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第35話 孤児院⑥



第4位。素粒子支配(クォークアウト)のアルフレッド=ローランは、自分の周りの光景を見渡す。周りにはあちら此方にクレーターができ、崩壊している建物もちらほら。その衝撃的な光景を目にすれば、誰しもが死人の1人や2人は予想するだろう。しかし、実際は死人どころか怪我人もゼロ。これはアルフレッドが人的被害を抑えたことにも理由はあるが、ジークフリートもまたロイ以外に手を出すつもりはなく、周りの被害を計算しながら戦闘を行っていた。


「逃がした…か。」


ロイへの攻撃を防ぐ隙を付き、ジークフリートは時空間属性魔法で転移。そのまま感知可能な範囲から離脱され見失った。それは仕方ないとしても、流石にこれは…


「放置はいけねえよな…」


砂状にまで細かくなった石造りの建物を視界の端に捉え、溜め息を付く。能力を使えば物質である以上、直せないものは存在しないが砂レベルにまで細かく粉砕された物質の修復作業は手間。


「よし!ちょっくら最後に気合い入れて、ひと仕事終えますか。」


時間にすれば数分。原子や分子の無数とも言える数を全て掌握することで、この短時間の間にスラム街を完全修復した。各建物は新築同然に直され、この日スラム街では神の奇跡が舞い降りたと囁かれた。




◇◇◇◇◇




神力草の採取。3人で協力して探し回ったことで、日が暮れる前に神力草の発見に成功。そのお陰で今日中の内にアイギスにまで帰還できた。ここまでは何の問題も無かったが、街道を歩いていると妙に周りが騒がしい。特にスラム街に近付くに連れ周囲の人たちの騒がしさが増し、大勢の人が野次馬のようにスラム街に集まっていた。


「何かあったのか?」


「ついさっき謎の大爆発が起こって、スラム街が崩壊したと思ったら一瞬の内に直ってたんだよ!」


野次馬の1人に何が理由でこれ程の人集りが発生したのか聞いてみたが…スラム街が崩壊?

スラム街を見渡してみてもそんな様子はない。それどころか、この前来たときより全体的に綺麗になってる。全く意味不明。他の野次馬にも聞いてみるが口を揃えて同じことばかり。


「どうせ孤児院に行くのだし、そこで聞けば何が起きたのか判明するだろ?」


「それもそうだな。じゃあ、さっさと孤児院に行くか。」


ヴァルニアの促しにより、さっそく孤児院に神力草を届けに行くと共に原因を聞きに行った。




孤児院の中に入り、大広間に手前まで来た所で最近聞いたことのある声が耳に届く。


「ここはまるで天界。俺は今日、天に召されるのかもしれない。」


誰の声か疑問に思いつつ扉を開くと、そこにいたのは昨日門番に取り抑えられていた男。男も俺たちのことを覚えていたらしく、此方に歩み寄る。


「おお!兄弟奇遇だな。それにしてもここで会うとは、中々のやり手と伺える。」


「…」


「うん?どうした。天使たちを視界に入れて感極まってしまったか?その気持ち分からんでもないぞ。俺も先程、天に召されそうになったからな。だがな、紳士としての矜持だけは忘れるなよ!」


急に話し掛けて来たと思うと、よく理解出来ない理論を展開し始め語り出す白髪の男。対応に困っているとロイが苦笑いしつつ、助け船を出してくれた。


「アルフレッドさん、フェルトさんが困っていますよ。」


「そうか?そういえば自己紹介がまだだったな。俺はアルフレッド=ローラン。人によっては俺を素粒子支配と呼ぶ奴もいるな。しかーし、呼び方など些細なこと。真に俺が伝えたいことは…俺が天使たちを愛してやまない漢の中の漢であり、紳士ということだ!!」


アルフレッドは再び謎理論を展開し長々と話し出す。


「なるほど…お前は犯罪者予備軍と。よく理解出来た。取り敢えず行ってみたい刑務所とかあるか?」


「いやー手厳しい。相変わらずだな兄弟。」


「相変わらず?また可笑しなことを言う。俺とあんたは出会ったばかりだろう?」


そうでもないぞと何か遠いものを見る目で言うアルフレッド。


「昔に幾度なく会ってはいるけど、忘れっぽい兄弟のことだ。すっかり忘れちまったんだろ。」


「悪いな。昔のことはよく覚えていない…というよりは思い出せないに近いのか。取り敢えずあんたのことは記憶してない。」


「まぁ覚えていないのなら仕方がない。もう少し天使たちと戯れたいところだが、俺にも用事があるからな。そろそろ行かせて貰うとするか。」


最後にアルフレッドは孤児たちを名残惜しそうに見ながら出ていった。このあとソフィアさんに神力草を粉末状にした薬を与え、ロイから受けた依頼を達成。ソフィアさんは薬を飲んだことで病状が安定し、かなり顔色が良くなった。恐らく数日間ほど休めば完全回復する思われる。


「ロイ、それじゃ明日から2日に1回のペースで訓練を始めるから準備しておけよ。」


「はい!手加減抜きにビシバシ鍛えていってください。」


「いいのか、始める前からそんなこと言って。でもお前がそれでいいのなら大丈夫か。なら地獄の訓練を楽しみにしておけよ。」


「えぇ、どれ程の訓練か期待して待ってます。そしてそれを耐えきって皆を養い、守れるぐらい強くなってみせる。フェルトさんこそ訓練中にへばらないで下さいよ。」


ロイの成長を楽しみにしつつ、短いようで長い1日が幕を閉じた。



十年後ロイは…ロイ=ウォーカーは世界序列一桁(シングルナンバー)として世界に名を轟かせることになる。この時のフェルトには、小さな少年がそこまで成長することを想像すら出来なかった。




◇◇◇◇◇




蒼天を穿つは二天の龍。片翼は何者にも染まらない純白の翼を持つ始まりにして創造の神…ファフニール。もう片翼は全てを呑み込むが如く漆黒の翼を持つ終わりにして終末の神…バハムート。


この二天龍は魔大陸の最深部にある龍谷と呼ばれるところに暮らしていた。終末にして終焉の神龍バハムートは話す。


「前回の崩壊以降眠りに着いていたが、等々目覚めたか。」


「そう(おっしゃ)らないで下さい。あの人は非常にお優しい方なんですから。」


「それは理解しているが、前回の崩壊は余りに被害が大きすぎた。あれでは本末転倒。折角築き上げてきたものを壊しては意味がない。」


崩壊…それは人類史上最悪の災害。この世界には元々大陸が10個存在していたが、現在では9つになっている。


何故か?


原因は1つの災害よって引き起こされた。それが崩壊。大陸が砕け散るほどの地震が起き、その日大陸にいた生命は魔物も含め全てが死に絶えた。


「全てはあの力が強大過ぎるが故。」


「時間、因果、概念、それらありとあらゆるものをねじ曲げ造り出す力。その名は…」



神の願い(グランドオーダー)―――――





これにて第2章の本編は終了です。

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