異世界カンパネアの街並みを散策!
港の近くにある、オープンテラスのカフェ。
そのテーブルで、ハルミたち三人は休憩を取った。
「こ、これ飲んでも大丈夫なの?」
グラスの中で緑色に泡だつ飲みものを前にしてたじろぐハルミに、
「安心しろ、人間の世界から持ちこまれた抹茶だ」
と、ストローを口に含んでみせるウォルフィ。
どうやら、この世界と人間の世界は、昔から何かしらの交流があったらしい。
でなければ、エルフやオーク、ゴブリンといった種族の物語が、ハルミたち人間の世界に広まることもなかっただろう。
(伝説や空想の生き物生じゃなかったんだ)
トカゲのようなすがたのリザードマンのウエイターが飲み物を運ぶさまを目で追いながら、ハルミは思った。
「以前にも言ったが、デュエマ家には十七歳になると『放浪修行』をする習わしがあるんだ。
マクシム公が若い頃に放浪していたときの経験を活かして、貧しい村だったカンパネアを一流の国にした言い伝えにちなんでね」
抹茶のドリンクを口に運びながらウォルフィが言った。
「ただし、留学をするものは、課題をこなさなければならない」
課題?
「今のデュエマに足りないものと、これからのデュエマに必要なもの。
それを自分で考えて一着の服に仕立てて、一族の前で発表しなきゃいけないんだ」
それって、かなり大変そうだな。
「そうやってデュエマは新しいものの見かたや考えかたを、ブランドの中に取り入れてきたんだ」
ちなみに、発表された作品の中で最も優れたものには、「青狼賞」と呼ばれる賞が贈られ、デュエマで実際に服づくりを行っている職人たちに服を作ってもらえるという特典がついている。
しかもその服は正式にデュエマの商品として、デュエマの服を取り扱う店や百貨店の担当者に、営業部門のセールスマンが売り込んでくれるとのことだった。
「……それにしても、言葉がわからないのがもったいないなあ」
あたりを見まわしながら、ハルミは嘆いた。
店の看板やメニューの文字。売店に置かれた新聞や雑誌。
人々の会話や流れてくる歌の歌詞。
何もかもがチンプンカンプンなハルミに、
「これを使えば、ある程度は解はずだ」
と、タブレット型のパソコンのようなものをウォルフィが渡してくれた。
「こ、これは……」
タブレットのカメラを通して画面に映し出された町の風景。
そこに映った店の看板の文字が、日本語に変換されていることにハルミは気がついた。
「舐瓜亭」という看板がかかったカフェや、「蟷螂軒」という名前の甘味どころ。
「無花果屋」という名前の酒屋さんや、「剃刀と薔薇という看板のかかった美容室。
骨牌堂は古本屋さん、蝙蝠座は映画館の名前だ。
人々の話す言葉も日本語に変換されて、ちょうど映画の字幕のように画面の下にあらわれる。
「お、おもしろい!」
タブレットをのぞき込んだハルミは、声をあげてテーブルから立ちあがった。
「ちょっと、このあたりを見に行ってもいい?」
好奇心を押さえられなくなったハルミはタブレットを片手に、ウォルフィと一緒に町の散策をはじめた。




