目覚めの一幕
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん……起きてるって……」
いつもの従魔達総出のモーニングコールに起こされて、薄目を開けた俺はひどい頭痛と喉の渇きにうめき声をあげるも、妙な違和感を覚えてなんとか目を開けた。
「もうすぐお昼だよ! いい加減に起きなさいってば! 私はお腹が空きました!」
「ええ、もうそんな時間なんだ。うん、起きるから蹴らないでくれって」
側にいたシャムエル様にゲシゲシと腕を蹴られ、驚きつつそう言うと腕をついてなんとか起き上がった。
「ご主人起きた〜〜〜!」
その時、俺が起きたのを見たマニが嬉々としてベッドにダイブしてきて見事に俺のお腹の上に着地する。
マニは魔獣のリンクスだから、体重は小さくなったジェムモンスターの従魔達の比ではない。
「げふう!」
予想外の腹への強烈な一撃に悶絶した俺は、そのまま意識を吹っ飛ばしたのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
「ご主人、目を覚まして!」
「お願いだから死なないで!」
「ご主人、目を開けてください!」
「ご〜しゅ〜じ〜ん〜〜起きて〜〜〜!」
「いや〜〜ご主人目を開けて〜〜〜!」
左右両方の頬をペチペチと叩かれ、泣きそうな従魔達の声に目を覚ました俺は、小さくうめき声を上げて目を開いた。
「「「「「ご主人生きてた〜〜〜〜!」」」」」
従魔達全員の声が重なり部屋に響き渡る。
「おいおい、大丈夫か?」
そして、心配そうに上から覗き込んでくるハスフェルとギイとオンハルトの爺さん。
「ええと……これってどういう状況?」
まだひどく痛む頭を押さえつつ、手をついてスライムベッドから起き上がる。
いつもなら軽く動いてそのままスライムベッドから降ろしてくれるんだけど、何故か今は起き上がる時に背中を押して助けてくれただけでベッドから降ろしてくれない。
「痛っ」
その時、ズキリと腹が痛んで思わず腹を押さえる。
「ああ、まだ痛みが残っていましたか。ちょっと失礼しますね」
笑ったベリーが駆け寄ってきて、俺の腹に手を当ててくれる。ほんのりと温かくなった後に、スッと痛みが引いていった。
「おお、痛いのが無くなった。ありがとうな、ベリー。ついでに、この酷い頭痛も癒してくれると嬉しいんだけどなあ」
まだガンガンしている頭を押さえつつそう言うと、にっこり笑ったベリーがゆっくりと首を振った。
「ケンのお願いなら叶えて差し上げたいのは山々ですが、申し訳ありませんがそれは実行するのが不可能なお願いですね。通常の頭痛ならすぐに原因を含めて完璧に癒して差し上げられますが、その頭痛の原因は二日酔いですからねえ。残念な事に、二日酔いは怪我や病気では無いので癒しの術は効かないんですよ」
すっごく申し訳なさそうにベリーがそう言い、俺の頭に手をかざす。
術の行使を表すほんのりとした温かさが俺の頭を包むが、確かに残念ながらベリーが言った通りで痛みは全く引かなかった。
「よく分かりました。無茶言って申し訳ありません。ええと……サクラ、美味しい水をもらえるかな」
「はあい、これだね。どうぞ」
足元のスライムベッドからにゅるんと触手が伸びてきて、蓋を開けたいつもの水筒が差し出される。
二日酔いにはこれが効くからね。
「ありがとうな」
受け取ってそのまま一息に半分ほどを飲んでから、ため息を一つ吐いて残りをゆっくりと飲み干す。
「ああ、ちょっと頭痛が治ったな。それでこれってどういう状況なんだ?」
落ち着いたところで、改めてそう言いながら部屋を見回す。
ギルドの宿泊所の俺の部屋には、ハスフェルとギイとオンハルトの爺さんの三人、それから全員の従魔達が勢揃いして俺を取り囲んでいる。
ちなみに側で泣いていたのは、ニニとマニ、それからティグとヤミーとセーブルだ。
「ご主人、ごめんなさいなの。マニが悪かったの」
何故かしょんぼりしたマニが進み出て、そう言いながらまだスライムベッドに座ったままの俺の腹に鼻先をそっと突っ込んでくる。
「ええと……」
ハスフェル達はさっきとは違って、三人揃って笑いを堪えた顔で俺を見ているだけで何も言わない。
「ああ! そういう事か!」
唐突に今朝、マニに何をされたか思い出した俺は、笑ってそう言いながらマニを両手で抱きしめてから両頬を手で引っ張ってやる。
「俺の腹を蹴っ飛ばして、さらに飛び込んできて踏みつけた挙句に俺を気絶させた奴は誰だ〜〜?」
「だからごめんなさいにゃの」
全く無抵抗で頬を引っ張られながら、大きく喉を鳴らしたマニがそう言ってもう一度謝る。
「実は二度目のお腹への飛び込みで、ちょっとケンのお腹の中が大変な事になってしまいまして、急ぎ癒しの術を使って回復させたんです。とにかく傷んだ臓器の回復が最優先だったので、痛みの回復をすっかり忘れていました。申し訳ありません」
ベリーに申し訳なさそうに謝られて、驚きすぎて咄嗟に言葉が出てこない。
普段冷静なベリーが痛みのケアを忘れるくらいの緊急事態だったって事は、それってもう内臓破裂とか、腹の中で大出血とか、どう考えてもそのレベルだよね?
「……マジ?」
「はい、マジです」
大真面目な顔でそう答えられて、顔を上げた俺はハスフェルと顔を見合わしてから揃って吹き出した。
「よくもやったな〜〜〜!」
「だからごめんなさいなの。もうやりません」
全くの無抵抗なマニの頬をもう一回力一杯引っ張って揉んでやってから、俺は両手を広げて力一杯マニを抱きしめてやったのだった。
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




