表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/23

第17話:希望の外交線

首相官邸・地下会議室。

外の喧騒とは別世界のように、冷たい沈黙が支配していた。


日本政府――いや、“人類最後の中枢”とも呼ばれ始めたこの地には、各国から膨大な通信要求が届いていた。


「……アメリカ太平洋艦隊、現地指揮官と接続成功」

「旧NATO残存部隊、欧州中部より応答あり。だが内容は――限定的協力との条件つきです」

「豪州空軍、整備支援には前向き。ただし、輸送手段の安全確保が条件です」


通信官が次々と報告を上げる中、東郷誠一郎は一言も発さずモニターを睨んでいた。


「……東郷」


吉岡圭吾総理が、重い声で口を開いた。


「君の見立ては?」


「――半分が“恐れている”、もう半分が“見ている”だけです」


「どういう意味だ?」


「恐れているのは、我々が失敗した時に巻き添えを食らうこと。

見ているのは、我々が成功した時に“乗る”つもりでいる国々です」


吉岡は肩で息を吐いた。


「つまり、誰も最初の一歩を踏み出そうとしない……か」


「ですが、こちらには“切り札”があります」


東郷は、資料の一枚を差し出した。


「この部品供給リスト。旧日米技術協定の延長条項に基づき、アメリカの南部地下倉庫にF-14系中枢プロセッサの保管記録が残っています。

仮に所在が確認できれば、“旧式機の復活”は現実になります」


「その“もし”に全てを賭ける気か?」


「いいえ――“全てを賭けるに値する未来”だと、思っています」


 



その日の夕刻。オンラインで接続された会議室に、各国の残存首脳・軍関係者が映し出される。


「繰り返す。現代機は敵AIによるハッキングと解析により、ほぼ通用しない段階に入っている」


東郷の言葉に、一部の軍人たちがざわついた。


「我々が提案するのは、“旧世代兵器”による逆転戦略だ。

敵は、旧式兵器の物理制御やアナログ信号に対する耐性が著しく低い。

これは、現場から得た確証に基づくものだ」


「その“確証”とは何か?」


ヨーロッパ代表の将官が眉をひそめた。


「実戦記録と照合された攻撃ログ、および初期遭遇戦での限定的勝利例です。

敵のアルゴリズムは、“新世代兵器”への対応を前提としている。

それが盲点になり得るのです」


「過去の遺物を使う? そんな非現実的な作戦が通用すると?」


東郷はモニターを睨んだ。


「“現実的”とは、何かを生き延びることです。

技術が高ければ勝てる時代は終わりました。

今は、“使える手札”を全て使う。それが生存条件です」


 



その夜、吉岡総理は内閣官邸の屋上にいた。

防衛庁から届いた報告書を手に、彼は夜空を見上げていた。


「――皮肉だな。未来の戦争を見越していたはずの我々が、過去の遺産にすがることになるとは」


「ですが、“過去”は、我々の礎でもあります」


東郷が隣に立つ。


「F-14Dの修復。旧式部品の調達。

そして……各国との連携。すべては一本の糸の上に立っています。

ですが、糸は繋がり始めている」


「……どこからだ?」


「先ほど、ドイツ空軍の残存部隊から連絡が入りました。

“保有していたミグ-29、トーネード、ハリアーの一部を移送可能”とのこと。

旧型とはいえ、飛べる機体があることは大きい」


吉岡は目を閉じ、小さく頷いた。


「“たとえ過去の力でも、それが人類の未来を繋ぐなら”か。……悪くない言葉だな」


「それは――澪整備士の言葉です」


「……あの子か」


 



その頃。格納庫21では、澪が一人、作業リストを前に資料を整理していた。


彼女の背中に、整備士たちの視線が向けられている。


「この部品、確かに記録が残ってたって話だったよな?」

「問題は……それが、間に合うかどうかだ」

「でも、やるしかない。もう後戻りはできない」


 



夜が明ける。

作戦本部に、一本の通信が届く。


『こちらアメリカ第7海軍、臨時作戦支援部隊。F-14関連パーツの搬出に成功。海上経由で日本への輸送を開始する』


格納庫21。

澪の端末に、到着予想リストが表示された。


「……間に合う。間に合わせる」


彼女の視線の先、F-14Dの機体はまだ眠ったままだった。


だが、その沈黙は、やがて轟音に変わる。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


作品への感想や評価、お気に入り登録をしていただけると、とても励みになります。

作者にとって、皆さまの声や応援が一番の力になります。


「面白かった!」「続きが気になる!」など、ちょっとした一言でも大歓迎です。

気軽にコメントいただけると嬉しいです!


今後も楽しんでいただけるように執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ