↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
23/23

第23話「東京湾侵略編⑤ 戦場と化す都市」

西暦2055年4月15日 午前1時02分。


東京都・港区。


新橋駅前にある、再開発途中の高層ビル群。

その一角が、真っ赤な炎に包まれていた。


——爆発音。

地響きのような衝撃と共に、街の構造が崩れていく。


自動車が押し潰され、歩道は割れ、避難途中の市民が散乱する瓦礫に阻まれていた。


「このままじゃ挟み撃ちになる! 第2班、そっちから回れッ!」


陸上自衛隊の隊員が、ヘルメットの下で汗を飛ばしながら指示を飛ばす。


しかし、声が届くより先に——黒い影が、建物の上から降ってきた。


「——っ! 回避——!」


叫びと同時に、地面が抉れる。


敵兵器。


巨大な外殻。柔軟かつ質量のある四肢。

動きはまるで“生きている”かのようにしなやかで、反応が早すぎた。


 


◆


東京都・芝浦。


避難中の市民たちが、封鎖された湾岸道路で立ち往生していた。

後方には黒煙。前方には無数の車列。

逃げ場が、ない。


「……誰か、助けて……」


老夫婦の声が、夜の騒音にかき消される。


その時。


轟音。


上空を低空で通過する輸送ヘリが、サーチライトを照らす。


「この場にとどまってください! 救援部隊が到着します!」


機内から吊り下ろされた拡声器の声が響く。

だが、その下——ビルの隙間から現れた“影”が、光を跳ね返した。


敵兵器。


今度は複数。


湾岸沿いの入り組んだルートを、獲物を探すように進んでくる。


 


◆


東京第7防衛区域——訓練施設。


鳴瀬隼也は、格納庫の前で立ち尽くしていた。


彼の視線の先、滑走路のはるか向こうに、空が赤く染まっていた。


「まさか……ここまで来るとはな」


訓練基地の副官が、吐き捨てるように言った。


「湾岸部はすでに突破された。こっちの施設も避難対象になるだろう」


「避難、ね……」


鳴瀬は、握った拳をほどかずに言葉を返す。


「どこに逃げたところで、あいつらの進軍を止められなきゃ意味ねぇだろ」


「……お前、まさか」


「まさかもクソもあるか。俺たち、“航空宇宙軍”って名前ついてるんだぜ?」


誰かが笑うような、あるいは諦めたような息を漏らした。


 


◆


市ヶ谷・防衛省。


地下指令室では、すでに最終防衛ラインの見直しが始まっていた。


「都心南部の一部区域、すでに戦闘区域と認定。住民避難率、50%未満」


「被害規模は想定以上。敵兵器の装甲が従来兵器の火力を上回っている……」


ホログラム地図に、東京全域が赤く染まりつつあった。


東郷官房長官は、眉間に深くしわを寄せたまま言う。


「総理、これ以上の損害拡大を防ぐには、新たな戦力の投入を検討すべきかと」


吉岡圭吾総理は、無言で資料に目を通していたが——やがて、口を開いた。


「“旧式機再起動計画”——準備状況は?」


「現在、パーツ調達が80%。フレーム整備は完了。ただし——」


「間に合わないか」


「……はい。今の侵攻速度では、最低でも数日、時間が必要です」


 


吉岡は静かに、視線をモニターへと戻した。


「……ならば、その“数日”を稼げる者に、すべてを託すしかない」


 


◆


品川。


炎の中、都市のひとつが戦場と化した。


残された警察、消防、そして陸自の小隊が、“時間”を買うためだけに戦い続けていた。


敵の目的は不明。

だが、その進軍に“迷い”はない。


人がいようと、いまいと。

建物だろうと、車だろうと。


すべてを踏み潰し、貫き、進む。


 


市民の声が消え。

戦車の砲声が消え。

ついには——通信までもが、寸断され始めた。


 


東京。


首都が、“陥落”の二文字を背中に感じた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。