今日のそれぞれの予定
「はあ、まあ大事には至らなかったって事で、もう良いな。マニ、これからは気をつけるように!」
「はいにゃの! もうやらにゃいの!」
ため息を吐いてから手を離して、もう一度マニを力一杯抱きしめた俺がしっかりと顔を見てそう言い聞かせると、マニは大きく喉を鳴らしてから胸を張ってそう答えた。一応、俺の体の弱さは、今回の一件で身をもって理解してくれたみたいだ。
「まあ、毎朝のアレは、従魔達との楽しいスキンシップの一つではあるんだけど、力加減は俺が死なない程度の程々で頼むよ」
苦笑いしてそう呟くと、横で聞いていたハスフェル達が揃って吹き出している。
うう、完全に他人事だと思って面白がっているな。
「ちなみに、お前らはこういう事態になった事って無いのか? その、従魔達のうっかりで怪我をしたとかさ」
何だかちょっと悔しくて、立ち上がりながらそう尋ねる。
オンハルトの爺さんは、部屋にいる時に一緒にいるのはスライム達だけだけど、ハスフェルとギイはジャガーや鳥達、それからイグアナコンビもいるもんな。
「俺のスピカは良い子だから、そんな事は一度も無いな。引っ掻き傷すらないぞ」
「俺のベガだって、そうだな。俺に引っ掻き傷の一つもつけた事は無いぞ」
「他の子達だって、甘えてくっついてくる事はあるが、蹴られた事なんて一度も無いぞ」
「そうだな。俺も無いな」
「ええ、俺だけかよ。ちょっと悔しい」
まあ、ある意味予想通りの答えが返ってきて、何だか悔しくてちょっと口を尖らせる。
「そもそも、朝、あれだけ起こされても起きないお前が悪いと思うぞ」
「そうだな。あれはお前が悪い」
それどころか、腕組みした二人に真顔でそう言われてしまい何も言い返せなくなる。
「あはは、もうそれは仕方がないんだって。俺は朝は弱いんです!」
「あれは弱いとか、そういう問題ではないと思うぞ」
「そうだな。確かにその程度の話ではないな」
開き直ってそう言い返したが、またしてもうんうんと頷きながらそう言われてしまい呆気なく撃沈した俺だったよ。
ううん、この世界にも以前使っていたような大音量の目覚まし時計が欲しい。フクシアさんに頼めば作ってもらえないかな……。
あ、それは絶対駄目だ。俺より遥かに耳の良い従魔達の側であんな大きな音を鳴らしたら、間違いなく鳴った瞬間に全員すっ飛んで逃げていくぞ。当然、一緒に寝ていた俺は、放置されるどころか下手すれば逃げる際に思いっきり蹴っ飛ばされて……うん、駄目だ。
何とか俺が起きる努力をすれば良いんだ。よし、頑張ろう。
「はあ、とりあえず俺はお粥がいいんだけど、お前らは……うん、全員お粥でいいんだな」
朝食にはかなり遅く、とはいえ昼にはちょっと早い中途半端な時間になったけど、とりあえず何か食おう。腹が減ったよ。
って事で、鎧海老の脚の身入りお粥の入った寸胴鍋を取り出した俺は、揃って苦笑いしつつ手を挙げる三人を見て小さく吹き出し、たまご粥と野菜入り雑炊、それから濃厚鶏ガラと豚骨スープのつみれ入り雑炊も出しておいた。俺は駄目だけど、あいつらなら二日酔いの朝でもこれくらいは平気で食えるからな。
「おはようございます。ちょっと朝から大騒動だったみたいですが、ベリーのおかげで何とかなりました。引き続きお守りください。昨夜はちょっと飲みすぎたので、今朝は二日酔いメニューです」
いつものようにスライム達が準備してくれた簡易祭壇にお粥や雑炊の入ったお椀を並べて、水分補給用の冷えた麦茶も並べた俺は、小さくそう呟いてからそっと手を合わせた。
いつもの収めの手が、俺の頭を何度も何度も撫でてからお椀や麦茶を撫で回してから持ち上げる振りをして、最後に俺のお腹の辺りをこれまた何度も撫でてから手を振って消えていった。
「あはは、ちょっと心配かけちゃったみたいだな。ありがとうな」
消えていく収めの手を見送りながら小さくそう呟き、シャムエル様と顔を見合わせて吹き出した俺だったよ。
そのままお椀を自分の席へ戻し、待っていてくれた三人にお礼を言ってから改めて手を合わせていただきますを言う。
それから、シャムエル様と半分こしてお粥を食べたのだった。
「じゃあ、ちょっと遅くなったけど、一休みしたら、まず俺は商人ギルドに声かけだな。まあ、あとは向こうの都合次第だろうから、どうなるかは行ってみないと分からないけどさ」
食後に温かい緑茶を淹れてそれをゆっくりと楽しみながら、そう呟いて窓の外を見る。
今日も良い天気のようで、青い空が広がっている。
「良いお天気のようだけど、今日はお前らは休憩かな?」
しばらくゆっくりすると言っていたから、まあ二日酔いみたいだし今日は休憩だと思ってそう言うと、背後から外を見たハスフェルとギイが、顔を見合わせてから部屋の隅でもふ塊になっている従魔達を見た。
「どうするかな。今日と明日は良い天気のようだが、そのあとはちょっとしばらく天気が悪い日が続きそうだ。どうする、今のうちにもう少し狩りに行っておくか? 何なら俺達は今日はテントで休憩するから、その間に交代で狩りに行ってくれればいいからな」
彼らの天気予報の的中率が100%なのは従魔達も知っているので、そう言われて嬉々としてそれぞれ起き上がり、あっという間にもふ塊が崩壊する。
「じゃあ、俺の従魔達も一緒に連れて行ってくれるか。何なら今夜はどこかで野営してくれてもいいぞ。あ、それなら弁当とか作り置きを多めに一通り渡しておくよ」
「おう、よろしく頼む」
目を輝かせたハスフェルの言葉に笑って頷き、手持ちの弁当や作り置きをそれぞれの希望も聞きつつガッツリと渡しておいた。まあ、あれだけあれば多少の事があってもしばらくは大丈夫だろう。
って事で嬉々として出掛けた彼らと従魔達を見送り一息ついた俺は、まずは商業ギルドへ向かう為に外へ出て、ムービングログを取り出して飛び乗ったのだった。
「では商業ギルド目指して出発進行〜〜!」
「そこは危ないから、こっちにいてください」
操作盤の上に現れたシャムエル様を、苦笑いしながらそう言ってそっと捕まえて右肩に乗せてやってから、俺はゆっくりとムービングログを進ませたのだった。
さて、商業ギルド主催の料理講習会は、いつから始まるんだろうね?
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




