 と、ピンク色の割烹着(かっぽうぎ)を着た綺羅綺羅(きらきら)寿司の男たちも、

「はい!な~んで着ているの?なんで着ているの?」

「お金がないから着ているの!」

「も~脱いじゃって!捨てちゃって!」

 と、またしてもコールではやし立てる。


「それに比べて伽美亜さんと闘龍風さんの着ているハッピときたら」

「最高級のシルクでできた、特注のハッピだぞ?」

「悔しかったら、このくらいの服をあつらえてみろよ!」


 その時だった。




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