本当のすがた
「そのへんにしてくれないかな」
それまで若者たちの会話を黙って聞いていたウォルフィが、たまりかねたように口をはさんだ。
「デュエマに対して色々と思うところがあるのは分かる。
けれども、わざわざ店の前でそういうことを言うのは……」
「本当のことを言って何が悪いんだ」
ぶ厚いくちびるの隙間から牙をのぞかせたオーク族の若者が、うなり声をあげた。
建物の軒さきにまで届きそうな大きな体で、ズイとハルミたちの前に立ちふさがると、
「気に入らないんだったら、どかせてみろよ」
と、丸太のように太い腕をのばしてウォルフィのシャツの襟もとをつかみあげる。
その時だった。
「あ」
プツンという音とともに、襟もとからはずれたシャツのボタンがコロリと地面に落ちた。
同時に、
「……」
固く握りしめられたウォルフイの拳が、ブルブルと震え始めた。
「……たな」
いつのまにか、陶器人形のような顔のこめかみに浮きでた血管が、ピクピクと別の生き物のように脈打ち始めている。
「よくも、シャツを……」
そして、ハルミは見た。
怒りのあまりに血の気が引いて真っ白になったウォルフィの顔を、みっしりと生えた固い毛がザワザワとおおいつくしていく。
そして、
(ひえっ?)
ユラリと陽炎のように少年の体がふくれあがるのと同時に、
「俺のシャツをおおおおおおお!」
落雷のような遠吠えが、ビリビリと空気を震わせた。
肉を引き裂く鋭い爪と、骨を噛み砕く強靭な牙。
逆だつ毛なみの中で血の色に輝く、暗闇を見とおす肉食動物の瞳。
狙った獲物は決して逃さない、人間の一万倍ちかい嗅覚。
「うわあああ!こ、こいつ、狼頭族だ!」
「に、逃げろおっ!」
人狼の姿に変じたウォルフィの前から一目散に走り去っていく若者たちの悲鳴を聞きながら、
(も、もう、だめだ……)
ゆっくりと自分が気を失っていくのを、ハルミは感じていた……




