第29話 ミスリルリザード
タウトナ鉱山地帯
目的地でもあるミスリル採取に適した鉱山。タウトナ鉱山地帯は、この国…アリティア王国でも上位に食い込むほど金属が採取が盛んに行われている場所。ここでは魔導金属ミスリルの他に鉄、銅、銀など複数の金属が発掘される。なのでそこら中掘り尽くされて、洞窟のようなものが幾つか点在している。
「鉱山地帯というのだからもっと人が居ると思ったが、ここは発掘し尽くされていて誰も作業している奴がいないな。」
「フェルトが目指していた場所と聞いたから多少は楽しみにしていたのに、何だここは?何もないじゃないか。」
「つまんなーい。」
そりぁ子供が鉱山に来ても何も楽しくないのは当たり前だよな。というか鉱山に発掘しに来て楽しむ奴なんてドワーフくらいだろう。
「それでフェルトはここで何がしたいんだ?」
「ここにはミスリルを取りに来たんだ。」
「ミスリル?あの魔導金属のやつか?」
「そうだ。このタウトナ鉱山ではミスリルリザードという表面がミスリルで覆われている魔物が居て…ほら、あそこにいるでかいトカゲみたいな魔物だ。」
丁度洞窟の入り口付近をミスリルリザードが歩いていたので指をさす。
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種族:ミスリルリザード
Lv39
HP1560/1560
MP561/561
筋力 113
耐久 214
敏捷 266
魔力 187
ランクC
耐性スキル
【物理耐性Lv2】【魔法耐性Lv7】
【全属性耐性Lv3】【状態異常耐性Lv2】
魔法スキル
【火属性魔法Lv2】
ノーマルスキル
【硬化Lv3】【金属吸収Lv2】
【ブレスLv2】
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ミスリルリザードはその名の通りミスリルで覆われている為、見た目は透き通るような赤色をした大蜥蜴だ。
「ほんとだー、大きなトカゲさんがいるー」
エレシュガルが初めて見掛ける魔物を目にして、はしゃいでいる。
「ねぇねぇ、あのトカゲさん殺っちゃっていい?」
服の袖部分を引っ張りながらエレシュガルが聞いてくる。
(殺っちゃっていい?って怖いな!実はこの2人戦闘民族なんじゃないのか?)
「あ、あぁ構わないぞ。でもその前に1つ注意することがあるんだけど…」
注意事項である『魔法が効きにくい』ということを説明する前にエレシュガルが行ってしまった。
「エレシュガルの戦闘好きな所は本当に父さんに似ているな。」
うわぁ、エレシュガルの戦闘好きは父親譲りなのか。
「ヴァルニア、お前はどうなんだ?」
「俺は性格の方が母さん似で、戦闘面の能力は父さんに近いはずだ。」
「なるほど…ならエレシュガルは性格だけでなく戦闘面でも父親に似ているのか?」
これで似ているとか言われたら、近くにスモールバハムートが2人居ることになるから、物凄く怖いんだけど。
「フッ、そんなわけないだろ?エレシュガルは母さんのような頭脳を使った戦闘をするんだ。」
なんか鼻で笑われてイラッとしたけど、それは置いておくとして、頭脳を使った戦闘?エレシュガルを普段見ている限りでは、悪いがとても頭がよさそうには見えないぞ。
「エレシュガルはそんなに頭がいいのか?」
この質問に対してヴァルニアは『こいつ何を抜かしている?』というバカにするような顔をする。
(この野郎、表情1つ1つ腹立つなぁ。)
「エレシュガルは俺なんかより余程、頭脳の面で優れている。もちろん、フェルトとは天と地の開きがあるぞ!」
ダメだ、これ以上この顔を見ていると殴りたくなってくる。エレシュガルの戦闘でも見るか。
エレシュガルの方向を向くとミスリルリザードと戦闘が行われていた。しかし、それは余りに一方的なもので、軽く蹴っただけで表面のミスリルが砕け散ってミスリルリザードが吹き飛んでいる。衝撃的な光景に思わず口が開いてしまった。
「は?エレシュガルはこんなに力が…」
「あるわけないだろ。無属性魔法を使用しているんだよ。」
俺の口から出た疑問にも近い言葉に対して、ヴァルニアは否定してきた。
(無属性魔法を使用している?今のはどう考えても蹴りだったぞ。しかも、ミスリルリザードには殆ど魔法が効かない筈じゃ)
「無属性魔法を使ってもミスリルリザードには殆ど効果はないだろ?」
「フェルトは魔法のことをよく理解していないな。」
やれやれとヴァルニアは首を左右に振る。
「そんなわけないだろ。知っているよ無属性魔法のことくらい。」
本当のところ無属性魔法のことなんて知らない。だけど、こんなバカにしてくるような顔をするヴァルニアに知らないとは正直に言える訳がない。ということで、ガイドさん久しぶりにスキル説明お願いします!
《【無属性魔法】無属性魔法とはどの属性にも属さない魔法のこと。》
えっ?これだけなの?
《これ以上説明しても理解できないと思われますので、説明を省きました。》
これ以上説明しても無駄だと。こいつも俺のこと遠回しにバカにしてるじゃないか。理解出来るから説明してくれ!
《…ではもう一度説明します。無属性魔法とはどの属性にも属さない魔法のこと。魔力による精神干渉、記憶操作や運動量、熱量、電気量、光などのベクトル変換等の、どの属性でも表すことの出来ない事象はここに入ります。そして合理的に全く説明不能な超自然の能力、いわゆる超能力と言われているものもここに含まれます。簡単に説明するとこんな感じです。》
…いやいや、全然理解できねぇよ!何だよベクトルって、初耳だ。
《ベクトルとは向きと力を持つ量のことです。平面や空間上における力や速度などは、ベクトルで表されます。》
はいはいベクトルは向きと力のこと、なるほどな…ってこれで理解できる訳ねぇだろっっっ!
「どうしたんだ?これで理解できる訳ないだろ、と言いたげな顔をして?」
やけに察しがいい。
「ヴァルニア悪い、やっぱ分からなかった。」
「まぁだろうな。人族で魔法と魔術を両方完璧に理解しているものなど1人しか居ない、と母さんが言っていたし。」
「へぇ~、そいつは凄いな。それで、エレシュガルの蹴りはどんな原理なんだ?」
ガイドさんに聞いても理解できなかったし、ヴァルニアに直接聞くしかない。
「あの蹴りはベクトル操作をすることで、力の大きさを数倍に引き上げて放ったからあれだけの威力になった。そして、何で魔法が通ったのかという疑問に対しては、ベクトル操作で力の大きさを変換したのは蹴る前で、足が当たってからは既にベクトル操作を終えていて魔法を使っていなかったからだ。」
「ん?つまりベクトル操作をすると攻撃力が上がるのか?」
「端的に捉えるとそういう見方も出来るな。」
それって最強じゃない?
「それだと無限に力を上げ放題じゃないか。」
「バカな奴ならそう思うだろ。だけど、そんな簡単にはベクトル操作は出来ないんだ。」
こ、こいつ今度は態度ではなく、言葉でバカにしてきやがった。
「ベクトル操作をするには魔力を使うし、何より膨大な情報を演算処理して算出しなければならない。そしてその演算処理の過程で、増幅させる力が大きいほど計算が複雑になり、算出することが困難になる。つまり解りやすく纏めるなら、1+1と937286+718346を同じ時間で計算しろと言うのは無理な話だろ。これが一切動かない相手ならまだしも、相手は生きていて動いている。そんな相手が命の取り合いで敵を待ってくれる筈がないと言うことだ。」
なるほど、なんとなくは理解が追い付いた気がする。
「魔法って難しいな。使うときに原理なんて考えたことないぞ。」
「魔法と言うよりは科学的に捉えると難しいな。でも、今言ったことは全て母さんの受け売りだけど。」
科学的?初めて聞いた言葉だ。
「なら無属性魔法より難しいと言われている雷属性、時空間属性、創造属性魔法の説明も出来るのか。」
「あぁ、ちゃんと勉強したからな。出来るぞ!」
そして、ここから同じ言語だと思えない属性説明が始まった。
【雷属性魔法】空気中にある窒素や酸素の素粒子などから強制的に魔力で電子を誘導させることで電気を発生させる魔法。また、電子を操ることで粒子と波形の間に止め、電子線を作り出しレーザーのような攻撃をすることも可能。それ以外にも電磁場を発生させることで、魔力制御力によっては金属を触れずに自由自在に動かすことが出来る。
【時空間属性魔法】3次元から11次元までの空間を操作する魔法。この魔法を使えば4次元空間に干渉し物質の時間を止めたり、11次元上の理論値を算出することで、位置情報を処理して目標座標への空間転移が可能となる。ただし、動いている物質の時間を止めると演算処理が追い付かずに魔法が失敗する。最悪の場合は、膨大な情報による脳内神経の負荷で廃人となる恐れがある。
【創造属性魔法】魔力を元にして素粒子を作り出し、物質を構成する魔法。物質の創造には、構成物質の原子配列を知っていなければ生成不能。魔力消費量は生成する素粒子の質量によって変わってくる。また、生成可能な素粒子はこの世に現存するもののみで、不安定なものは生成できない。
何度も同じことで呆れるかもしれないが、全然分からん。電子?電磁場?素粒子?そんなもん解るか!
「どうだ?かなり要点を纏めて説明してやったぞ。分かりやすかっただろ!」
満面の笑みでヴァルニアが説明を終えて、満足気に胸を張る。
「ヴァルニアありがとう。実に魔法原理の難しさが理解できたよ。」
取り敢えず褒めて頭を撫でておく。
「へへっ、感謝しとけよ。」
ヴァルニアを撫でているとエレシュガルが倒したミスリルリザードの尻尾を引っ張って俺のもとに戻ってきた。
「フェルト、ミスリルリザード倒したよ。すごいでしょー」
「おぉ凄いな、よくやった!」
ヴァルニアと一緒にエレシュガルも褒めまくったあと、追加で更に4体ミスリルリザードを倒してアイギスの街へ向かった。




