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第24話 作成依頼



アイギスの街に来てから今日で1ヶ月がたった。アイギスにやって来た初日は、トールさんにボコられた上に金がなくて野宿するはめになったが、今は毎日依頼をこなしてちゃんと宿に宿泊している。


ここの宿は多少値は張るが飯は美味いし、部屋も広くて快適。当初この宿に泊まって食事を食べたときは、それは感動した。それまでは、安い黒パンとかで腹を膨らませていたから、尚更だったんだろう。思わず涙が出てしまったくらいだ。







そしてこの1ヶ月、街の中を色々散策してみた。


一番記憶に残っているのは、ドワーフが経営する鍛冶屋だ。初めて入店したときなんて、有無も言わさず追い返されてしまった。もちろん理由はある。


俺はゴブリンが持っていたボロボロの槍をいつも手入れして使っていたが、それが駄目だったみたいだ。ルドロフ…鍛冶屋店主のドワーフの名前だが、そいつからしたら幾ら手入れしてあっても冒険者の命綱とも言える武器で、ボロボロなものを使っていたこと自体が許せなかったらしい。


俺はそのルドロフに用事があるから今日会わなくてはならない。しかし、心配はしなくてもいい。2度目の入店時に、酒を渡して許してもらっているからな。


ルドロフに会って用事を済ませる為に、出掛ける支度をして鍛冶屋へ向かった。







鍛冶屋に着き扉を開けると、中から籠っていた熱気が溢れ出してきた。外と比べて温度差が10度くらいあり、毎回来る度によくこんな所で仕事出来るなと感心してしまう。


「おーい、ルドロフのおっさんいるか?」


「おっさんじゃないわい!!」


俺の言葉を否定しながらルドロフは仕事場から出てきた。でも人間から見たらドワーフは若くてもおっさんに見える。


「それでお前さん、今回は何の用件があって来たんだ?」


「おっと、そうだったな。今日は槍を作って欲しくてここを訪ねたんだ。」


アイギスで暮らし始めて1ヶ月の間、ずっとボロい槍を使い続けた訳ではないが、依頼をこなす頻度が高くてすぐに槍が駄目になってしまう。つい先日も、3本目の槍の矛先が砕けて使い物にならない状態になった。そんな訳で、丈夫な槍が欲しいと思って今回やって来た。


「槍を作るのは構わないんじゃが、具体的にどんな性能が欲しいとか要望はあるか?」


「具体的な性能ねぇ…そうだな、丈夫で魔力伝導率が高いものを作ってくれると有難い。」


「魔力伝導率?丈夫なものを作れというのは分かるが、何故魔力伝導率まで関係あるのじゃ?」


「俺は槍で基本戦闘をするのだが、その時魔力を通すスキルを使用している。それで、少しでもそのスキルの魔力消費量が少なくて済むように、魔力伝導率が高いものを頼んでいる訳だ。」


「つまり魔力も使って戦闘するから、魔力伝導率が高いものの方が都合が良いと?」


「まぁ、そういうことだな。」


短時間の戦闘の場合なら別に関係ないが、これが長時間となると魔力効率の良いスキルである【魔力撃】でも疲労が溜まる。どうせ槍を買い換えるのだし、今回のことを切っ掛けに魔力伝導率の高いものを買おうと思ったんだ。


「それで、今頼んだ槍を作って貰えるのか?」


「おう、作るのは構わない。構わないんじゃが…」


「構わないがなんだ?」


「要望の槍を作るには、幾つか材料が必要なんじゃ。」


材料が必要なら用意すればいいんじゃないのか?俺はてっきり高額になるから、支払いについて聞かれると思ったのだが。


「それで何が必要なんだ?」


「ある程度こちらで用意出来るのだが、どうしても1つだけ用意出来ないものがあるんじゃよ。」


「その1つとは?」


「魔導金属であるミスリルじゃ。」




魔導金属…それは長い時間魔力に干渉することで出来る希少な金属だ。そして、その魔導金属には3つのものがある。順にミスリル、アダマンタイト、オリハルコンだ。この3つにはそれぞれ特徴があって、まずはルドロフが言っていたミスリルから説明していこう。


ミスリル…この魔導金属の見た目は透き通るような赤色をしていて、特徴としてはよく魔力を通すことだ。ルドロフが槍作りに必要と言ったのもミスリルの魔力伝導率が目的だろう。


そして次はアダマンタイト。これは白銀を思わせるかのようなシルバー色で、魔導金属としての効果は物理攻撃に対して高い耐性を持っていることだ。その耐久の高さは、鋼と比べると百倍以上になるとも言われている。


最後にオリハルコンだが、これは全ての金属の中で最も希少で、優れた特性を持っていることで有名だ。その見た目は黒曜石にも似た深い黒色。そして一番大事である金属特性は、ミスリルとアダマンタイトの両方を兼ね合われた効果を持っている。つまり、魔法にも物理にも強い金属であるということだ。


短かったが、以上が魔導金属の簡単な説明だ。




「魔導金属であるミスリルが希少なのは知っているが、何故どうしても用意できないんだ?」


「まぁ待て、ちゃんと訳はある。ミスリルは希少故に、入手出来る所が相当限られていて、一番近場にある場所でもここから徒歩2ヶ月の所じゃ。」


「に、2ヶ月!?」


「そうだ、2ヶ月じゃ。それのせいでミスリル採取の依頼を冒険者に出しても、誰も受けてはくれないし、距離があり過ぎることもあって商人も中々来ない。これ等が理由でミスリルの用意は無理ということじゃ。」


おいおい、それじゃ今日ここに来た意味が無いじゃないか。


「じゃあ俺の要求通りの槍の製作も出来ないってことなのか?」


「何もそうは言っとらん。ミスリルを手に入れる方法なら、例外じゃが1つある。」


「なんだ驚かせやがって。で、その例外ってなんだ?」


「お前さんがミスリルを取りに行くことじゃよ。」


は?今この髭もじゃなんて言った?


「悪い、俺が入手しに行くとかクソみたいな幻聴が聞こえたから、もう一度言ってくれないか?」


「お前が行くんじゃよ。ほら、地図も渡すから道に迷わないだろ。」


そんなことを言いながら地図を此方に押し付けてくる。


「この地図にバッテンを書いたところに行くと鉱山があって、そこにミスリルリザードがいるから、そいつを倒してミスリルを持って帰って来るんじゃぞ。」


「ちょっと待て、なんで俺が行くことになってるんだ?その上ミスリルリザードってなんだよ!」


名前からしてミスリルが関係ありそうだが、俺はそんな魔物見たこと無いから知らないぞ。


「はぁ~、お前さんそんなことも知らんのか。冒険者なんだからもう少し魔物ことを調べておいた方がいいぞ。ミスリルリザードという魔物は、その名の通りミスリルが表面に覆われている奴のことじゃよ。」


「……それだけなの?」


「これだけ分かれば十分じゃろ。」


いやいや、そんなわけねぇだろ!まだミスリルリザードがミスリルに覆われていることしか聞いていないぞ。


「それにお前さんは要望通りの槍が欲しいじゃろ?なら拒否なんて出来まい。」


なんだこの髭、人の足元見やがって。


「ミスリルを取ってくれば、本当に本当に作ってくれるんだろうな?」


「当然じゃろ、材料と金さえあれば作ってやる。何ならここで誓ってやろうか?」


「判った、そこまで言うのなら俺が取って来ることにする。」


ルドロフは若干うざい時もあるが、仕事の腕と信頼性は本物だ。そしてその本人がここまで言ってるんだ、なら相当いいものが仕上がるに違いない。


「次ここに来るときは、ミスリルを持ち帰ったときにする。その時は、最高の槍を頼むぞ!」


「誰にものを言っているんじゃ、任せておけ!」


最後に言葉を交わして鍛冶屋をあとにした。




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