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2話 「出会い」

「よし。それじゃあ、一旦街に行こう」


グムはそう言って歩き始めた。


「街がこの近くにあんのか?」


「うん。この近くにニーホっていう街がある。まあ、普通の街だね」


(ニーホか……。なんだか日本っぽい名前だな。まあ、気のせいか)


すると、グムが突然立ち止まった。


「……なんか気配がする。あっちの方だ」


グムは小さな前足で森の奥を指したが、俺には何も分からない。


その直後だった。


「来る!」


「おい、何がだよ!」


突然、ゴォォッという轟音が響き、一本の木が倒れる。


その向こうから、大きな影と、その影に追われる人影が飛び出してきた。


「助けてーーー!」


「食われるーーー!」


「やばい! 誰か襲われてる! 助けるぞ、ユウキ!」


「え!? 俺が!? 何言ってんだよ! まだスキルの使い方も、自分がどんなスキルを持ってるかも知らねぇんだぞ!」


「そんなこと言ってる場合じゃない!」


「スキルは使いたいスキルの名前を叫べばいい!」


「一つ教えるから覚えろ! 『炎魔法 ウォータークール』だ!」


(……ん?)


(今、このアホリス『炎魔法 ウォータークール』って言ったか?)


(……まあいい! 今はやるしかねぇ!)


「ウォータークール!」


「って、何も出ないんだけど!?」


「バカっ! なんで最初に『炎魔法』って言わなかった!」


(いや、言ってねぇのはお前の説明だろ……)


……って、おい。


なんかこっちに方向転換してきてないか?


「おい、グム! なんかこっち来てね?」


「いや、はよ逃げろや!」


「え?」


気づけば目の前には、クソデカいトカゲみたいな魔物がいた。


そして──


バコォォォン!!


思いっきりぶっ飛ばされた。


(あ、また人生終了かよ)


そう思ったが、不思議と痛みはない。


結構吹っ飛ばされたはずなのに。


「あ、あれ? 生きてるんだけど?」


「おい、グム! どういうことだ!」


「だから言っただろ。お前は物理攻撃無効だって」


「あ……そういえばそうだった」


「ダメだこりゃ」


「そんなことより早くスキルを使え! 今度は『炎魔法』もしっかり言えよ!」


「あーもう! なんなんだよ! 水とか炎とか、もうどうでもなれ!」


「炎魔法 ウォータークール!」


すると、魔物に向かって激しい炎が放たれた。


ゴォォォッ!!


轟音とともに炎が魔物を包み込む。


(あ、別に「ゴォォッ」と「轟音」をかけたわけじゃないからな)


気づけば魔物は全身を黒焦げにし、その場に倒れていた。


「やったのか?」


「ああ、お前がちゃんとな」


「いや、てかなんで『ウォーター』とか『クール』とか言っといて、ゴリッゴリの炎が出てんだよ」


「だから炎魔法って言っただろ?」


「あーもう、わけわからんわ。この世界」


「我々を助けてくださり、ありがとうございました」


「うん?」


「誰だ?」


「たぶん冒険者だ」


「なるほど」


「すみませんが、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「いいぜ。俺は天才最強最高のウルトライケメン、イザワユウキだ」


「おい。この世界では名前が先だ」


「マジか」


「おっと、ミスった。ユウキ・イザワだ」


「んで、この変な馬鹿みたいなリスがグム」


「変とはなんだ、変とは」


「リスも喋れるんですね。初めて見ました」


やっぱり、この世界でも喋るリスは珍しいらしい。


「あんたたちの名前は?」


「はい。私はレオン・グラディス。このパーティのリーダーです」


「私はミア・フェルナ。主にパーティでは回復を担当してるわ。ミアって呼んでね」


「俺はカイル・ヴァルド。重装だ。呼び方はなんでもいい」


「すみません。カイルはまだ若くて、言葉遣いがなっていなくて」


「別に気にしてないよ」


(にしても、こいつら見た感じ弱そうだな)


「あの……すみませんが、一つお願いがあるんです」


「なんだ?」


(無茶なことは言うなよ……)


「私たちの仲間になってくれませんか?」


(うーん……こいつら大丈夫なのか? こんな奴らと一緒になって)


「それはどういうことだ? 俺が仲間になるのか?」


「はい。ユウキさんに私たちのパーティへ入っていただきたいんです」


「あなたはとても強いですし、今は主力が足りなくて……」


(うーん。でも、このへっぽこそうな奴らの仲間入りなんてなぁ……)


(……ん? 待てよ)


(今なら、なんでも言うこと聞いてくれるんじゃね?)


(うわ、やば。きたこれ)


(あ、また興奮し過ぎてマイブラザーが……)


「そのお話、承りましょう」


(よし。これで色んなこと頼んじゃお)


すると、グムが小さな声で言った。


「ユウキ、お前正気か? こいつら、どう見ても弱いぞ」


「安心しろ、グム。俺にはいい案がある」


「は? 何言って──」


「本当ですか、ユウキさん!」


レオンは目を輝かせた。


「ありがとうございます! なんとお礼を言ったらいいか……」


「おっと。そのことなんだけどな、レオンくん」


「もちろん、タダじゃない」


「条件があるんだ」


「もちろんです。なんでも言ってください」


(よし。それじゃあ二百万……)


そこまで考えたところで、ふと気づいた。


(あれ? そういえば、この世界の通貨ってなんだ?)


(グムに聞くの忘れてた!)


俺は小声でグムに尋ねた。


「おい、グム。この世界の通貨ってなんだ?」


「ガナドだ。安心しろ。円と同じ価値だ」


(そうとなれば決まりだ)


「それでは、レオンくん」


「は、はい」


「二百万ガナドをくれ」


その瞬間、場の空気が一変した。


レオンの表情がみるみる青ざめていく。


「そ、その……私たちは弱いので、あまりお金は……」


「なに? 持ってないのか?」


「ならいい。俺はお前らとは仲間にならない」


「ま、待ってください!」


「そのままお金を渡すことはできないのですが……」


「ですが? なんだ?」


「その……竜の卵ならあります」


「竜の卵だと?」


俺はすぐにグムへ耳打ちした。


「おい、グム。竜の卵ってすごいのか?」


「あたりまえだ。中々手に入るもんじゃない」


「マジか。高く売れんのか?」


「もちろん。安く見積もっても三千五百万ガナドはする」


「……ウソだろ」


(よし、決まりだ)


(受け取らない理由がない)


「よし、分かった。竜の卵で許してやろう」


「あ、ありがとうございます!」


「ちなみに、これ孵化しないよな?」


「多分大丈夫かと。三年間ずっとカバンに放置してましたから」


「そ、そうか……」


(本当に大丈夫なんだろうな……)


しかし、その嫌な予感が当たることを、このときの俺はまだ知らなかった。

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