お疲れ様とこの後の予定
「それでは、皆様方の益々のご活躍をお祈りしております」
「本日は、ありがとうございました!」
年配の神官様と一緒に若い神官様達が持ってきていた道具一式を持って笑顔で下り、それを見送った俺達は、揃って安堵のため息を吐いてから拍手喝采になったのだった。
「いやあ、ケンさんには本当に感謝するよ」
「全くだ。こんなに早く紋章をもらえるなんてな」
自分の紋章を刻んだスライム達とホーンラビットを撫でながら、ヴォイスさんとアレクさんもこれ以上ないくらいの良い笑顔だ。
「おめでとうございます。従魔達と仲良くしてくださいね」
俺も笑顔でそう言ってから、ふと気がついてヴォイスさんを見る。
「あの、そういえば商人ギルドで、近々料理講習をして欲しいって頼まれていたんですけど、あの件ってどうなったんでしょうか?」
「ああ、それならケンさんの都合の良い時に、いつでも言ってくれればいいぞ」
こっちを振り返ったヴォイスさんの言葉に、少し考える。
「じゃあ、まずはそっちかな。ええと、それから冒険者ギルドでのテイマー講習って、人数は集まっているんですか?」
「おう、確か今朝の時点ですでに十五人申し込んでいたぞ。おそらく二十人は超えていると思うぞ」
予想以上の大人数に、ちょっと驚く俺。
「ええ、マジっすか。その人数を一度に……出来るかな?」
ちょっとその人数を一度に面倒見るのは無理な気がする。
困っていると、苦笑いしたヴォイスさんが俺の腕を叩いた。
「一応、ケンさんから教えてもらった、テイマーや魔獣使いとして絶対に知っておいてもらわなければならない事は、資料にまとめておいて、それを使って数日かけてまずは座学での講習をする予定だ。ケンさんには、その資料の監修をまずはお願いしたい。その上で、一通りの座学を修了してそれでもテイマーになりたいと希望する者を集めて、次に郊外での実習に移る予定だよ。この辺りの手順や実習を行う際の人数については、ある程度事前に決めておくべきだと思っている。考えているのは、今回の俺達がやったように5、6人程度でまずはスライムをテイムする。それ以外の従魔を希望する場合は、講習ではホーンラビットやバルーンラット程度のジェムモンスターでテイムを行ってもらう。それ以上の強い従魔を希望する者は、もうテイムのやり方は分かっている訳だし、ここからは自己責任って事にすべきだと思うんだが、どうだろうか?」
成る程。基本となる資料を作っておけば、確実に伝えたい事はまとめておけるだろう。それに実際にテイムを行う実習なら、確かにスライムやホーンラビット程度の従魔までにしておいて、それ以上を希望する場合には自己責任で、ってのは、まあ全てにおいて自己責任が基本な冒険者としては当然なのだろう。
「良いと思いますね。ただ、テイムの上限については絶対に気をつけてもらいたいところなので、そこはしっかりと教えておいてください。過度なテイムは、冗談抜きで命にかかわりますので」
「もちろんだよ。過度なテイムの危険性については、しっかり時間を取って教えるつもりだ。もちろん、それ以外もしっかりと教えるからご心配なく」
「じゃあ、何かあればいつでも相談に乗りますので、遠慮なく言ってください。それじゃあ俺は、この後は商人ギルドで料理講習会かな」
お寿司や刺身などはぜひとも定番料理になって欲しいので、ここは張り切ってなんでも教えるよ。
「おう、是非ともよろしく頼むよ。あの寿司は本当に美味かったからなあ……」
涎を垂らしそうなうっとり顔でそう言われて、もう笑いが止まらない俺だったよ。
「ねえ、今夜からベリーちゃんとブブルちゃんと一緒に寝てもいい?」
「私も私も! コーンちゃんとチェリーちゃんと一緒に寝る〜〜!」
「私もチーズちゃんとレモンちゃんと一緒に寝る!」
「「「良いでしょう?」」」
その時、聞こえてきた可愛らしい声に俺達は揃って振り返った。
見ればホーンラビットとスライムを抱きしめたお嬢さん達が、揃って満面の笑みでそう言ってマーサさんとザックさんを見上げている。
「ま、まあ良いんじゃないか?」
「そうね。でも、この小ささだと寝ていて押し潰したりしないかしら?」
顔を見合わせたザックさんとマーサさんが、苦笑いしながらそう言ってホーンラビット達を見ている。
今のホーンラビット達は、小型犬サイズなのでかなり小さめだ。
「ああ、大丈夫ですよ。さっきも言いましたが従魔は体の大きさを任意で変えられますから。ほらお前達、大きくなって見せてあげてくれよ」
困っているマーサさんを見た俺が笑ってそう言ってやると、ちょっとドヤ顔になったホーンラビット達がするりとお嬢さん達の腕をすり抜けて床に降り立ち、一瞬で大型犬サイズになった。
それを見て、歓声を上げてそれぞれのホーンラビットに飛びつくお嬢さん達。
「何これ! ふわふわ!」
「きゃあ〜〜気持ち良い!」
「ふかふかだ〜〜!」
歓声を上げてホーンラビットの背中に抱きついた三人は、そのまま揃って深呼吸をしたっきり急に静かになった。
「おい、どうした? 大丈夫か?」
急に静かになったお嬢さん達を見て、慌てたザックさんがそう言って近くにいたリリアちゃんを覗き込む。
「スースースー」
それはそれは気持ちよさそうな寝息が聞こえてザックさんとマーサさんが揃って吹き出し、遅れて俺も吹き出す。
しかも、リリアちゃんだけでなく、双子のディアナちゃんとエリマーちゃんも気持ちよさそうに揃って熟睡している。
分かるよ。あのもふもふに埋もれて目を閉じたら、そりゃあ吸い込まれるって。
「じゃあ、あの子達を落ちないように支えてあげてくれるか」
お嬢さん達の頭の上に乗っかっているスライム達にそう言って、巨大化したホーンラビット達を見てから俺はもふ塊を振り返った。
「それでホーンラビット達には、例の揺らさない走り方って……」
「もちろん教えてあるよ〜〜!」
「大丈夫で〜〜す!」
俺の質問に、皆まで言わせずラパンとコニーが揃ってそう答えてドヤ顔になる。
「じゃあ大丈夫だな。ええと、従魔達が寝ているお嬢さん達を運んでくれますので、どうぞそのままお帰りください」
笑った俺の説明にザックさんが吹き出し、マーサさんはもふもふに埋もれて熟睡しているお嬢さん達を見てからジト目でザックさんを振り返った。
「あなた。どうして今日私の分もホーンラビットをテイムしてくれなかったの? 私も、もふもふなホーンラビットと寝たかったわ」
「す、すまん……」
思いっきり残念そうな口調でそう言われて慌てて謝るザックさんを見て、もう俺達は笑いを堪えるのに必死になっていたのだった。
うん、明日のザックさんの予定は決まったみたいだね。
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




