第20話 模擬戦①
修練場に到着し、中に入ると、そこには冒険者らしき人物が十人程いた。その冒険者たちは模擬戦をやったり、素振りをしていたりと、各々自分を磨くために研鑽を積んでいる。
受付嬢が試験官にギルドカードと受験票を渡してくださいと言っていたが、誰が試験官なのか解らない。何も訓練をしていない人が数人程いるが、恐らくこの中の誰かが試験官なのだろう。
(一番やばそうなオーラを発してる彼奴に聞いてみるか。)
柔和な顔をしている壮年の男へ近づく。壮年の男は俺と同じ位の身長で体もデカイ訳ではない。何ならここで訓練をしている奴の方が、この男よりずっとガタイが良い。なのにこの男からは只者ではないオーラが感じられる。
壮年の男の目の前まで来て間近で見てみると、細身ではあるが筋肉は付いており、鍛えられていることが容易に解った。ここに来る前までは、魔法使い等の遠距離職だと思っていたが、恐らくこの男は近距離で戦闘を行う職だろう。
「聞きたいことがあるんだが、ちょっといいか?」
「ん?僕に何か用かい?」
此方側を振り向き、柔らかな笑顔を浮かべながら用件を尋ねてきた。
「特別昇格試験って奴をやりたいのだが、試験官が誰か解らなくてな。もし知っているのなら、誰が試験官なのか教えて貰いたい。」
「教えるのは構わないけど、その試験官は僕だよ。」
とんでもないことを、さらっと言ってきた壮年男。
(おいおい冗談だろ!?俺がこいつと模擬戦をやっても恐らく勝てないぞ!)
先程振り向いたときの無駄のない所作、目線の動かし方、どれも洗練されたものだった。一目で強者だと確信する程。この修練場にいる奴等と比べても頭1つ飛び抜けている。そんな奴とやりあっても勝てる気がしない。
「なら、あんたが俺の模擬戦相手か?」
「うん、そういうことになるね。でもその前に、自己紹介をしておこう。僕の名前はトール。ここのギルド職員の1人だ、宜しく。」
トールは自己紹介をしながら此方に手を差し出し、握手を求めてきた。俺はその差し出された手を握り返し、自己紹介を始める。
「俺はフェルトだ、此方こそ宜しく頼む。それと、ギルドの受付嬢からこのギルドカードと受験票を渡せと言われたのだが、これでいいのか?」
【アイテムボックス】からギルドカードと受験票を取り出し、トールに手渡す。その時、トールが若干目を見開いたが、何事もなかったかのようにギルドカードと受験票を受け取る。
「ありがとう。えっと、フェルト君は槍術士か…ならあそこに置いてある、刃を潰した模擬戦用の槍を使ってくれ。あと、ギルドカードはもう良いから返しておくよ。」
俺は返事をした後、トールが指を指していた武器置き場へ向かった。
模擬戦用の槍を手に取り帰ってくると、トールは軽い準備運動を終え、待ち構えていた。右手には主力武器だと思われる短剣が握られている。
「待たせたか?」
「いや、僕も丁度準備運動が終わったところだよ。」
トールは先程と同じ様に微笑んでいるが、そこには優しさが一切感じられなく、闘気が溢れ出ていた。その闘気は、普通の試験官が出せるようなレベルではない。気になって思わず聞いてしまった。
「いきなりこんなこと聞くのもなんだが、トールさん、あんた相当強いだろ?」
「どうして、そう思ったんだい?」
「動くときの所作といい、発しているオーラといい、この修練場の中で、ずば抜けているからな。」
納得するように軽く頷いて、俺の質問に対する答えを返してきた。
「フェルト君、君は観察眼が良いみたいだね。僕はこんな細いなりだから、よく新人からなめられる時があるけど、元Aランク冒険者だったんだ。」
(元Aランク冒険者…只者ではないと思ってはいたが、そこまでは予想してなかった。)
「はっはっ、それが本当なら相当強いどころじゃないな…」
「まぁどうせ今は、只のギルド職員の1人だから、そんなに緊張しなくてもいいよ。」
俺の力んでいる身体を見て、トールはそう言い放ちながら模擬戦の為に距離を取る。
(トールが嘘を言ってるようには見えなかったが、本当かどうか確かめる為に【鑑定眼】を使ってみるか。)
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トール 男 年齢:57 種族:ヒューマン
職業:短剣使い
Lv78
HP4768/4768
MP945/945
筋力 408
耐久 187
敏捷 2053
魔力 315
パッシブスキル
【危険感知Lv5】【気配感知Lv2】
耐性スキル
【物理耐性Lv6】【魔法耐性Lv4】
【衝撃耐性Lv4】【斬撃耐性Lv3】
【麻痺耐性Lv3】【毒耐性Lv3】
ノーマルスキル
【格闘術Lv5】【短剣術Lv7】
【言語理解Lv5】【身体操作Lv6】
【歩法Lv4】【魔闘気Lv4】
【魔力撃Lv4】【解析Lv3】
【疾走Lv3】
称号
【俊足】
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ヤバイ…それしか言葉が出てこない。受付嬢がAランク冒険者は超人だと言っていたが、まさにその通り。馬鹿げたステータスをしてやがる。正直、本当に勝てる気がしない。しかし、そう思う自分がいる一方、この強者を相手に何処までやれるのかと考える自分もいる。
そんなことを考えながらステータスを見て対策を練っていると、修練場にいた奴等が今から始まる模擬戦を見物する為にやって来た。
「まさか…あの小僧、トールさんと模擬戦をするつもりなのか!?」
「フフッ、流石にそんなことないでしょ。」
「でも、トールさん短剣を持って戦闘準備しているぞ。」
「どうせ見た目で判断した馬鹿な奴なんだろ?」
見物人たちが好き勝手言ってくる。中には激励してくれる奴もいるが、今はこれから始まる模擬戦に備えて集中しているから、殆ど耳には届いていない。
集中していて気付かない内に、他の試験官と思われる男が俺とトールの間で立ち止まっていた。いつから居たのかは解らないが、恐らく模擬戦のルール説明や始めの合図をする為に来たのだろう。
中央に立った試験官が模擬戦の説明を始める。
「今から模擬戦の説明を致します。この模擬戦はどちらかが気絶、若しくは降参するまで続行。殺しは無し。もし相手を死に至らしめた場合、厳罰が待っていますので、ご注意下さい。」
「次に開始の合図の説明を行います。公平さを保つ為に、私が『始め!』と言ったときに模擬戦を開始して下さい。この際、事前に魔法の呪文を唱えておく等の行為は禁止とします。短いですが、これで説明は以上となります。何か、質問は御座いませんか?」
「問題ない。」
「大丈夫です。」
「質問はないようですし、早速始めましょう。それでは双方、武器を構えて!」
武器を構えて、その言葉と共に審判が腕上げる。
対戦相手であるトールは、腰を落とし、一気に突進出来るような攻めの姿勢に入る。これに対し俺は、槍の矛先を正面に向け懐に入れさせない為に、突きを繰り出せる守備よりの体勢を取る。そして、最後はだめ押しとばかりに最終確認のステータス閲覧。
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フェルト 男 年齢:15 種族:ヒューマン
職業:槍術士Lv18/50
Lv27
HP764/764
MP178/178
筋力 132 (+26)
耐久 38
敏捷 167 (+33)
魔力 59
パッシブスキル
【根性Lv1】【危険感知Lv1】
【気配感知Lv1】
耐性スキル
【恐怖耐性Lv2】【物理耐性Lv1】
【斬撃耐性Lv1】
魔法スキル
【水属性魔法Lv2】
ノーマルスキル
【格闘術Lv2】【剣術Lv1】【槍術Lv4】
【言語理解Lv5】【思考加速Lv2】
【身体操作Lv3】【歩法Lv2】
【限界突破Lv1】【魔闘気Lv1】
【魔力撃Lv1】
ユニークスキル
【鑑定眼Lv‐‐】【アイテムボックスLv‐‐】
称号
【選ばれし者】【ゴブリンキラー】【逆境】
【願い】
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武器を構え、準備は終えた。
あとは合図を待つのみ。
たった数秒の時間、それが何倍にも感じられる。
しかし、遂にその時は来た。
審判が腕を下げると同時に、口を開き合図を出す。
「始め!!」




