第25話 ポルネ村①
俺はルドロフからミスリル採取の依頼を受けて、その日の内にアイギスの街を出る準備をした。そして今日は、アイギスの街を出発してから5日間が経過し、現在魔物であるサイクロプスと戦闘中だ。
サイクロプスは一つ目の魔物で身長は3メートル程あり、パワーがあることが特徴でもある。その巨漢から繰り出される一撃は、そのどれもが必殺クラスで、まともに貰えば常人なら即死は免れないだろう。だが、アイギスに居た1ヶ月の間に成長した今の俺なら、Cランクの魔物であるサイクロプスも恐れるに足らない。それほどまでに、レベルだけでなく技術も磨いてきたからだ。そして遂に至った。
ラグナ流 第弐の型[朧]
この型を端的に説明すると、相手に幻影を見せることである。幻影を作り出す方法は間合いを詰める際、高速で歩幅を交互に変えていくことで相手の目に錯覚を起こさせ、距離感覚を狂わせる。これによって相手の目には、もう一人の俺が見えるように錯覚をしてしまうのだ。
第弐の型[朧]は、これ単体で相手にダメージを与えることは不能だが、戦闘中に攻撃と組み合わせることで、戦局を大きく傾けることが出来る。そして現在、殺り合っているサイクロプスにもこの型を使うつもりだ。
「ハアァッッ!」
歩幅を交互に変えながら、間合いまで一気に距離を詰める。サイクロプスはこれに合わせるかのように、棍棒を構え攻めの姿勢に入った。
距離は一瞬で縮まり間合いに入ったその瞬間、サイクロプスが人間を殺すのに必要以上の力を込め、幻影に向かって棍棒を振う。
「グガァァッ!」
大気を殴りつけるような爆音をたて、幻影のいた場所に棍棒が通り過ぎてった。
(一撃の威力は目を見張るものがある。しかし、当たらなきゃ意味ねぇぞ。)
更に間合いを詰め、サイクロプスの懐まで入り込む。本来槍術士がここまで距離を詰める必要性は余り無いのだが、サイクロプスを一撃で倒すには、急所の届く距離まで詰めなければならない。そして狙う急所は…
「ここだァァッ!!」
槍の矛先を前方斜め上に上げ、顎部分から後頭部の頭蓋骨にかけて貫いた。それとほぼ同時にアナウンスによって経験値獲得の報告を受ける。
【経験値を1910獲得しました】
【レベルアップしました】
死亡したことを確認して、脳天を貫いた槍を引き抜くと、潰れた血肉が飛散し回りの草原を真っ赤に染める。その光景を見ながら感慨ふける。
「Cランクの魔物相手に殆ど苦戦せずに倒せるなんて、俺もダンジョンの時に比べて成長したってことだよな。」
以前は同じCランクの死霊騎士に死ぬ一歩手前まで追い込まれたけど、今なら【魔闘気】や【魔力撃】を使わずにも勝てるかもしれない。それほど強くなれた実感はあるし、ステータス的にも1ヶ月前と比較して随分と上昇した。
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フェルト 男 年齢:15 種族:ヒューマン
職業:槍術士Lv34/50
Lv41
HP1730/1730
MP427/486
筋力 282 (+56)
耐久 88
敏捷 347 (+69)
魔力 162
パッシブスキル
【根性Lv2】【危険感知Lv3】
【気配感知Lv3】
耐性スキル
【物理耐性Lv3】【魔法耐性Lv2】
【恐怖耐性Lv2】【斬撃耐性Lv1】
魔法スキル
【水属性魔法Lv3】
ノーマルスキル
【格闘術Lv3】【剣術Lv1】【槍術Lv5】
【言語理解Lv5】【思考加速Lv5】
【身体操作Lv4】【歩法Lv4】
【限界突破Lv2】【魔闘気Lv3】
【魔力撃Lv3】
ユニークスキル
【鑑定眼Lv‐‐】【アイテムボックスLv‐‐】
称号
【選ばれし者】【ゴブリンキラー】【逆境】
【願い】
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ステータスを閲覧したあと、サイクロプスと槍をアイテムボックスに仕舞って、目的地に向かって走り始めた。
本当は長期移動のとき走ることは、体力消費が大きくなる面で余りよくない。しかし、基本持ち物は全て仕舞うことが出来る為、そのぶん体が軽くなって走るという選択肢が取れるという訳だ。
あれから3日間、就寝時と食事以外の時間は走り続けていて疲労が溜まってきていた。足にも思ってる以上に負担が掛かっているらしく、体が重く感じる。
「はぁっ、流石にそろそろ纏まった休憩を取った方がいいのかもしれんな。」
出来れば往復4ヶ月も時間を掛けたく無いから今まで走ってきたが、そうも言ってられなくなってきた。恐らくこのまま走り続ければ、その内体を痛めて余計に時間が掛かってしまうことになるだろう。
「じゃあどこで休もうかな。取り敢えずよさげな所が見つかるまで歩いてみるか。」
日が沈む始めこれからどこで数日間休憩するべきか迷っていると、遠目からうっすらとだが集落が見えた。しかし、まだハッキリとは見えていないので、もう少し近づいて確認してみる。
「この大きさ的に街と呼ぶよりは村だな。」
歩いてる途中で気づいたが、明らかにアイギスの街と比べると小さい。人口も多くて数百人程度だと思う。村の囲いは木造のもので、精々動物や弱い魔物くらいしか食い止められないような作りになっている。
「休息を取る場所はここの村にさせて貰おう。宿くらいなら一軒はあるだろ。」
そのまま歩いていき村に入ろうとした直前、囲いの入り口に立っていた青年に話し掛けられる。
「おい!そこのあんたちょっと待て。」
「俺のことか?」
「そうだ。村の中に今入ろうとしたが、その前に俺に身分証明出来るものを提示してくれ。」
人口の少なそうな村だから、見張りなんていないと思っていたが、そんなことはないらしい。街と違って魔物の駆除もしっかり出来ている訳でも無いし、人が余り来なくても見張りがいるに越したことは無いのだろう。
「身分証明はギルドカードでもいいのか?」
「へぇー、お前冒険者なのか。勿論ギルドカードでも構わないぞ。」
大丈夫との返事を貰ったので、【アイテムボックス】からギルドカードを取り出し青年に手渡す。その時、口をポカーンと開けて此方を見ていたが、すぐに元に戻り喋り始める。
「おぉっ!あんた【収納】スキルが使えるのか?すげぇな!」
「まぁな、でも大した許容量じゃないから驚く程のことでもないぞ。」
「いいやそれでも十分すげぇ。そう謙遜するな。それにあんたCランク冒険者じゃないか。俺と同じくらいの歳に見えて中々やるな。」
そう俺はアイギスの街を出発する前日に、丁度ランクが上がったのだ。新人にしては異例の昇格速度らしく、普通はCランクに上がるには早くても数ヶ月単位でかかるとのこと。
「別に凄くはない、たまたまだよ。それより村の中に入っていいか?」
「たまたま?よくわからんがポルネ村の中には入っていいぞ。特に怪しそうな所もないし、だけど問題は起こすなよ?」
「あぁ問題なんて起こさないよ。それとギルドカードは返して貰うぞ。」
「おっと、あんたの【収納】スキルとランクに気が行ってて忘れてた。悪いな。」
ギルドカードを返して貰った俺は、足を踏み出しポルネ村へと入る。




