21話 「救出」
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ユウキたちは東側に来た。
「おい!誰かいるか!」
しかし、すぐには誰も見つからない。
「こっちにもいないのか?」
「まだわからん。こっち側を探してみる価値はある」
「俺もカイルに賛成」
早く見つけなければならない。最悪の事態だけは絶対に避けなければならない。
――あの日、自分が心に誓ったことを裏切るわけにはいかなかった。
ユウキたちは必死に名前を叫び、何度も魔力探知を試しながら、手が血だらけになっても瓦礫を漁り続けた。
────
(──!)
(なんだろう?誰かが何かを叫んでる?こんな時になんで大声をあげてるんだろ?)
ミアは意識を失うか失わないか、ぎりぎりのところにいた。
(あれ?なんで目の前が真っ暗なんだろ?体も動かないし、なんなの?)
誰かの足音が聞こえてくる。
(誰だろ?まさか、魔物!?早く戦わないと!)
────
すると、カイルが大声でユウキの名を叫んだ。
「おい!ユウキ!ミアが居たぞ!」
(なに!ミアが居たのか!?)
ユウキはすぐにカイルの方へ駆けつけた。
「どこだ!」
カイルはゆっくりと視線を落とした。
その先には、大きな瓦礫に下半身を押さえつけられたまま、意識を失っているミアがいた。
「ミア!しっかりしろ!」
返事はない。
「くそっ!」
ユウキはミアに両手を翳した。
魔力を両手に集中させ、叫ぶように詠唱した。
「『ヒーリング』!」
眩い緑の光がミアを包み込んだ。
「ミア!分かるか!俺だ!ユウキだ!」
しかし、ミアはなんの反応も示さない。
(くそっ!なんでだよ!)
「ユウキ!一旦、ミアの上に乗ってる瓦礫をどかそう!」
カイルは瓦礫を指してそう言った。
しかし、ユウキは治癒魔法をやめなかった。
「何やってんだ!早くしないとミアの下半身が使えなくなるぞ!」
それでもユウキはカイルを無視してミアに両手を翳し続ける。
「おい!ユウキ!」
カイルが大声を出したその瞬間──。
「ユ…ユウ…キ…?」
ミアが気が付いた。
「ミア?ミア!?意識が戻ったのか!?」
「ユ…ユウキ。わ、私…」
ゲホッゲホッ。
ミアは言葉を発しようとした瞬間に咳をした。
「無理に喋るな。今、瓦礫から出してやる」
ユウキはそういうと、カイルに駆け寄った。
「これをどけるぞ」
「わ、わかった」
二人は瓦礫に手をかけた。
「いくぞ!せーの!」
二人は同時に力を込めた。
「ぐっ……!」
しかし、瓦礫はビクとも動かない。
(くそ!なんで動かないんだ!頼むから持ち上がってくれ!)
ユウキは歯を食いしばり、さらに力を込める。
腕が震える。
それでも力を緩めない。
(動け……!動けよ!なんで動かないんだよ!)
「うおおおおっ!」
ユウキはありったけの力を腕に込めた。
筋肉が悲鳴を上げる。
それでもユウキは力を込め続けた。
すると、瓦礫がわずかに浮き上がった。
(今ならミアを瓦礫の間から出せる!)
「よし!カイル!今だ!」
「わかった」
カイルはすぐにミアの腕を掴み、瓦礫の間から一気に引きずり出した。
「ミア!」
ユウキはすぐさまミアに駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「ユ…ユウキ…」
ミアは微かながらに返事をした。
「よかった。意識はあるな」
(意識はある。でも、ミアの下半身が……)
ユウキはゆっくりと視線を落とした。ミアの右足は人間では考えられない曲がり方をしていた。血も流れ続けている。目を逸らしたくなるほどの怪我だった。
(くそ!俺が…もっと早く見つけてれば、まだマシだったかもしれないのに……)
ユウキは拳を強く握りしめた。
「ユウキ、早くミアに治癒魔法をした方がいいぞ」
グムはユウキに声をかけた。
「そうだな…」
ユウキはミアの足に手をかざした。
「『ヒーリング』」
血は止まったものの、足はあり得ない方向に曲がったままだった。
(駄目だ……。これだけじゃ治らない……)
ユウキは一度だけ深く息を吸った。
(落ち着け……。まだ終わってない。まだ見つけてない仲間がいる。俺はもう誰も死なせないって誓ったんだ)
ユウキは一旦冷静になろうとした。
「カイル、ミアを見ててくれ。俺とグムとデュラでレオンとエレミアを探す」
「わかった」
ユウキはカイルとミアを後にしてレオンとエレミアの捜索に向かった。
──5分後。
「爆発はどこら辺で起こったかわかるか?」
「確か俺らが使ってた方から爆発した気がする」
「そうか」
(ミアの近くにレオンの姿はなかったってことは、多分もっと西側に飛ばされてるかもしれん)
「グム、もっと西側を探すぞ」
「あ?なんでだ?」
グムは不思議そうな顔をした。
「説明してる暇はねえんだよ。自分で考えろ」
「あ?よくわかんねえけど、わかった」
(レオン、頼むから無事であってくれ……。俺はもう誰も死なせないって誓ったんだ)
ユウキたちはミアを見つけた場所からさらに西側へ向かった。辺りには崩れた瓦礫が散乱し、焦げた臭いがまだ残っている。
「にしても酷い爆発だな」
「そうだな。こんな爆発はこの世界で一度も見たことがないな」
「なんで急にこんな大爆発が起こったんだよ。そのせいでみんなが大変な目に……」
「わからんけど、この遺跡はかなり文明が進んでるようだったし、何かしらのシステムが誤作動でも起きたんじゃないか?」
グムはそういうが、そんな簡単なことなのか?もっと、こう……複雑な理由があるような気もする。……いや、今は失踪中の仲間を探すことに専念した方がいいか。
「おい、ユウキ」
グムは急に声を低くした。
「あ?なんだよ急に」
「感じる。感じるぞ!」
(は?こんな時に何感じてたんだよ。ふざけやがって。早くレオンとエレミアを探さないといけないのに。マジで生き埋めにするぞ)
「ユウキ。魔物だ」
グムがそう言った瞬間──大きな瓦礫の影から魔物が飛び出してきた。
ユウキは反射的に剣を抜き、魔物の爪を受け止めた。
「なんだよ急に!こんな時になんで来るんだよ!」
「ユウキ!ここは広いし誰もいないからデュラに攻撃をさせても大丈夫だ!」
「わかった!デュラ!攻撃準備だ!」
「キュイーン!」
デュラは大きく息を吸い込み、炎を吐く準備をした。
グォォォォオ!
「くそ!意外と力が強いっ!」
(仕方がない。魔法を使うしかないか)
「『風魔法 ウィンド』」
突風が魔物を吹き飛ばした。
グァッ!
「デュラ!今だ!」
「キュイーン!」
デュラは思い切り炎の息を吐いた。
グァァァァァッ!
魔物は激しく燃え盛り、悶え苦しみながら丸焦げになった。辺り一帯には焼けた肉の臭いと鼻をつく刺激臭が広がる。
「酷い匂いだな」
「当たり前だろ。生き物が焼けりゃ臭いに決まってる」
(こんなところで時間を使ってる場合じゃねぇ)
「よし、ひとまず魔物は倒せた。早くレオンたちを探すぞ」
「あいよ」
ユウキたちは足を止めることなく、再び西へ向かった。
──
一方そのころ……。
「た……助けて……。誰か……。お父さん……お母さん……お兄ちゃん……」
エレミアは瓦礫の中に埋もれていた。周囲は瓦礫で完全に塞がれている。しかし、不思議なことにエレミアの体の周囲だけは、わずかな空間ができていた。まるで何かが瓦礫を押し返したかのように。その隙間は体を起こせるほど広くはなく、エレミアは身動き一つ取れなかった。
息を吸っても、うまく空気が入ってこない。
「い…息ができ…ない」
エレミアは必死に助けが来るまで意識を保ち続けた。
────
「レオン!エレミア!声が聞こえたらなんでもいいから音とかを出してくれ!」
一向にレオンとエレミアが見つかる気配がしなかった。
「おい、ユウキ」
「レオン!エレミア!」
「おいってば」
「返事をしてくれー!」
「ユウキ!一回黙れ!」
グムは大きな声でユウキに言った。
「わ、悪い。聞こえなかった。で、どうしたんだ?」
「なんか音がするぞ」
グムがそう言った瞬間、遠くから微かに誰かの咳が聞こえてきた。男の人っぽい咳だった。
「レオンか!?グム、音がする方にいくぞ!」
「よし!わかった!」
ユウキたちはダッシュで音がする方へ向かった。
「レオンなのか!?おい!返事をしてくれ!」
「………っ。ユ……ユウ…………キ?」
(微かにレオンっぽい声がする!)
ユウキたちが大きな瓦礫の裏を覗くと、そこには瓦礫を背もたれにし、血だらけのまま俯いているレオンの姿があった。
「レオン!大丈夫か!」
ゲホッ!ゲホッ!
「お、おい。レオン、マジで大丈夫か?」
その瞬間──
カハッ!
レオンの口から真紅の血がこぼれ落ちた。
「レオン!」
「まずいな、これはかなりの重症だ」
レオンは吐血し、そのまま気絶してしまった。
「やばい!どうしよう!まずい!レオンが!」
「落ち着け、ユウキ。とにかく今は治癒魔法を怪我してるところにかけるんだ!」
「わ、わかった」
ユウキはレオンを地面に寝かせ、一番酷い怪我の場所を探し始めた。そして、うつ伏せにすると背中側の服はボロボロに破れ、元々は白かった服が赤色に染まっている。背中には至るところに瓦礫の破片が刺さっていた。
「これは酷い…」
ユウキは顔を背けたくなった。しかし、今はレオンの命が最優先だ。
ユウキは歯を食いしばり、震える手をレオンの背中へかざした。
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