第18話「交わる戦線」
首相官邸・作戦会議室。
大型ホロモニターには、世界各国からの通信が次々に映し出されていた。
「こちらイギリス王立空軍。現存するハリアーGR9部隊および一部艦艇の派遣を決定。既に航行中」
「韓国空軍より、旧式F-4Eファントムの譲渡申し出あり」
「オーストラリア軍、艦艇および旧式F/A-18Cホーネット数機の提供を確認」
通信官たちの報告が次々に飛び交う。
「……集まってきたな」
東郷誠一郎は静かに呟いた。
その横で、吉岡圭吾総理が重い声で応じる。
「人類の意地か、或いは……最後の希望か」
「どちらであれ、これで“抗う資格”は得たということでしょう」
各国の動きは、まさに雪崩を打ったようだった。
日本が旧式兵器で反撃に転じようとしている事実は、恐怖と同時に希望を呼び起こしていた。
「とはいえ、敵も黙っていないはずだ。既に敵戦力が都市部近郊に再集結を開始したとの報告もある」
「……いよいよか」
吉岡は目を閉じた。
「過去の遺産に頼ると決めたのは我々だ。ならば、それを最大限に活かし、生き延びるしかない」
◇
その頃、格納庫21。
巨大なコンテナが次々とクレーンで降ろされ、整備班の手によって慎重に開封されていた。
「これが……F-14D用の中枢パーツか」
澪は震える手で、慎重に梱包材を外していく。
「無事か?」「輸送中の損傷は?」
「……異常なし!」
整備士たちの間に、小さな歓声が漏れた。
(これで……飛ばせる)
澪は胸の奥で呟いた。
それでも、時間は限られている。
都市近郊への敵の新たな侵攻が報告され、次の戦いは目前だった。
◇
「敵戦力、南関東沖から再侵攻を開始。都市部への進軍ルートを複数展開」
防衛総司令部のモニターには、赤い侵攻ラインが都市近郊を覆っていた。
「今度は容赦ないな……こちらの再起動計画に気付いたか」
東郷は苦々しく呟く。
「新世代兵器では、敵AIに解析され撃破される確率が高い。だが、我々には……旧式機がある」
◇
鳴瀬隼也は、整備中のF-35の前で、真壁颯士と並んで立っていた。
「……来るぞ、次は」
真壁が短く言った。
「ああ。今度は、失敗は許されねぇ」
前回の戦闘で、鳴瀬は痛感していた。
命令無視、仲間の死、助けられた自分の未熟さ。
「イーグル隊、準備は整っている。いつでも飛べる」
「了解」
◇
夜、澪は一人、格納庫21に戻りF-14Dを見上げていた。
「……もうすぐだよ」
静かに、その機体の尾翼に触れる。
過去の遺産にして、未来の切り札。
それが、近づく決戦の中で再び空を裂く日が来る。
◇
そして夜明け。
各国からの支援物資と旧式機が、続々と日本に集結し始めていた。
「こちら英国艦隊、旧型艦艇・ハリアー搭載艦を確認」
「韓国空軍より、ファントム部隊が接近中」
「アメリカ第七艦隊残存部隊、輸送船団護衛中」
鳴瀬は空を見上げ、深く息を吐いた。
「――全部、間に合ってくれよ」
次の戦いは――もう、すぐそこだった。




