第19話「東京湾侵略編① 影、迫る海」
西暦2055年4月14日——。
日本。東京湾沿岸。
それは、歴史が動いた瞬間だった。
深夜0時過ぎ。
防衛省市ヶ谷地下指令室。
緊張した空気の中、巨大モニターに浮かぶレーダー画面。
そこには——異常とも言える反応が映し出されていた。
「……確認する。東京湾沖に未確認の大型飛翔体、複数接近。速度、超音速域で変動」
報告の声が、指令室の空気をさらに冷たく染める。
「識別は?」
東郷誠一郎・官房長官が問う。
「既存兵器データベースに該当なし。解析不能。おそらく、例の“敵”です」
無人探査機が捉えた影は、黒く、滑るように海面を進んでいた。
「……ついに、その時が来たか」
その横で、吉岡圭吾・内閣総理大臣が静かに呟いた。
◇
その頃——東京湾沿岸の市街地。
人工ビーチ。ショッピングモール。湾岸タワーマンション。
そこには、まだ“日常”があった。
だが——空気は、どこかおかしかった。
若いサラリーマンが、スマホのニュース速報に目を落とす。
『東京湾沖に未確認の飛翔体接近中——防衛省が情報収集中』
「……冗談だろ」
誰かが呟いた。
その瞬間——都市の空に、低く震える警報音が響いた。
『緊急警報。東京湾沿岸地域の全住民に告ぐ——直ちに避難行動を開始せよ』
高層ビル群のホログラム広告が、一斉に赤い警告表示へと切り替わる。
オートドライブの車両が緊急制御に入り、避難ルートを確保。
「避難? 本気かよ……!」
「な、なにが来るんだ……!?」
ざわつく市民。
混乱の中、遠くの海から——
巨大な影が、音もなく姿を現した。
それは、既存の常識を超えた異形。
まるで——黒い鋼鉄の生物のように。
◇
防衛省。
「敵影、東京湾へ侵入開始!」
「湾岸防衛部隊、即時迎撃体制を! 陸海空各自衛隊、戦闘配備!」
「市民避難誘導を急げ! 首都防衛戦、開始する!」
東京湾。
その静寂を切り裂き、異形の兵器群が滑るように都市へと迫っていた。




