9話 「パーティーの過去」
俺らは『共存都市 アーメリー』を目指すべく、大東森へと入った。俺とミアがカイルとレオンの後ろを歩いていた。ミアとは世間話をしていた。そこにグムが割り込んできて、ウザかった。
「これから行くアーメリーは街なんだよっ!」
「街以外もあんのか?」
「うん、村と街と国があるの。ニーホは街」
「ふーん。そういえばミアってどこが故郷なんだ?」
「ムハラ村っていう、すっごく小さな村」
「私も同じです」
レオンが会話に入ってきた。
「レオンとミアって出身同じなのか」
「はい、私とミアは同じ学校でクラスも一緒でしたからね」
「学校があんのか。あれ?レオンも22歳なのか?」
「言ってませんでしたっけ」
「聞いてない」
「すいません」
(レオンってまだ22なのか。その年齢なのにこんなしっかりしてんのか)
「カイルはどこなんだ?」
「俺はトゥキウヨ村の出身だ」
「どこだそこ」
「めっちゃ大きな村よ。ほぼ街みたいな規模してるところよ」
なんだか日本が懐かしいな。今は日本に戻りたいとかは思わんが、もしあの時に戻れるなら戻りたい。
(こっちの方が今は楽しいしな…)
「ユウキはどこ出身なの?」
「俺か?俺はだな…ここからすごく遠い国から来たんだ」
「それってどこよ」
「秘密だ」
「なんでよ!私たちは教えたんだから教えてくれてもいいじゃん」
「ごめん、どうしても教えられないんだ」
「それなら、いいわ」
珍しくミアが食い下がってくれた。にしてもこの森は不気味だ。風がなく、生き物も見当たらない。鳥の声だけが森にこだましている。声だけが聞こえるのは不気味だ。
(…早く街に着きてぇ)
俺はこういうの慣れてないんだよ。ホラーは苦手だ。すると、カサッと何かが音を立てた。
(急に出てきて驚かすのはやめてくれよ…)
すると、突然前に魔物!…ではなく虫が飛んできた。
(…ビビらせやがって、魔物かと思ったわ)
と思った瞬間、虫が魔物に食われた。
「うわっ!なんだ!?」
「びっくりしすぎよ。ただのEランク帯の魔物よ」
「そ、そうか」
俺は魔物に向かって
「『炎魔法 ウォータークール』」
をボウゥッと放った。すぐに魔物は燃えて灰になった。
「あんた、そればっかり違うわね」
「ま、1番使いやすいからな」
「でも、強敵相手じゃ効かないわよ」
「なこと言われても俺は炎魔法はこれしか知らん」
すると、ミアがめんどくさそうな顔をして杖を握った。ミアは一息つくと杖を構えた。ミアの髪や服が靡いた。
(なんかやんのか?)
そしてミアは魔法を唱えた。
「『炎魔法 フィティアースフェアラ』!」
ミアがそう唱えると火の玉ができた。そしてその玉が木に向かって飛んだ。木はゴォォォォっと音を立てて崩れた。
「どうよ!これがレベル3の魔法よ!」
「おい、ばかっ!ここは森だぞ、木に火をつけたら周りに広がるだろうが」
「あ、確かに」
(…こいつ、思った以上にばかだ)
俺は炎を消すために水魔法をかけた。
「『水魔法 アクアスプラッシュ』」
木はジュッと音を立てた。それと同時に炎は消えた。
「全く、森では火の扱いに気をつけろ」
「ご、ごめん」
少し、寂しそうにミアは謝った。俺はふっと笑ってから言った。
「さっきの魔法もしっかり見てたぜ。中々にいい魔法だな」
「ほんと?」
「あぁ。えっと、フィギュアースケアリーだっけ」
「全然違うわよ。本当に見てたの?」
「も、もちろん。見てたに決まってるだろ。俺は嘘はつかない主義だからな」
ミアは少しクスッと笑った。
「何がおかしいんだ」
「いや、バカだなと思って」
「なんだよそれ」
気づけば太陽が真上に来ていた。
(もう昼か…)
レオンが少しひらけたところで歩みを止めた。
「ここでお昼休憩をしましょう」
「そうだな」
倒木にユウキたちは腰を下ろした。グムは肩から倒木に飛び移り、デュラは飛ぶのをやめてユウキの足の上で丸くなった。
昼食では俺たちは少し硬くてパサッとしてパンだった。一方でデュラは干し肉を食べ、グムにはその辺の木の実…ではなく、干しぶどうをあげた。
俺は昼食を素早く済ませた。
(さっきの魔法試してみるか…)
狙いは少し前にある、岩だ。岩なら木に燃え移る心配が少ない。
「なんかやんの?」
「さっき、あんたから教えてもらった魔法を試そうと思って」
「言っておくけど、頑張っても習得するには1ヶ月はかかるわよ」
俺はミアの言っていることを無視して魔法の詠唱を始めた。
「『炎魔法 フィティアースフェアラ』」
手に魔力を込めた。そうすると、手の前に火の玉ができた。そして、岩めがけて発射した。
岩はバコォォッンと音を立てて砕けた。
「う、うそでしょ。なんで初見でできるのよ」
「ま、天才だからかな」
「しかも、杖なしでこの威力と精度なんて…」
「なんで杖使うんだ?」
「なに?バカにしてんの?あんたは杖なしでも魔法が撃てるけど、私はできないからって舐めてんの?」
「ち、違うわ。ただなんでなのか気になっただけだよ」
相変わらずに面倒くさいなこいつは。ったく、いつになったら体だけじゃなくて、心も大人になってくれるんだか。
「そ、そうだったのね」
「そうだよ」
「なんでかって言ったら、杖がないと魔力が分散しちゃって魔法が撃てないからよ」
「てことは杖は魔力を集められるのか」
「ま、簡単に言えばね。詳しいことは自分で調べて」
確かに俺はこの世界の詳しいことを全然わかってないな。街に着いたら色んな本を読んでみるか。
俺らは10分ぐらい休んでから歩き始めた。そこからは魔物は出てこなかった。
(急に森が暗くなってきたな…)
さっきまでは明るかった気がするのに気づけば、もう真夜中ぐらい暗い。太陽はどこにも見当たらない。俺とミアが指の先に小さな炎をつけた。みんなの顔がギリわかる程度だ。
「今日はここまでにしておきましょう」
「急に暗くなったな」
「大東森は19時あたりから真っ暗になります。では、早めに夕食をとりましょう」
ほぼ、昼食と変わらないパンだ。もちろん、デュラもグムも昼食と同じものを食べた。
「夜は危険なので2人ずつでテントの周りを見張りましょう」
「わかった」
「寝るのは20時ぐらいで明日の起床は5時にしたいので2人で3時間見張りをしましょう」
「グムとデュラも見張りすんのか?」
「はい、グムさんとデュラさんが最後にやってもらいます」
「げ、最後かよ。しかもデュラと一緒かよ」
「キュウ?」
「いいだろ、別に。それに知的型のお前よりデュラの方が賢いぞ」
「そんなことはないわ!」
文句の多いリスだこと。頭が幼稚園児なんだよ。てか、テントってあのテントか?もしかして、俺以外にもいるのか?異世界から来たやつが。
「ユウキはミアと2番目に見張りをしてください」
「え?ミアと?」
「なに?嫌なの?」
「い、いや別に」
ここで嫌ですなんて言ったら確実にしばかれる。
「最初は私とカイルが見張りをしますので、3時間たったら、ユウキとミアを起こしますからね」
「わかった。そしたら俺たちはリスとデュラを起こせばいいんだな」
「俺はただのリスじゃなくてグムだ!」
そして、テントを広げてカイルとレオン以外は眠りについた。しばらくすると、レオンがミアと俺を起こしに来た。
「ミア、ユウキ、交代の時間です」
「いま、いくわ」
「ユウキ、起きてください」
むにゃむにゃ。
「私が起こす」
──バッン!
数分後。
「あー、いてぇ」
俺の左頬は赤く手の形に腫れ上がっていた。
「あそこまでする必要ないだろ」
「あんたが起きないのがわるいんでしょ」
「だからって…」
「真っ暗だね。魔物がきても気付かないかもね」
「おい、人の話聞いてんのか」
「私ね、あんたと出会ったのはねたまたまじゃないと思うんだよね」
「たまたまじゃなかったらなんなんだよ」
「運命だよ。私はユウキに会うっていう世界の決まりだよ」
「なんでそう思うんだ?」
「なんとなくだよ」
(曖昧な答えしやがって)
「あそこにユウキがいなきゃ私たちは死んでた。だから、いつもはあんな態度だけど本当は感謝してるんだよね」
「そっか、てかなんでお前、回復役になったの?」
「もー、人の話聞いてんの?あと、私の職業は補助的魔術師だよ」
「補助的?なんだそれ」
「主に回復とか。味方を後ろから支える役割があるの」
「なんで、それになろうとしたんだ?」
「えっとね、私の力だったら補助的魔術師が1番人を救えると思ったから」
「まあ、回復魔法があるもんな」
「そ、そうね」
やっぱり、いつもはツンツンしてるけど意外と優しいんだな。てことは、ツンデレってことか。俺を好いてるってことも!?…ま、ないか。てか、今ミアを襲っても誰にもバレなくね?…いや、いかん!でも、いま最大のチャンスだしな。…よし、まずは…
「なーに変な妄想してんの?顔に出てるよ」
「な、なーんでもなーい」
(くそ、勘がするどいっ!)
「実はね一番辛い思いをしてきたのはレオンなんだよね」
「なんかあったのか?」
「あいつの両親は冒険者をしてたの。でも、ある魔王軍幹部に殺されたのよ。さらに、村で1番強かった、レオンのお兄さんもそいつに殺されちゃったの」
「そんなことが…。その幹部はなんていうやつなんだ?」
「名前はソド。私もレオンの両親にはよくしてもらったから、あいつは許さない」
「なるほど。レオンは一番魔物を殺したいはずなのか。それなのに誰よりも大人だ」
(レオンは決して強くはないが、本当に心が強い)
「そういえば、カイルはパーティー入る前は何してたんだ?」
「私もあんま詳しいことは知らないわ」
「そっか」
少し、ミアの顔が赤くなった。
「私ね、実はね、あんたと会ってから一緒にいるうちにね、私ユウキのことが…」
「おい、ミアなんかあっちにいないか?」
「え?」
俺は何かがある方向をじっと見つめた。すると、隣からビッシュッと何かの音がした。音のした方向にはミアがいた。
「み、ミア?」
「な、なに?」
俺はミアの様子をよく見た。すると、
「お前、お腹から…」
「え?」
ミアは自分のお腹を見た。そして、ミアはそこで初めて気づいた。自分のお腹に穴が空いていることに。




