外伝 第1話 邂逅
更新が遅れてしまいました。申し訳ないです。
今回は外伝ということで、基本はロイ視点からのお話になります。
孤児拉致事件が起きてから3年。あれから孤児が拐われるようなことは無くなり事件は幕を閉じた。今までに連れ去られた子供たちがどんな状況なのかは不明だが、僕がそれを気にしても仕方がない。知った所でどうこうすることも出来ないし…
この3年、僕は以前と比べ一線を画す程の力を身につけたと感じている。とはいえ元がもと。その時と比べ強くなっただけの話で、超人的とはかけ離れている。そんな僕でも今はDランク冒険者。一人前と評されるレベル。しかし、僕はこれで満足していない。折角、冒険者稼業をするなら行けるところまで行ってみたい。そのように思っている。
そして溢れんばかりの想いが届いたのかいざ知らず、先日冒険者ギルドから『昇格試験がありますので準備してください』と報告を受けた。正直、この言葉を耳にした際はガッツポーズをするくらいに喜んだ。
Dランク冒険者に昇格してから早二年。今日という日まで一切昇格試験を行う機会はなかった。そして本日、待ちに待った昇格試験がようやく始まる。
「今から昇格試験をやって貰うが、今回参加した受験者は計10名。少々数が多いため、二手のグループに別れて試験を行う。尚、グループのメンバーは此方で決めさせてもらった。それでは順に名前を呼んでいく。呼ばれた者はAグループ、呼ばれなかった者はBグループとする。まず1人目は…」
試験官が名前を呼んでいき、最後に僕の名が呼ばれた。呼ばれたということはAグループ。しかし、どちらのグループに選ばれたとしても試験内容に大した変化はないだろうし、グループ分けに関しては問題ない。問題があるとすればパーティーメンバーだったが…心配要らなさそうだ。
他のメンバーの名はレオン、アレク、ティーゼ、アリスの4名。軽く話をしたところ、この方たちは同じ冒険者パーティーを組んでいて、互いに付き合いが長いらしい。そんな訳だから連携方面は大丈夫だと思われる。寧ろ、初めてパーティーを組む僕の方が心配になってきたな。
パーティーメンバーの話し合いが終わると、試験官が再び試験について話し出す。
「今回やる試験内容はオーガの討伐だ。知っていると思うが、オーガは凶暴で残忍な性格であり、人肉を好んで食す。そして大きな頭にふくらんだ腹、強靭な肉体をもつ。そのオーガの主な生息地は南にある森林地帯。そこでオーガが増加し始めたとの報告を受けた為、被害が発生する前に試験と併用して駆除をすることになった。オーガの討伐数は3体以上。それ以下だと試験は不合格になるから覚えておくように。以上で説明を終了とする。」
試験内容の説明が終わり、グループごとに別れてアイギスの街から南にある森林地帯へと移動を開始した。
森林地帯に到着してから幾何か時間が経過し、現在オーガとの戦闘中。本日2体目の戦闘となるがパーティーメンバーの連携練度が高く、今のところは何の苦戦もなくここまで来た。
「アレク、ロイ、次の攻撃は俺が抑える。その隙に仕留めてくれ!」
「了解!」
「判りました!」
リーダーであるレオンが次々と戦闘の指示を全員に下していく。その短い間にオーガは目の前に距離を縮めてきており、間合いに捉えられていた。
「ティーゼ、アリス、補助を頼む!」
「任せておきなさい!」
「はい!」
後衛に控えているティーゼとアリスは主に補助魔法を使用しての援護。しかし、その援護も非常に的確で高い連携力が見てとれる。
補助魔法で強化されたレオンがオーガの大剣から繰り出される一撃を真っ正面から受け、盾と剣がぶつかり合う金属音が周りに響き渡る。
「今だ!やれぇぇっ!!」
「ウォォォッ!」
レオンが作り出した一瞬の隙を突き、オーガのアキレス腱を短剣で切断。これにより巨体であるオーガは地面に膝を付け、急所の頭部が間合いの範囲に入る。
次の瞬間――――
控えていたアレクが首目掛けて一閃。剣で首を斬り飛ばす。首を斬り飛ばされたオーガは言葉にもならない呻き声を上げ、動かなくなった。
証明部位の解体終わらせ、オーガ討伐最後となる3体目の探索。周囲を警戒しつつも残り1体と余裕が出てきたことで、雑談を始める。
「昇格試験の依頼だから緊張したけど、案外簡単だね。」
「そうね。森林地帯に入ってからオーガとしか遭遇してないし…」
「でも何か変じゃないですか?」
「そうかしら。楽が出来る分には私は嬉しいけど。」
「お前ら気を緩めるなよ。いつ危険な状態に陥るか分かったもんではないからな。」
気の緩み始めたパーティーメンバーを注意するレオン。
(パーティー…今までソロで頑張り続けて来たから、そろそろ組んでもいい頃合いかな…ん?何だこの臭い?)
鼻をつくような鉄の匂い…というよりは血生臭い匂いに近いのか。風に流れて微かに匂いが漂ってくる。
「この辺り、血の匂いが漂ってませんか?」
「ロイ何を言って………確かに微かではあるが血の匂いがするな…」
「ウッ、ほんとね。鼻につく匂いだわ。」
レオンたちも気付いたようで、若干顔を歪ませる。
「他の冒険者によるものかもしれないが、情報収集のためにも一度確認をした方がいい。匂いが漂ってくる風向きを頼りに行ってみるぞ。」
一向はレオンの指示に頷き、風向きと逆の方向へ進んだ。
進行先には恐らく森林地帯だった場所に複数の魔物の死骸が転がっていた。辺りの木は全て切り刻まれ、周囲の光景はまるで血に染まった草原。森林であった面影も残さないほどに荒れ果てている。その異様とも言える光景の中、1人の子供が倒れていた。遠くから見た感じ性別はわからないが、姿形は人のそれだ。
「うわぁ、一体ここで何があったらこんな状態になるんだろ?」
「酷い光景ね…」
「流石にここまでグロいとは思いませんでした。」
想像以上に衝撃的なことで思考が半ば停止し、各々思ったことが口から出る。しかし、それよりも…
「あそこに子供が倒れているので、助けに行ってきます!」
「ロイ!不用意に近づくな!何があるか分からないんだぞ!」
今日初めてパーティーを組んだ僕に親切に忠告してくれたが、子供を放っておくことなんて出来ない。今、この時にだって死にかけているのかもしれない。
「すみませんレオンさん。でも子供を見過ごすなんて出来ないんです!」
急いで子供の所まで駆け寄る。そして脈拍は正常か。呼吸はしているのか。それらを一通り確かめてやっと落ち着くことが出来た。
(命に別状はなさそうでよかった…)
心拍は安定していて、どこにも外傷は見当たらない。何等かのショックで気を失ったと思われるが、その程度なら支障はないだろう。胸を撫で下ろしながら、目線を移動させる。移動先には顔。そこで僕は顔を見て思わず目を疑ってしまった。
駆け寄った際は救護に意識を向けていて気づかなかったが、この子は非常に容姿の整った顔をした女の子だ。髪は腰くらいまであるロングの金髪。しかし、これだけであれば目を疑うほど驚くことでもない。僕が驚いたのはこの子の耳が長かったからだ。耳が長いということはエルフ。
エルフは基本集落に集まって過ごしており、このような人の街が近い森林地帯には普通いないはず。まずそれ以前に、ここの異様にまで荒れている場所の中、1人倒れている時点で異常なのだが。
「レオンさん、この子は無事のようです。」
「それは何より。だけど先程の個人行動は余り好ましくないぞ。もし罠などがあったらどうする?」
「す、すみません…」
「まぁいい、お前の気持ちも分からないではないからな。しかし、その子をきちんとした所で休ませてあげたいな。取り敢えず早く試験を終わらせて、アイギスに戻るとしよう。」
その後は何事もなくオーガの討伐完了させ、エルフの子を背負いながらアイギスへ帰還した。
ギルド到着後、試験結果は後日発表すると連絡を受け、本日は解散となった。
(それにしても何であの場所だけ天変地異の後みたいに荒れていたんだ?まさかこの子が!?…嫌々それはないか。)
色々気になりはするが、考えたところで分からないこと。深く思考するのを止める。
(それにしても困ったなぁ。この子、どこに保護してもらおうか…)
子供の保護に適している場所。思い当たる節はある。あるのだが、その先は自宅でもある孤児院。ここならば休息も十分に取ることが可能だし、何より安心である。しかし…
(僕が家に連れ込むみたいで嫌なんだけど、仕方がない。一先ずは孤児院で、回復するまで休ませてあげよう。)




