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第22話「東京湾侵略編④ 炎上する湾岸」

西暦2055年4月15日 0時37分。


東京湾沿岸に、地獄が降り立った。


 


それは“侵略”と呼ぶにはあまりに静かで、

“戦争”と呼ぶにはあまりに異質だった。


 


黒い影——異形の兵器群が、音もなく上陸を開始。

四肢のような脚部が湾岸構造物を踏み潰し、滑るように進行していく。


人類が持ついかなる兵器体系にも当てはまらないその“存在”は、

それでも確かに“敵”だった。


 



東京都・有明。


湾岸施設に近い区画では、すでに建物の倒壊が始まっていた。


——爆音。


港湾倉庫がひとつ、押し潰された。


その瓦礫の向こうに、巨大な鋼の影が現れる。


「う、うそだろ……」


自衛隊員が震える声を漏らす。


構えていた89式小銃を握る手が汗で滑り、装填レバーが外れる音さえ生々しく響いた。


 


「前衛部隊、迎撃開始! ここで止めるぞ!」


中隊長の怒号とともに、

10式戦車部隊と装甲車が一斉に砲火を解き放った。


 


——ドォンッ!


砲弾が火花を散らし、直撃。


爆煙の中に敵影が飲み込まれる。


「命中確認! 反応、減速——いや、まだ来る!」


煙の奥から、再び“それ”は現れた。


外殻がわずかに焦げている程度で、構造そのものには損傷がない。


「効いてない……だと……!?」


 


次の瞬間、敵兵器の“腕”が振るわれた。


巨大な構造体のような突起が、ビル壁面をなぎ払う。


まるで紙細工のように崩れる建材。


衝撃波が地を揺らし、避難しきれなかった車両が数メートルも吹き飛ばされる。


 



湾岸の混乱は、瞬く間に隣接区へと波及していた。


豊洲・晴海・芝浦……


「避難完了率、区によっては未だ30%以下です!」


「道が封鎖されています! 歩いて逃げる市民も混在していて……!」


 


現場指揮車両の中、警察と消防、自衛隊の通信が交錯する。


逃げる市民。

助けを求める声。

怒号。悲鳴。割れるガラス。


それらすべてをかき消すように、

遠くで爆発音が上がった。


 



「敵、第4目標群が市街地南端に到達。速度上昇中!」


「対応部隊、砲撃継続中! ですが……被害が抑えきれません!」


 


防衛省地下指令室のホログラムには、赤く光る都市構造マップ。

その半数近くに“侵攻済”の印が点灯していた。


東郷官房長官はモニターを睨みながら言う。


「……市民を守る。第一優先は変えるな」


「はい!」


吉岡圭吾総理も、拳を強く握っていた。


 


(なぜ……ここまで正面から来る……?)


敵の意図が読めない。


空爆でもなく、通信妨害もなく、ただ“真っ直ぐ”にやってくる。


それは、まるで——見せつけるように。


 



午後0時48分。


炎が、都市を包み始めていた。


燃え上がる住宅街。黒煙。赤く照らされた空。


避難しきれなかった人々の叫び。


火災の熱で街路樹が枯れ、電柱が倒れる。


「退避! 退避しろッ!!」


 


自衛隊の通信車両が焼かれ、通信網の一部がダウンする。


陸上からの砲撃が敵に集中するも、全体数の“進行”は止まらない。


 


——そして、ついに。


一体の敵兵器が、都心方向に進路を取り始めた。


その動きは明らかに“目的”を持っていた。


 


「敵兵器、A6ルートを北上! 目標、都心部!」


その報告は、冷たく響いた。

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