相変わらずな朝の光景
「本当にありがとうございました。それじゃあ、おやすみなさい」
「はい、お疲れ様でした」
満面の笑みのザックさんの言葉に俺も笑顔でそう応え、お互いを見てもう一度笑い合った。
結局、ホーンラビットにしがみついたまま寝落ちした三人のお嬢さん達は、そのままマーサさんとザックさんに付き添われて家へ戻っていった。
帰る際に、お嬢さんをそれぞれの背中に乗せたホーンラビット達が、揃ってこっちを見てちょっとドヤ顔になっていたのに気づいた俺は、もう笑いそうになるのを必死で堪えていたのだった。
うん、新しいご主人様にしっかり可愛がってもらうんだぞ。
きっと、これからは賑やかで楽しさがいっぱいの毎日になるだろうからな。
それにこれから先の彼女達の長い人生の中で、もしも辛い事や悲しい事があったとしても、その時にはきっと側にいるあの子達の一途な愛情と献身が、挫けそうになる彼女達の心を支えてくれるだろう。
無条件に自分を愛してくれる存在は、もうそれだけで大きな心の支えになるからね。
俺が子供の頃に家にいた、元警察犬のマックスを不意に思い出してしまい、ちょっと泣きそうになった俺だったよ。
「はあ、お疲れ様。それじゃあ明日は、俺は商人ギルドに連絡を取って料理講習会の段取りをするよ。お前らはどうする?」
なんとなくいつもの癖で俺の部屋に集まるハスフェル達。
「そうだな。まあ、このところ色々と忙しかった事だし、しばらくゆっくりさせてもらおうか」
「まあ俺達は、ケンと違ってここでは特にする事も無いわけだしな」
「確かにそうだな。では、美味いものでも食ってしばらくのんびりさせてもらうとするか。それで時々従魔達を連れて狩りに行ってやればいいな」
笑ったハスフェルとギイの言葉に、何故か酒瓶を取り出したオンハルトの爺さんも笑顔でそう言って頷いている。
結局、そのまま流れるように俺の部屋で酒盛りが始まってしまい、そのまま遅くまで揃って飲んだくれてしまったのだった。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「ううん、起きてるって……」
翌朝、いつもの従魔達総出のモーニングコールに叩き起こされた俺は、ひどい頭痛と喉の渇きにうめき声をあげて頭を抱えた。しかも全く目が開かない。
これは間違いなく二日酔いだな。まあ、途中から俺はオンハルトの爺さんが出してくれた吟醸酒をガバガバ飲んでいたから、そりゃあ二日酔いにもなるって。
霞む頭の中で他人事みたいにそう考えたところで、俺の意識はぷっつりと途切れたのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、だから、起きてるって……」
開かない目を擦りつつ、なんとかそれだけを言っておく。
「相変わらずだねえ。駄目な大人の見本みたいになってるよ」
「まあ、かなり飲んでいましたからねえ。一緒にいただいた私は、全然残っていませんけど」
耳元で聞こえる面白がっているようなシャムエル様とベリーの会話に、まあ確かに二日酔いで起きられないなんて、これは駄目な大人の典型かも……と、ちょっと内心で反省した俺だったよ。
「それじゃあ、遠慮なく起こしてあげてちょうだい!」
「は〜〜〜〜い!」
そして、何故かシャムエル様の号令一下、元気に返事をする猫族軍団の面々。
ちょっと待て! どうしてお前ら全員揃って巨大化しているんだよ!
起きろ俺の体! 緊急事態だぞ! 肉がもげるぞ〜〜!
冷や汗ダラダラかきながらそう思っていると、なんとかうめき声と共に寝返りを打つ事が出来た。
腕の中にいた今朝の抱き枕役のマニが、そのまま一緒にくっついてきて、俺にのしかかって止まる。
「じゃあ起こすわよ!」
「おお〜〜〜〜〜!」
張り切ったティグの掛け声と同時に、一瞬だけもふもふに包まれる俺。
あれ? と思って薄めを開けた瞬間、目の前いっぱいにティグの大きな顔が見えて小さなうめき声を上げる。
ザリザリザリ!
ザリザリザリ!
ジョリジョリジョリ!
ジョリジョリジョリ!
ゾリゾリゾリ!
ザリザリザリ!
ボカッ!
ベロ〜〜〜〜〜〜〜ン!
「うぎゃ〜〜〜〜〜げふぅ!」
相変わらずの強烈な最終モーニングコールに、情けない悲鳴を上げる俺。
そして、それと同時に俺の腹を思いっきり蹴ってすっ飛んで逃げていくマニ。
いつも思うけど、これって絶対にわざとだよな?
予想以上の痛みに悶絶しつつ転がった俺は、そのままマックスのお腹に突っ込んで止まった。
よしよし、今朝は転がり落ちずに済んだぞ。
いつもの激しい朝の色々を思い出しつつそう考え、ここでなんとか腕をついて起き上がる。
あ、でもまだ世界が回ってるよ……。
「おはよう。やっと起きたね」
呆れたようなシャムエル様の声が聞こえたが、やっぱりほとんど開かない俺の瞼。
「うん、おはよう……」
なんとか返事をしたものの、そのまま俺はマックスの腹に顔から突っ込んでいった。
「ううん、これまた、良き、毛並みですなあ……」
背中側の毛と比べて意外に柔らかいマックスの腹毛に埋もれたまま、俺は二日酔いを引き連れて気持ち良く三度寝の海へ落っこちていったのだった。ぼちゃん。
うん、確かにこれは、駄目な大人の典型だね……。
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




