トラブル発生!相手は……
歴史を感じさせる回転式の扉をくぐれば、中は百年前のままだ。
やわらかな光を床に投げかける、百合の花びらをかたどったランプ。
金色の蛇のようにクネクネと壁を這いあがる、真鍮でできた階段の手すり。
様々な形のタイルがモザイクみたいに敷き詰められた玄関や、色とりどりのガラスがはめこまれたステンドグラス。
まるで建物全体が、心地よいリズムをきzみながら訪れる人を出むかえてくれているようだった。
(万華鏡をのぞいてるみたい……)
と、ウットリしながらハルミが店を見あげていた時だった。
「デュエマか、おれは気に入らないね」
という文字が、タブレットの画面に現われた。
「ああ、おれもだ」
どうやら、ハルミたちのすぐそばにいる若者たちの会話を、タブレットが拾ったらしい。
「押しつけがましいのよね、言うことが」
金色の瞳を吊りあげながら、猫目族の女の子が口を開いた。
「うちのじいちゃん、手縫いのネクタイ職人なんだけどさ。二度と仕事したくないって怒ってたよ。
生地を縫い合わせる時に縫い目の幅や数まで指定してくるんだって」
「そんなの、生地やデザインに合わせて変えていくのが昔ながらのカンパネア・スタイルじゃないか」
二メートル近い巨体のオーク族の若者が同意した。
「意味のある粗さや緩さだってあるんだ。
生地と縫い目の相性のことなんか、ぜんぜんわかってないんだよ」
ハルミの手の中でタブレットの画面が、若者たちの声を次々と日本語に変換する。
「カンパネアのためだとか言って、下請けにムチャばっかり押しつけてさ」
と、麦わら色の髪の毛を逆立てたゴブリン族の少年も首を横に振る。
「その基準がクリアできなければ仕事にありつけないんだから」
「結局さ、自分たちのことを、良く見せたいだけなんじゃないの」
と、髪を三つ編みにしたドワーフ族の少女も腕組みをする。
「普通じゃできないようなむずかしい要求をすることで、自分たちの地位を高く見せたいだけなんだよ」




